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「子どもは親の所有物じゃない。一時的な預かりもの」作家が語る子育て観

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出産・子育てエッセイ『母ではなくて、親になる』(河出書房新社)が話題を呼んだ作家の山崎ナオコーラさん。本書では「子育てしている自分」を冷静に見つめる視点が印象的でしたが、2人目が生まれた今、どんなことを感じていらっしゃるのでしょうか?

共感や恐怖心が強くなってしまった

―― 最近、第二子がお生まれになったとか?

今は3歳の子と、生後1ヶ月の子がいます。
妊娠中は上の子が少し赤ちゃん返りのような様子を見せたので、生まれたらやきもちを焼くんじゃないかと思っていましたが、生まれたあとは意外とそんなこともなく。

すごくかわいがっていて、「おっぱいをあげたほうがいいんじゃない?」「そろそろオムツを替えたら?」って私に指示してきます。
お腹の中にいたときのほうが、ブラックボックスのようで不安だったのかもしれませんね。


―― 1人目のときと比べて、子育てに変化はありましたか?

雑になったというか……余裕が出てきましたね。扱い方もそうですし、1人目の授乳中は食べ物に気をつけたり、気になることをすぐ検索していましたが、それもしなくなりました。

2人目になってからは心配ごとがあまり浮かばないですね。楽ですけど、1人目のときの特別な緊張感も楽しかったなぁと思い出しています。


―― お子さんを持ったことで、ご自身の変化も感じますか?

自分ではそんなに変わっていないと思うんですが、ニュースなどで子どもの事件や事故などを見聞きすると、より一層「怖い」と思うようになりました。

夢に出てきたり、眠れなくなったり。共感が強くなったように感じ、自分にもこういう一面があったんだと驚いています。

自分としては独身の頃から、子どもがいてもいなくても、そのようなニュースに対して関心を持ち、冷静に対策を考えられる人でいたいと思っていたんです。
でも実際に子どもを持つと、恐怖心のほうが強くなりましたね。自分も凡人だったんだな……と思います。

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―― 共感する気持ちを獲得したという面もあるのでは?

でもその分、失ったものもあると思います。
自分は今でも「結婚した側」「子どもを生んだ側」に行ったつもりはなくて、一人旅の話や一人暮らしの部屋紹介のような記事には今も興味津々。
独身の頃と同じように楽しんでいるつもりなんです。
でも、もしかしたら、以前ほど独身の方の気持ちに入り込むことができていないかもしれません。自分と違う環境にいる人のことを、一生懸命考えられる人間でありたいなとは思っているのですが。

寂しいから子どもがほしかった

―― エッセイに書かれていた「寂しいから子どもがほしかった」という言葉が印象的でした。

子どもの頃からずっと孤独感があって、そこから逃れたい気持ちもありました。「寂しいから子どもがほしい」なんて言ったらいけない空気が世の中にはありますが。

結局、子どもが生まれても寂しさや孤独感は消えませんでした。それはそうですよね。子どもが生まれたからって寂しくなくなるわけじゃない。孤独は一生抱えていくものなんだなと思います。


―― 2人目を考えたのも同じ理由からですか?

子どもがほしい理由って、はっきりと説明するのは難しいですね。
でも上の子がものすごいスピードで成長していくのを見て、やはり寂しさは感じていました。

最初は私が「全世界」だったのに、だんだんと自立して世界が広がって。この勢いだと小学生になったら全然遊んでくれなくなって、大人になったら別の世界に行っちゃうんだと考えたら、今のこの時期は本当に貴重だなと。

それで、もう1人小さい子がほしいと思ったのかもしれません。

上の子が早めに手離れしそうだったのも後押しになりました。「今ならできる」「生まれて最初の数年さえ頑張れば」。そう思うとほしい気持ちに歯止めがきかなくなりました。


―― お子さんが2人になると家の雰囲気も変わりますよね。

そうですね。より子どもの世界観が強まった感じがします。

子どもが1人だったときは、大人の世界で子どもを預かって育てているような感覚でしたが、子どもが2人になったら、私が子どもの世界に間借りしているような雰囲気になりました。

