すき焼きの作り方、「関東は煮る」「関西は焼く」この違いはなぜ?のタイトル画像
公開 2023年02月13日  

すき焼きの作り方、「関東は煮る」「関西は焼く」この違いはなぜ?(2ページ目)

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肉食の歴史に由来しているという説も…。



日本では仏教が伝来してから殺生が禁じられ、肉を食べることはタブーとされてきました。

しかし少数ではありますが鳥やシカなどは食べられており、牛馬の肉を食べることもあったそうです。

主に関西では、こうした肉を焼いた料理は、すべて「すき焼き」と呼んでいました。

一方、同時期に東京と横浜では牛鍋が流行し、これが現在の関東のすき焼きとほぼ同じ鍋料理だということです。

それぞれに別の料理として食べられていた、という歴史があったんですね。


なぜ「すき焼き」は鍋料理なのに関西では肉を焼いて食べるの?


2013(平成25)年に「和食:日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されたこともあり、近年世界的な和食ブームが起きている。

特に、すき焼きは外国人にも好まれる日本料理の一つだ。

それだけに、日本全国どこに行っても同じ料理が楽しめるはず、と思っている人も多いかもしれない。

ところが、関東と関西ではつくり方も食材もかなり違っている。

関東で「すき焼き」といえば、肉や野菜を、調味料と水を合わせた「割り下」で煮る料理のことを指す。

一般的な具は豆腐、ネギ、しらたき、牛肉というシンプルな内容で、最初に割り下を鍋に注いで煮立て、ネギと豆腐、しらたきを入れ、最後に牛肉を入れて食べる。

ところが、関西のすき焼きには、関東のすき焼きではなくてはならない割り下を使わない。

関西ではまず、牛脂をひいた鍋に肉を入れ、砂糖、みりん、醤油、昆布出汁を少量注ぎ、牛肉を軽く炒り焼きにして食べるのである。

肉を食べ終わったら、砂糖、昆布出汁、醤油を追加し、ネギや豆腐、しらたきだけでなく、シイタケや玉ねぎ、タケノコなどかなりバラエティに富んだ具材を、火が通りにくい順番に入れて煮ていく。

そして、最後にもう一度肉を加えて、肉とほかの具材を一緒に楽しむ。

つまり、関東のすき焼きは煮て食べるものなのだが、関西のすき焼きはまずはその名の通り焼いて食べ、その後に煮て食べる料理なのである。

この違いは、日本の肉食の歴史とかかわりがある。

日本では仏教が伝来してから殺生が禁じられ、肉を食べることはタブーとされてきた。

しかし、少数ながら鳥やシカなどの獣は食べられており、おおっぴらではなくても牛馬の肉を食べることもあった。

主に関西では、こうした肉を焼いた料理は、すべて「すき焼き」と呼んでいた。

その由来については、野外で農具の鋤を利用して刃の上で焼いたから、杉の箱を使って焼いたのが訛ったから、薄いすき身にして焼いたからなど諸説ある。

明治時代になると肉を食べる習慣が西洋から持ち込まれ、1872(明治5)年には、明治天皇が牛肉料理を召し上がったという報道をきっかけに、肉食に対する忌避感は薄れていく。

この頃、東京と横浜では牛鍋が流行し、人々は文明開化の象徴とばかりに連れ立って牛鍋屋に出かけては、それまで口にしたことのない牛肉のおいしさに舌鼓を打った。

これが現在の関東のすき焼きとほぼ同じ鍋料理である。

牛鍋を食べる流行は、すぐに関西をはじめとした地方にも広がった。

そして関西では肉を焼いて食べるすき焼きと牛鍋が合体し、現在の関西風のすき焼きが誕生した。

しばらくは、牛鍋とすき焼きの呼称が混同して使われていたようだ。

その後、牛鍋店が1923(大正12)年に起きた関東大震災で次々と閉店してしまい、関東の牛鍋は下火に。

一方、関西のすき焼き店が東京に進出。

次第に関東の牛鍋もすき焼きと呼ばれるようになり、今では関東風も関西風も、どちらも「すき焼き」としてすっかり定着したのである。


出典:『関東と関西 ここまで違う! おもしろ雑学』(三笠書房/2019年刊行)

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