幼い頃、転ぶと「ボーッとしてるからでしょ!」
泣いていると「いいかげんにしなさい!」と叱られました。
当時では珍しく、バリキャリ女子だった母。
働く母親への環境が整っていないなかでの仕事と育児の両立は、さぞかし大変だったでしょう。
子どもたちにはっぱをかけ、予定通りに物事を進める。
そんなふうに、母は育児の効率化を意識していたように感じます。
そのせいか、私は困ったときやつらいとき、母には伝えられませんでした。
自分の不甲斐なさを報告すると「叱られる」と思っていたから。
いじめられたときも、まあまあな怪我をしたときも必死で隠していました。
そんな経験もあり、娘には、自分の気持ちを素直に表現できる子になってほしい。
そう思ってきました。
ならば……と、母とは正反対に効率は度返しで、子どもとゆっくりじっくり向き合うことを意識してきました。
失敗したときは叱らず正しいやり方を教える。
泣いていたら「なぜ泣いているのか」を聞いて気持ちを受けとめる。
しつけのときは感情的にならず、娘の言い分に共感してから、なぜイケないのか理由を説明する。
私なりに良いと思う育児法を実践してきたのです。

「行きたいけど、行かない…」素直に気持ちを言えない娘の、精一杯の伝え方
「素直に気持ちを言える子になってほしい」と願いながら子育てをしてきました。約6年間続けてきた育児法は、効果があったのでしょうか?
自分の苦い経験から

思惑とは違った方向に!?
ところが、娘は気持ちを素直に言わない子になってしまいました。
「お菓子食べる?」と聞くと
「食べたい!」とは言わず、「いらない、本当はお腹すいてるけど」
「もう少し遊んでから帰ろうか?」と言うと
「遊びたい!」とは言わず、「帰る、本当は遊びたいけど」と悲しそうに言うのでした。
それでも、そのままじっくり娘と向き合っていれば、いつか改善されるだろうと考えていました。
しかし、6歳の今も彼女の話しぶりに変化はありません。
思い返すと言葉を発しはじめた2歳頃には、すでにそんな物言いをしていたので
育児法の結果というよりは、もともとの気質なのかも?
そう考えると、これまで母のせいで自己主張が苦手になった……と思っていた私の性格も
本来持って生まれたものなのかもしれない。
私の気質が、娘へそのまま引き継がれたのかもと思うと
それまで続けてきた育児法も、あまりやる気がなくなってしまいました。

ある日の押し問答
ある日、「公園に行きたい?」と私が娘に聞くと
「行きたいけど、ガマンする」とうつむきながら娘は答えました。
「どうしてガマンするの?」
「だってピアノの練習あるもん」
「帰ってきてからしたらいいでしょ?」
「ダメ!今しないとダメ!」
「じゃあ練習したら?急いで練習したら公園に行けるよ」
「行けない、夜になっちゃう」
「大丈夫。間に合うよ。練習しよ」
「でも練習する勇気が出ない」
といったやりとりが何十分も続きました。
以前は、娘の本心を探り、最終的には娘の希望が叶うように粘り強く対話を続けていた私。
けれど「私の育児法では効果はないんじゃないか……」という疑念が沸いてきたことで
途中であきらめてしまうことが増えていました。
その日も「じゃあ、好きにしたら!」と、私は家事に取り掛かりました。
私の態度に驚いたのか、娘は泣きながら練習をはじめ
その後練習を終えても部屋のすみっこでうずくまり、ずっとしょげていました。
冷たくしてしまったことを反省し、私は「今から公園行く?」と声をかけました。
コックリとうなずいた娘。
公園へ行こうと言いはじめてから1時間以上が経ち、ようやく出発することになりました。

娘は娘なりの表現でいい!
娘はどうして素直に気持ちを言えないのだろう。
手をつないで歩きながら先ほどの問答を振り返っていました。
そこで、気が付いたのです。
「あれ?でも結局娘の希望が叶っているぞ」と。
そういえばいつもそう。
紆余曲折あって時間がかかっても、娘は、最後には想いを伝えるのです。
それは子どもの頃の私にはできなかったこと。
気持ちを言えずガマンし続けていた私と違って
娘は遠回しながらもしっかりと意思表示をしています。
「本当は行きたいけど」
「本当は食べたいけど」
「本当はしたくないけど」
自己主張をするのが苦手な気質を私から引き継いでいたとしても
彼女は彼女なりの方法で想いを伝える術をもっていたのです。
「素直に気持ちを表現できる子になってほしい」と思い、実践してきた私なりの育児法。
案外効果があったのかもしれません。
独特の言い回しをする娘とのやりとりは、時間のかかることも多いけれど、相手に気持ちが伝わればそれで上等!
と思うことにしました。


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