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公開 2022年06月07日  

花嫁からの手紙の最中、父がいない!? 親になった今、その気持ちが少し分かる

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結婚するまで実家で28年間過ごしてきた私。両親へ感謝の気持ちをきちんと言えられていなかったので、結婚式の手紙で伝えようと準備していました。そして結婚式当日、いざ手紙を読み始めると……


結婚し、新居へ。大好きな両親へのお礼は……


私は父・母・兄の4人家族で育ちました。

いつもニコニコして優しい父、心配性で常に家族を気にかけてくれる母、そして仲の良い兄。

そんな私は大学生・社会人になっても、結婚するまでずっと実家で暮らしていました。

母親とは休日に一緒にショッピングにでかけたり、カフェに行ったり。

父親とは2人で出かけることは少なかったものの、いつも私の味方で見守ってくれていました。


そして、28歳の時に大学生の同級生だった夫と結婚。

明るくて楽しい夫との結婚を、父も母も心から喜んでくれました。

新居は実家から電車で2駅の賃貸マンションに。

私も夫も実家を出て生活をしたことがなかったので、土地勘のある場所の方が過ごしやすく安心だと思ったからです。

新居に引越しするのは楽しみでもあるし、少し寂しさもありました。


実家を出て、いよいよ新居に行く日。

「いままでありがとう」と言おうとも思ったのですが、何だかお別れみたいな気がして寂しい上に、恥ずかしさが勝ってしまいました。

結局「じゃあ、行ってきます~」と、まるで買い物にでも行くような言葉で出発しました。


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感謝の気持ちは結婚式で!


新居での生活がスタートし、結婚式の準備を始めました。

実家からも近いので、事あるごとに父母が遊びにきたり、週末は2人で帰ったり。

独身の頃と気持ちの距離感もそれほど変わらず、両親とは頻繁に会っていました。

きちんと感謝の言葉も言えずじまいのままだったのが少し気になっていた私。

結婚式の花嫁の手紙で、両親への感謝の気持ちを改めて伝えようと決心しました。

手紙は内容を吟味して何度も書き直し、寝る前に何度も読む練習をしました。


そして結婚式当日。

大勢の親戚や友人、会社の先輩方に囲まれ、結婚式は私にとって大切な人達に一度に会える、夢のような時間でした。

正装した父母は少し緊張しながらも、優しいまなざしで見守ってくれていました。

いつも通りニコニコしている父と一緒にバージンロードを歩き、楽しい披露宴へ。

余興や写真撮影などが終わり、いよいよ花嫁からの手紙の時間になりました。


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手紙を読み始めた途端、まさか……!


会場には感動を誘うような曲が流れ、会場の奥にいる私と、会場の出入り口にいる父母にスポットライトがあたりました。

いよいよ、感謝の気持ちを伝える瞬間です!

「お父さん、お母さん、今まで育ててくれてありがとう。お父さんはいつもあたたかく……」

と喋り始めた途端、ドサッという物音が。

何やら嫌な予感がして両親の方に目をやると、父がいなくなってる……!?

そして母だけが平然を装って立っていました。

スポットライトが私に集中していたため、運よくほとんどの出席者は気づいていませんでした。

父のことも気になりましたが、母が毅然とした態度で聴いてくれているので、私は猛スピードで手紙を読み終え、無事披露宴終了。

心の中は両親への感謝どころではありませんでした。


新郎新婦の退場で扉が閉まった途端、私と夫は何が起こったのか分からず大慌て。

すると、青白い顔の父が

「いや~飲みすぎちゃったかなぁ!ごめんごめん!」

と歩いてきたのでした。

どうやら、父はお酒に弱いのも関わらず飲みすぎてしまった様子……

スポットライトを浴びて立っていると、気分が悪くなって一瞬バランスを崩してしまったようでした。

そして慌てて退場し、兄が介抱。

母は滞りなく式を終わらせるため、何食わぬ顔で私の手紙を聞いてくれていたのです。


全てを知り、私は「何でこんな日に、弱いお酒をたくさん飲んだの~?」と言いながら、いろんな感情が溢れて、泣きそうになりながらも笑い続けました。

ちなみに私からの手紙は、その後実家のアルバムにきちんと飾られていて、父母も読んでくれていた様子。

その後、母から聞いたところによると、父は結婚式のDVDを何度も見て、私からの手紙部分もきっちり見ていたそうでした。


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娘の結婚式を想う夫


あれから10年。

結婚式の翌年に生まれた娘ももうすぐ10歳。

あと8年もすれば大人です。

まだまだ一緒に遊んだり、学校のことなどたくさん話してくれたりする娘を眺めつつ、

夫が「あ~、娘の結婚式の時、俺どうなってしまうんやろ…」とポツリ。

まさか、また同じことが起こるのでは!?


娘を持った今、結婚式の時の父の複雑な気持ちが、少し分かるような気がします。

娘の結婚式は嬉しくも切ない気持ちで胸がはちきれそうで、お酒がすすんだのかもしれません。

そんな父ももうすぐ70歳。

今年の父の日には、少しのお酒と、おいしい食べ物を渡しに行こうと思います。


※ この記事は2024年04月04日に再公開された記事です。

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