コノビーの第三回投稿コンテストのテーマを見て、エモい記事に定評がある私は、意気揚々と記事作成に取り掛かった。
何のことを書こうか。スマホを取り出し、写真を見返しながら、書くエピソードを探す。
離乳食のことがいいかな、それとも初めて立ったときのことがいいか。
そこでふと気がつく。
育児のエピソードを思い出すのに、写真を見ないといけないのか。
そう、私はここ2年の記憶が薄くなっていることに気がついてしまった。
初めて寝返りしたときのこと、初めてハイハイしたときのこと。
全て写真や動画におさめてはいる。
忘れているわけではない。
でもそのときのリアル感、現場感というのかな・・・・・・その場で感じた瞬間的な気持ちを鮮明に思い出すことができない。

記憶を失うほどに必死の育児。唯一忘れない、たった3㎏の「重み」<第三回投稿コンテスト NO.10>
現在2歳の息子さんを育てられている、まめまさん。記憶を失うほど怒涛の日々のなかで、たった一つ、胸に刻み込まれている瞬間があるそうです。

思えば、この2年間、必死に毎日の育児をこなしてきた。
出産後からはじまる待ったなしの育児。
魔の3週目と呼ばれる生後3週間ころは、寝不足が限界を超え、出産してまで、なぜでこんな思いをしないといけないのかと思った。
毎日オムツ換えと授乳に追われ、抱っこしていなと泣かれるので、トイレに行きたくでもいけない。
ご飯も食べられない。
離乳食がはじまってからは、月齢に対して食べる量が少なく、毎日検索してどうにか食べてくれるように工夫した。
しかし現実は、食べたくないと手で払われた拍子に、床に落ちてしまった、ベトベトのお粥を泣きながら片付ける日々。
ハイハイができるようになったら、またひと時も目が離せなくなった。
何でも口に入れるので、物はどんどん高い位置に移動した。
1、2歩歩けるようになると、部屋のいたるとことにクッション材をつけた。
それでも毎回どこかで頭をぶつけては泣く我が子を見て、またネット検索。
毎日怪我をさせないよう精神を消耗させた。
1歳半検診を前にほとんど言葉がでておらず、指差しもできない我が子は、発達が遅れているのではないか、何かの病気なのではないかと、また検索魔と化す毎日。
2歳ごろにはイヤイヤきに突入し、コンビニに牛乳1本買い物に行って帰ってくるだけで1時間もかかり、部屋は何度片付けでも汚れるので、片付けを諦めるようになった。
本当に毎日必死に過ごしてきた。
毎日にこにこ顔のママでいたかったけどできなかった。
あの毎日の中にもあったはずの何気ない嬉しい日常を鮮明に思い出すことができない。
でもひとつだけ確かに、鮮明に覚えていることがある。
それは、我が子を初めて抱っこした瞬間のことだ。

私の妊娠生活は、初期の頃、重度の悪阻で会社を休職せざるをえなくなったことをのぞき、順風満帆だった。
予定日を3日超過した夜に、陣痛がはじまり次の日検診。まだ子宮口が開いていないとのことで一旦帰宅。
その日の夜に陣痛が10分を切り入院するも、なかなか陣痛の間隔が縮まらない。
当時遠方に住んでいた夫もかけつけてくれて、陣痛の波が来るたびに腰をさすってくれた。
入院から30時間以上が経過しても陣痛の間隔が縮まらず、促進剤を使うことに。
促進剤を使い、さらに痛みが増す。やっとのことで分娩室に入れるも助産師さんの「あと5時間くらいで生まれますからね」の言葉にむしろ絶望を覚える。
腹を切ってくれと懇願する私に「あともう少しですから」を繰り返す助産師さん。
あなたにとって5時間はもう少しかもしれないけれど、私にとっては永遠とも思える5時間なんだよと心の中で叫ぶ。
分娩室に入って約3時間。
股に確かな感覚が。
鼻からスイカというけれど、それはいいすぎだと思った。
股からマンゴーくらいが適切だったと思う。
ドゥルとした感覚とともに、か弱い声が聞こえてきた。
あー私は産みきったのだなとわかった。
体の内側から温かい何かがこみ上げてこようとした刹那「お疲れ様、ありがとう、ありがとぉおおおおぉ」と当の本人が泣く前に、鼻水と涙で顔をぐちゃぐちゃにした夫が視界にはいってきたせいで、私の涙は引っ込んでしまった。
夫がへそのうを切り、助産師さん、我が子とともに別室へ。
わたしは医師の治療のもと、胎盤をだし、会陰を縫う。
綺麗になった我が子が部屋に戻ってくる。
お母さんだっこされますか?と聞かれ、たじろぐ私。
いやちょっと子どもとか苦手で赤ちゃん抱っこしたことないし、首すわり前はちょっと・・・・・・と思っている私をよそに、助産師さんが私の胸に我が子を置く。
ずしん。
腕にかかった重さ約3キロ。
でも3キロ以上の重みを感じた。
あーこれが命の重みなのだと思った。

3歳前になり、今や12キロもある我が子の方が当然に重いはずだけど、あの時、我が子を抱いた時に感じた重みはそれ以上だった。
これから先、どんなことからも命をかけてこの子を守るという覚悟。
寿命を全うできるよう、この子の健康を守る覚悟
我が子が悲しいとき、辛い時にそばで支えていく覚悟
道を間違いそうになったら、全力で引き戻してやる覚悟
将来誰かと温かい家庭を築くまで、親の愛で包んでやるという覚悟
そう、それは覚悟の重さでもあった。
必死すぎたはじめての育児2年間、その中で一度も忘れたことがないあの時腕に、体全身に感じた「我が子の重み」
この先もきっと育児は大変なことばかりだ。反抗期もあるだろう。
クソババアなんて言われる日も来るかも知れない。
だけど私は忘れない。
あの日感じた重みを。
あの日心に決めた覚悟の重みを。
(ライター:まめま)
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