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公開 2015年07月27日  

主夫を始めて1ヶ月目で「孤育て」状態に。私を救った「●●の関係」とは?〜子どもの育ちと親子関係〜

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親と子がたくさん集まる場での子育て環境がもたらすものとは?「孤育て」に陥ったらどうすれば?私自身の主夫生活でのエピソードを交えながら紹介していきます。


みなさん、こんにちは。前回のコラムでは「子どもの遊びと子どもの育ち(心編/自己肯定感)」として、子どもの自己肯定感の形成についてお話をしました。



今回は、「子どもの遊びと子どもの育ち(心編/自己肯定感)」の第二弾として、親が「孤育て」に陥らず、子どもの遊びにも一緒に寄り添う余裕を持つためのコツについて、私自身の主夫生活でのエピソードを紹介しながらお話していきます。



頑張って簡潔に、と思ったのですが、どうしても長くなってしまいました(笑)。

最後までお付き合いいただければと思います。

主夫生活は順調にスタート!やっぱり自分、子育てうまいかも?

前回のコラムでも少し触れましたが、私は2012年から2014年までの2年間を主夫として過ごし、長男の子育てを生活の中心に置いていた時期がありました。



1歳半だった長男との主夫生活は、順調なスタートを切りました。



食事や着替え、お風呂や寝かしつけも非常にスムーズで、私が「ご飯だよ」と声をかければ、幼さからくる大変さはあっても、基本は声かけした通りに物事は進んでいきました。これが、のちに私を大きく勘違いさせることになります(笑)。



以前何かのテレビ番組で「赤ちゃんは母親以外の身近な存在には、愛されるために気を使い、愛想をふりまいたりする本能が備わっている」といったことを見たことがありました。



我が家もツレが育休中、日々の育児や家事で疲れている彼女に代わって、時間がある時は、食事や着替え、お風呂や寝かしつけをやっていたのですが、たしかにその際も、私がやったほうが、普段よりも子どもの反応がスムーズだったのです。



初めは、子どもにとっては私の方が新鮮味があるからうまくいくんだと思っていたのですが、こうして順調な主夫生活が続いて2週間を過ぎたあたりから



「こんなにスムーズに過ごせているのは、やっぱり自分の子どもへの接し方が上手いからかも?」



という思いが、だんだん出てきてしまったのです(笑)。

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1ヶ月たったある日、私はツレに泣きついた

そんな思い込みになるほどスムーズだった主夫生活がさらに進み、1ヶ月目を迎えたあたりで事態は急変しました。



長男が私の言うことを聞かなくなり、ことあるごとに嫌がるように。服を着替えさせようとしても泣きながら抵抗する。ご飯もわざと器をひっくり返すなどなど。



私もその度に、イライラを募らせるようになっていました。



主夫生活1ヶ月目にして、私の心はズタズタに。これまでの人生で感じたことがないような、ざわついた気持ちがついてまわります。



「子どもは言うことを聞かないし、イライラするし、家事も育児もうまくいかない…。もう、ノイローゼになりそうだ!」



5月の連休に入る前に、とうとうとツレに泣き言をはいたのを覚えています。



同時に世の中の母親達が感じていた大変さの正体は、これなんだ、ということも実感しました。この感覚は、子どもと四六時中一緒に過ごすことでしか、なかなか実感できないことなのです。

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子どもが自分を親として認めてくれたからこそ、つらくなってしまった

当時の私は、心に余裕がなくて気づかなかったのですが、主夫1ヶ月目に起きた長男の態度の変化は、今思えばまさに私が長男に「親として認められた瞬間」でもあったのです。



日常を共に過ごすうちに「あ、この人もボクの世話をしてくれる人なんだ!」と気づき、「だったら安心してボクの気持ちを全てぶつけてもいいかな♪」という意識に変化したということなんだと思います。



我が子から親として認められるということは、本当に喜ばしいこと。しかし同時に、絶大な安心感からくる「直球の感情表現」というおまけも付いてくるんですね。



子どもが言うことを聞かず、家事も育児もうまくいかない。気持ちも沈んできた…。そいういう状態になった親は「自分の育て方が悪い」と自らを責めてしまうことが多いと思いますが、そうではないんです。ある意味、親子関係が深まった証拠なんです。



ただ、そうはいっても、子育ての渦中にいると無我夢中で、なかなか自分を客観視できない。そこから抜け出すのが本当に難しい。これが課題でした。

「孤育て」になりかけていた私の子育て

子どもの育ちにはもちろん、家の中でこじれた親子関係を紛らわせるためにも、外遊びが良いことはプレイワーカーとしての実践から分かっていたつもりでしたので、私も日課として必ず長男と2人で近所の公園に遊びに行くことにしていました。



当時の私は家事が一通り済んでいないと外出しても気になってしまうため、家事を終わらせて昼前ぐらいにようやく公園に着くというパターンで生活をしていました。



すると先に遊びに来ている親子に「こんにちは」と声をかけたとしても、向こうはそろそろ帰ってお昼ご飯という時間。外遊びの時間がすれ違うことで、私も長男もなかなか友だちができませんでした。



