――翌朝。
早めに家を出た俺は、新豊洲駅近くのファミレスでノートパソコンを開き、履歴書を書いていた。
満 「ふ…わぁぁ」
昨夜、ついつい遅くまでデザイン画を描き、こたつで寝落ちした俺は2分に1回のペースであくびをしている。
再びあくびが出そうになっていると、スマホが鳴り、ケンゾーから電話が掛かって来た。
なんだろ? 思わずドキッとしてノートパソコンを閉じる。
満 「…はい、もしもし」
ケンゾー 「おはようございます。今日、近くで撮影なんです。みんな満さんに会いたがってるし、ランチどうですか?」
――昼、本当は貴重な昼休みを転職のことに使いたいけど、そんなこと言えるわけもなく、俺は指定されたこじゃれたカフェに入った。
現場に出ているアシスタント数名とケンゾー、そしてなぜかケンゾーの横に黒沢がいる。
今日は暖色系の毛糸を何本も使ったであろうニットワンピを着ている。
しかし…この子の技術すごいな。
満 「…あれ、黒沢さん…今日はララウに出社の日じゃないよね?」
ケンゾー 「あー、さっきばったり会ったんです」
黒沢 「…たまたま」
…おいおい、ストーカーしてないよな?
公開 2018年04月13日
親になっても、好きな気持ちに嘘はつけない。19話 / side満(2ページ目)
35,391 View転職先候補である名古屋にあるフォトスタジオを見学した翌日、内見した実家近くの戸建ては夫婦ともに理想通りの家だった。転職するとなると引っ越しも確実。「新しい可能性」を広げるため、満は迷いながらも真剣に転職に向けて準備を始める――。
※ この記事は2024年04月11日に再公開された記事です。
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連載「家族の選択」
#19
さいとう美如
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