子どもって小さいのに、空気を変える力がありますね。

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―― エッセイでは、お子さんを冷静に観察し、フラットな感覚で子育てを楽しんでいる様子が印象的です。

意識して観察しているというより、私のもともとの性格なんでしょうね。

私が子育てをあまりつらく感じていないのは、本当にたまたまだと思うんです。子育てがしやすい環境や夫の性格、子どものタイプ、そういう要素が偶然重なった結果であり、私の努力ではありません。

やはりつらい方は本当につらいようですし、それぞれの環境や事情によるのだろうなと思います。


―― 子育てを楽しんでいる山崎さんの著書を読んで、勇気づけられる人も多いと思います。

どうなんでしょう。やっぱり子育てをつらく感じている人が多数派なのか、「もっと男の人につらさを理解してもらえるような文章を書いてほしい」という意見もあるんですよね。

私は世の中はいろいろな人がいるのだから、いろいろな意見を言ったらいいと思っています。

子育てをつらく感じているなら、そのつらさは発信すべきだし、私のようにたまたま環境に恵まれて「楽しい」と感じている人も、それを隠さず発信していいんじゃないかと思うんですよね。子育ての世界にも多様性があっていいのかなと思います。

子どもは親に属するものではない

―― 子育てにおいて心がけていること・大切にしていることはありますか?

子どもは自分に属する存在ではなく、世界からの預かりものだと考えるようにしています。大切に育てて社会に返したいなと。

子どもを親の所有物だと思うと、他人からの評価が気になったり、親の努力次第でどうにかできる存在だと勘違いしてしまいますよね。一時的に預かったものと考えれば、ただ大切に慈しめばいいと思えるようになります。

自分のものだと思うから、自分を卑下するように子どものマイナス面が気になってしまうのだと思いますが、自分と切り離して考えれば子どもの大事な部分が見えてくるように思います。


―― 素敵な考えですね! そう思うようになったきっかけはありますか?

上の子の出産のときでしょうか。
妊娠中に前置胎盤になり、帝王切開でお産することになったんです。びっくりしたのは手術の日、つまり子どもの誕生日が、お医者さんの一存で決まるということ。

「え? 誕生日って運命に関わることなんじゃ……」。
非科学的なことを信じるタイプではないのですが、ちょっと疑問に思ってしまって。

でも同時に、「あぁ、子どもの社会はもう始まっているんだ」と分かった瞬間でもありました。お医者さんとか病院とか、この子の周りの社会の都合で子どもの人生は決まっていくんだと。

だから親の自分がコントロールしようとしたり、変えようとするのは、一切やめたほうがいいと思ったんです。私が何かできると思うのは、おごりでしかないなと。

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―― 子どもを自分から切り離して考えるということですね。

そうですね。別の存在、別人格だと思うようにしています。

私がそれをわりとできている理由は、仕事の存在が大きいような気がします。仕事ではなくて趣味でもいいと思うのですが、自分を表現する場があり、やりたいことをやれて、言いたいことが言える時間があることが大事なのではないかと。

子育てだけの世界にいて、そこで自分の評価が決まるとなると、言いたいことや信念をその世界で発信したくなりますよね。育児の場が、子どもが主人公ではなく、自分が主人公になってしまい、親が頑張ってストーリーを作ろうとしてしまう。

子育てと関係のないところで、自分がコントロールできる何かを持つといいんだろうなと思います。

親が教えられるのは「生は善だ」ということだけ

―― 親が子どもにしてあげられるのは、どんなことなのでしょうか。

人から聞いた話なんですけど、親が子どもに教えてあげられるのは「生きていることは絶対的な善である」ということだけらしいです。

「生きていることは楽しい」「自分は生きていていいんだ」ということだけ。それしか教えられないんだと。

それ以外は本人が獲得していくしかないから、親がそれ以上を教えられるというおごりを捨てないといけないなと思っています。


―― 幼い子どもに「生は善だ」と教えるのは難しそうですが、山崎さんはどうされていますか?