家の中での親子だけの世界から抜け出すためにせっかく公園に遊びに来たのに、結局2人きり。



砂場で私がお団子をつくっても、長男が取り上げてすぐに壊してしまう。山をつくって、と言われて山をつくると何かが気に入らずに泣きだす、などなど。家の中でのうまくいかない関係をそのまま外でも再現していただけでした。



近所との付き合いもなく孤立した中で母親が子どもを育てている状態を「子育て」をもじって「孤育て」と言ったりしますが、私と長男の生活はまさにそれになりかけていました。

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午前中の家事タイムを、思い切って全部捨ててみた

このままでは本当に自分もツラいし、長男にも悪いと思い、ある時、思い切って家事を全て放り出して公園に遊びに行きました。



10時ころには公園に着いたので、何組かの親子と過ごすことができました。たっぷり14時まで公園で遊び、とても楽しかったことを覚えています。



夕方から一気に家事に取り組むことは大変ではありましたが、ツレが帰ってくるまでにどのぐらい誤魔化せるか(笑)、というゲーム感覚でキビキビとできたのが私には合っていたようで、この生活パターンは病みつきになってしまいました。

「孤育て」から抜け出す秘訣!「ナナメの関係」とは

そして、もう一つ。私の孤育てが解消されるためのポイントがありました。



前述しましたが、親子(特に一緒にいる時間が長い母親と子ども)の間には“絶大な安心感からくる直球の感情表現”が付き物です。実はこれ、「子から親へ」向けられる場合に限らず、「親から子へ」の場合も結構あります。



子どもがちょっとヨソの子の遊んでいるおもちゃを取ったら「とったらダメでしょ!」と我が子を怒る。でも、同じ様なシチュエーションで、我が子がヨソの子におもちゃを取られていたら「ガマンして貸してあげなさい!」と言う。(私自身も経験があります。)



あれ?これって二枚舌だよなぁと感じながらも、つい我が子を悪者にしてしまうこの姿勢は、親子がお互いにモヤモヤしてしまう原因になりやすいんですよね。



ここで有効だったのが、「我が子は他人に育ててもらい、私はヨソの子を育てよう!」という考え方です。私はこれを「ナナメの関係」とも呼んでいます。



直接の血縁関係がなければ、感情的にならずにフラットな立場で子どもに接することができるということです。おもちゃの取り合いの時も、当事者の親でない第三者が関わってあげることで、とった方もとられた方も自分の親の胸に泣きつきに戻れます。



親は常に安心できる場所であり、自分のことを一番大事にしてくれる存在であるというこの感覚が、子どもの自己肯定感を育み、より良い親子関係につながる。そのための「ナナメの関係」です。



利害関係のある実の親(タテの関係)でもなく、同じ目線の友達(ヨコの関係)でもありません。



ナナメの関係だからこそ、親も我が子にヤキモキせずにヨソの子に優しく接することができます。同じく子どもも、実の親に対しては安心感からわがままの限りを出したりしますが、ヨソの親に対しては小さな子でも遠慮があるので、要求があっても適度なものです。



ヨソの親も我が子じゃないので見守り方も過干渉にならず、子どもの側も、のびのびと子どもらしく振舞い遊び込むことができるのです。

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明日からできる「ナナメの関係」をつくるコツ!

最後に、多くの子どもと親が、ともに遊びながら育つことのできる環境をつくるための、ちょっとしたコツをお伝えして今回は終わりにします。



●できるだけ挨拶をして、関係性をつくっておく

コミュニケーションがゼロの状態で子ども同士がトラブルになったりすると、どうしても我が子を悪者にせずには済みません。簡単な挨拶から世間話などしておくだけで、共に見守る関係づくりの一歩にはなります。ちょっと距離があれば会釈だけでもOK。



●近くに誰か来たら、その人の方へ体を向けてみる

自分のことを気にしてくれているな、という体の姿勢があるだけでも、声をかけたりかけられたりの関係になりやすいです。すでにグループで閉じた円ができていたり、子どもと対面しているだけだと、声もかけづらいものです。



●ヨソの子を巻き込んで遊んでみる

我が子が「自分の親とだけで遊びたい」という場合でない時は、ぜひ、やってみて下さい。



私自身はシャボン玉の吹き口(ストロー)をたくさん持ち歩く、砂場ではまわりの子や親に声かけて一緒に大きな山やトンネルを作る、公園の地面に水で絵を描き大きな線路やケンケンパなどで遊ぶ(枝などで描くこともありました)、大きめのシートを持ち歩いてお昼時に一緒にお弁当を食べられるようにするなど、いろいろ工夫をしていました。



特別に難しいことでなくていいのです。少しずつ、自分にできそうなことからで結構です。



ぜひ、みなさんも自分なりのナナメの関係づくりをトライしてみて下さい。



子どもとの外遊びの風景、そして、何よりも我が子との親子関係が、それまでと少し違って見えてくることと思います。また、こんな工夫でうまくいったよ!といった情報もあればコメントもらえたら嬉しいです。

次回のコラムでは

次回は「子どもの育ちに必要な大人の役割とは~エンパワメントという考え方について~」として、子ども自身がそもそも持っている力を湧き出すための大人の姿勢についてお話していく予定です。お楽しみに!

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