長男ケイは、中学校で演劇部に所属していました。
大道具や小道具の準備をするのも1年生の仕事なのですが、ある日、とんでもないことが起きました。
息子の話によると、大道具の制作中にAくんと口論になり、そこにあった金づちで手の甲を力いっぱい叩かれたというのです。
すぐに病院に行くと、案の定骨折していました。
その日のうちに学校に連絡し、数日後、Aくん親子がわが家に謝罪にやってきました。
人を傷つけたという消えない事実。そして、親を泣かせるということの罪深さ。
「事の重大さを噛みしめて、もう一度出直してこい!」と言ってから数日後、Aくん親子は再び謝罪にやってきました。
その時のAくんは、前回のようなニヤけた表情はすっかり消えていました。
神妙な面もちで涙をこぼしながら、私に深々と頭を下げ、息子に心からの謝罪をしてくれたのです。
あの日、私はAくんを子ども扱いしませんでした。
そしてAくんのお母さんを責めることもしませんでした。
「中学生は子どもか?大人か?」…と自問自答しながらも、結局は「建前はいらない。一生懸命、本人に気持ちを伝えてみよう」と思い、本音でぶつかることにしたのです。
何が“正解”なのかは分かりませんが、あの時自分なりの精一杯の対応をしたことに後悔はありません。
息子のケガも1ヵ月ほどでよくなり、幸い後遺症もありませんでした。
そして現在は社会人になった長男とAくん、実は今では仲良しです。