私もどうしたらいいかなと日々考えていますが、わりと直接的に「幸せだね」とか「生きててよかったね」とか言っています(笑)。

下の子はまだ0歳なので、大げさに言うと「私が全世界」ですよね。3歳の子でも、私のちょっとした変化で世界の在りようが変わるくらいの存在ではある。

だから子どもの話をとにかく一生懸命聞いたり、言うことを繰り返してあげたり、ただ肯定してあげるだけでも、子どもの世界の根幹みたいなものが、しっかりするのではないかと思っています。

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もう少し大きくなってきたら、また違う関わり方を模索しないといけないかもしれませんが、今しばらくはこの方法で「この世の中はいいところだ」と思ってもらえたらいいなと。

書店員の優しい夫との出会い

―― エッセイに登場する旦那さまのお話を読むと、山崎さんと子育てのベクトルが似ているように感じます。

そうですね。夫も育児を楽しんでいるみたいですね。

夫は優しい性格で、私は優しくないですが叱り方がいまいちわからなくて、親の二人とも、子どもを叱ることがあまりできていないんですよね。上の子は3歳になって、少しずつやんちゃになってきたので、そろそろ考えないといけないと思っています。


―― 旦那さまとは、どこで知り合われたんですか?

夫は町の本屋さんで働いているんですが、私の本が出版されて、いろいろな本屋さんへ挨拶回りしているときに出会いました。夫の勤める本屋さんへ行ったら、ちょうど夫が脚立に乗って蛍光灯を換えていたところで……「上から失礼します」と挨拶されたのが始まりでした。

それから数年後、書店員を主人公にした小説を書くことになり、彼に取材の申し入れをしたんです。そうしたら頼んでもいないのに、書店員の1日の流れをレポートにまとめて準備してくれていて。いい人だなぁと思いました。

私はそれを特別な気持ちで受け止めましたが、もともと頼まれたことを必要以上にやる性格のようです。私の本のこともすごく褒めてくれるので、私のことを好きなのかなと思っていたら、どの作家さんの本もすごく褒める。単に褒め上手な人でした(笑)。

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―― 旦那さまとの収入格差の話がよく出てきますが、結婚のネックにはなりませんでしたか?

全然ならなかったし、むしろ逆でしたね。

結婚を考えていたのは私の仕事がうまく行っている時期で、「私の良さは稼ぐところにある」くらいに考えていました。その頃は仕事をしている私の容姿へのバッシングがあって、女性の魅力は見た目だけではない、仕事やお金で勝負したい、という気持ちも強かったんです。

夫は男のプライド的なことを全く気にしない人。私が仕事をしていることを尊敬してくれているし、プラスに捉えてくれているように感じます。

彼がもし「綺麗な女の人と結婚するのが男としての成功だ」というタイプの人だったら、絶対に合わなかったけれど、彼は「仕事のできる女の人と結婚したら幸せになれる」と考えてくれているんじゃないかと。

私の場合はそういう男性のほうがうまくいくので、良かったなぁと思っています。


―― 夫婦間の主導権は山崎さんにあり、という感じでしょうか?

私にあるような気がします……。夫が私に合わせてくれる場面も多く、もしかしたら隠れたところに本音があるのかもしれません。それをすくい取れるようにしないといけませんね。

ケンカのような場面になっても、夫は優しいので、私が一方的に意見を言っている感じになってしまって。私は作家なので言葉がつい出てきてしまいます。論破も上手いから私の意見が通り過ぎていると感じることもよくあり、反省しているところです。


プロフィール
山崎ナオコーラ

1978年生まれ。福岡県北九州市出身。國學院大学文学部日本文学科卒業。2004年『人のセックスを笑うな』で文藝賞を受賞してデビュー。著書に、小説『ニキの屈辱』『美しい距離』(島清恋愛文学賞受賞)、エッセイ『母ではなくて、親になる』『かわいい夫』『ブスの自信の持ち方』などがある。
「誰にでもわかる言葉で、誰にも書けない文章を書きたい。」「フェミニンな男性を肯定したい」という目標を掲げている。

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この記事を書いた人
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Conobieスペシャルインタビュー

コノビー世代が気になるあの人に、子育てや日々の思いなどをインタビューするスペシャル企画です。...

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