ソレに最初に気が付いたのは、臆病な癖に窓辺で外の様子をつぶさに観察していた長女。

「ママ!隣の建物から何か飛んでくる!」

長女がそう叫んだ時、またまたぁ、怖がりさんだなあ、ビニール袋か何かが風に舞っているんでしょと思ったら

隣のビルの屋上の囲いの建材、薄いスチールかアルミみたいなそれが、風に煽られてバラバラと剥がれてこちらに飛んできていて、何なら下の階のベランダには既にそれが何枚か飛び込んでいる有様、えええ何それ、アレ窓に当たったらやばいでしょ、そう思って隣室の夫を呼んだ。

パパ!外が凄い事になってる!

夫は

「養生テープとかは家に今無いから、とりあえずカーテン閉めて、それから窓から離れて」
「あとさっきから断続的に停電してるから、冷蔵庫のコンセント抜いたほうがいいかも」

窓の破損でガラスが飛ぶと危ないからカーテンを閉めて、それから、こういう突然の停電から電気が復旧した時は電流の流れの関係で特にウチのみたいな古い冷蔵庫は故障の憂き目にあう事があるらしい。

夫は台風の最中、1人せっせと『台風・備え』を検索していたらしく、何だそれは早く言え、私は急いで台所の冷蔵庫のコンセントを抜いた。

あと、荷物、手直に置いておいた方がいいな

ミルクは、それからオムツと、次女ちゃんの薬と

お湯の確保できてる?

台風が本格化して、一応避難勧告は出てはいたけど、外は既に暴風雨だしウチは乳児がいるし、鉄筋コンクリート造の集合住宅の上階は浸水したりはしないだろうからこのまま窓から離れて台風が過ぎるのを待とう、という事になった。

災害の時、やっぱり大人が2人以上いると本当に心強い。

子どもと自分だけの組み合わせだと、子はうろたえるか騒ぐかで本当に『今1人で我が子の命を守らなくては!』と思う、それは意外と心がしんどい。

そして昼過ぎ、台風は無事過ぎ去り、やれやれ風が弱まってきたよ、何か食べよう、そうだ、冷蔵庫のコンセント入れてあげないとねと、コンセントを刺して復活を待った。

待った。

……。

つかない。

2018年9月の台風21号は我が家付近を通過し、夫婦のもめごとを何となく水に流し、隣のビルの建材を剥がし、近隣の街路樹をなぎ倒し、何なら自転車置き場の屋根も剥がしていったその後、我が家の冷蔵庫も連れ去ってしまった。

お陰で長男と長女は、この日「溶かしてしまう位ならもう好きなだけ食べろ」と言われて冷蔵庫のアイス食べ放題をして大喜び、私は夫が

「大至急だから現物見なくていいよね!」

とネットで手配してくれた新しい冷蔵庫が手元に届くまでの3日間、クーラーボックスを冷蔵庫がわりにして、保冷用の大量の氷を買い続ける事になった。

今年もまた台風の季節がやって来る。

あれから2年を経て、長男は少しも落ち着かず、長女は相変わらず超怖がり、それならまだしも次女がイヤイヤ期を超越した暴君の2歳9ヶ月児ときて私は、今回予備の抱っこ紐を新たに避難用のリュックに入れた。

いざ避難、と言うときにあの歩みが遅くて寄り道しがちな2歳児に「ジブンデアルク!」とか言われたら本気で困る。

自然の理は人の力では変えられないけれど、出来たら被害は最小限に、そしてお願いだからウチの家電を壊さないで欲しい。