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公開 2016年02月12日  

「想像の世界」を守られた子どもは自分らしさを見失わずに成長する

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子どもが自分一人の世界で想い考える時間や空間が今、減っています。良いモノを与え、良い環境で育て、良い教育を施そう、それはどれも間違えていません。しかし、もっと身近にある大切なことを思い出す時が来ているのではないでしょうか。想像の世界を自分らしく自由に探求する中で育まれるのは、信じる心、勇気や優しさ、ユーモア、命の平等、など幸せに生きていくために必要な心です。

出典:http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10179007979

大人になって懐かしく思い出す子どもの頃の原風景

雪が降ると、子どもたちは大喜び!
雪の上を歩き雪と戯れる・・・冷たい、美しい、キシキシする、溶ける、きらめく。

こうした心踊る内面の感覚で起きている体験は、季節感、人、感覚、感情、すべてがセットとなって記憶の深くに刻まれ、心の原風景となります。

このあたたかい記憶が宿る心の空間は、どんなに辛いときでも立ち返って復活のエネルギーを補給できる、オアシスのようなふるさとのような役割を果たしてくれるのです。

2人の兄妹によってうまれた、とっても可愛い物語

雪が降った翌日、相談に訪れたご両親の連れてきた2人の兄妹(5・3歳)と散歩をしながらお話創りをしました。

私 「雪がいっぱい降って、この公園のねこたちがいなくなったけど、どうしてるかな・・・」

妹 「ねこさんはね、雪でお家を作って休んでるの。お日様が出るときだけ外に出るけど『寒いなあ、めんどくさいから寝てよう』ってまたお家に戻って寝ちゃうの。」

私 「お腹、空いてるかな?」

妹 「お腹がすいたときだけ外に出て、探しに行って、優しい人がいたら『ごはんください、ください』って甘えて鳴くの。」

兄 「『みゃーお、みゃーーーーお みゃお』って。『ごはんくださーい、くださいよーーーー、ください!』ってこと。人がいないところに家族で住んでて、お父さんが食べものを探して持ってきたら、お母さんが『少ないわねえ、うちには育ち盛りの子ねこちゃんがいるんだから』って。それでおかあさんが『しょうがない、私が行ってくる!』って出て行ったんだ。」

私 「勇気があるお母さん!」

妹 「お母さんってそんなもんでしょ。」

兄 「お父さんは木の枝と葉っぱでベッドを作ったから、子どもはふかふかで寝ちゃった。それでお父さんは『お母さん戻ってきたらびっくりして、いいベッドねえ、あなたーーーって目がハートになるかなあ』って思ってる。」

私 「わあ!?(笑)」 

そんなお話がどんどん続き、「次回は、絵本をつくってくるね」と喜んで帰って行きました。

「想像=体験」同じ学びを感じられるものだから大切にしたい

こうしてねこの話を創る間、子どもたちは想像力を駆使してねこの気持ちや行動に想いを巡らせているのですが、脳の中は、まるで自分がねこと一体になって体験しているかのように、生き生きと働いています。そう!楽しい感情の中で、集中して想像したりイメージしたりしているときは、夢中で体験しているときと同じ学びがあるのです。

また、ねこを自分たちと同じ生命や心をもった生き物として対等に見ているからこそ、子どもは、こうした発想が自然と出てくるんですね。

大人の役目?それは、余計な口出しや邪魔をしないで、子どもの世界を尊重し、飽きるまで続けられるように、さりげなく雰囲気づくりや場所や時間の確保をするだけです。

体験と知識とが結びつく瞬間

さて、もし、数年後の彼らに「雪が降って、公園のねこたちがいなくなったけど、どうしてるかな・・・」と同じ質問をしたらどうなるでしょう。

きっとそのときは、より科学的な答えが返ってくるでしょう。雪の日の動物たちの生態について、ネットや本で調べるかもしれませんよね。

しかしそれは、情報だけから得た知識ではなく、実際に雪の日、ねこや虫の様子を見たり、ねこの生活や気持ちを想像してみたり…これまでのそんな体験が積み重なり、情報と結びつき、一つの豊かなストーリーを伴う生きた知識、として取り込まれるでしょう。

絵本や物語と映像やゲームとの大きな違い

さて、近年若者の本離れが進んでいます。ある教育学部の大学生へのアンケート調査では「小さい頃に絵本を読んでもらったり、お話を聴かされたりすることが少なかった」という学生がとても多かったそうです。

小さい頃から、毎日絵本を読んでもらう経験は、将来本を読む習慣につながるはずです。「そんなに絵本やお話って、大切なの?高度な技術で詳細までよくできた映像が観られる時代になったのに?」そんな疑問も浮かぶかもしれませんが、答えはYES!!!絵本やお話には、大変な効果が隠れているのですよ!

なぜなら、完成された映像やおもちゃは、完璧でリアルな世界がすでに出来上がっているので子どもは”受け身”になってしまいます。

自分に必要なものもそうでないものも、全てを取り入れてしまうため、子どもの理解度(キャパシティ)を超えたり、興奮を誘う過度な刺激を与えられたりすると、かえってストレスになり、行動が発散的に荒くなることがあります。

想像する余地が子どもの能動性を引き出す

絵本やお話の特徴は、子どものペースや好みに合わせられ、想像の余地がたくさんあるので、頭の中は能動的でフル回転していること。特に自分で気に入ったお話や絵本には、何十回繰り返し聴いても新鮮な出会いがあり、その魅力に飽きることがありません。しかも、読み聞かせであると、大好きな大人のあたたかい声とぬくもり、愛されている感覚も、イメージと重なり、自分の中に入ってくるのですから。

10歳くらいまでの子どもは、発達的にも、文章を読むより、話言葉から理解する能力の方がグンと長けている時期です。読んでもらうことで、文字を追う作業から解放された子どもは、その世界のなかに没頭し、内的な体験を自由に繰り広げることができるのです。

主人公に共感し、笑ったり分かち合ったり、悲しくなったり優しくしたり、信じたり、勇気をもって立ち向かったりすること全てが、自分自身の体験となり、自分らしさを形成していくのです!

それが、絵本やお話、文学の最大の魅力なのです。

子どもの頃に育んだ心の空間が将来の幸せにつながる

想像の世界で遊ぶことは、自分の世界を広げ、自分らしさを育む一方で、自分の中にはない様々な考え方や状況と出会い、将来複雑な世の中を生きていくための力や柔軟性を身につけることでもあります。

大切なのは、子どもの世界を、否定したり干渉したりせず、尊重し静かに見守ること。子どもが自分の世界に浸って過ごす空間や時間を保証すること。

好奇心や想像力は、人間の成長のために生まれつき本能的に備わっているもの。本能を無視して、無理して先回りをし、やりすぎて疲れてしまうのは、親ばかりでなく、子どもも同じです。

ときには、子どもと一緒に、目の前に広がるイメージの世界を探検してみましょう!共感する人がいると、心は響き合い、より深く楽しい経験になります。もしかしたら、仕事や生活につながる新しいヒントやアイデアに出会うかもしれませんよ。

大切なことは目に見えない、そして一番近くにあるのですから。

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