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「社会から取り残されるのが怖い…」焦る私に、息子が教えてくれたこと<第二回投稿コンテストNo.2>

「社会から取り残されるのが怖い…」焦る私に、息子が教えてくれたこと<第二回投稿コンテストNo.2>のタイトル画像

大学院在学中に結婚・出産。産後間もないうちから研究会などの手伝いを志願したrin.さんの体験談です。

出典:http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10230001301


午前中のうちに掃除、洗濯、買い物。

最近黄昏泣きがひどいから、夕飯の下ごしらえは機嫌の良い午後イチで。

夫が今日は遅くなると言ってたな。

先にお風呂に入れてしまって、夜はテレビ会議に出ないと。

パソコンでの作業は隙間の時間にできるだろう。

あー、そういえばシャンプーがそろそろ切れるんだった。


外はうっすらと明るくなっている。

コクッコクッという音が愛しくてたまらない。

一生懸命おっぱいを飲む息子を抱いて、私は今日一日のスケジュールを頭の中でおさらいしていた。

壮絶だった出産から4ヶ月が経とうとしている。

ようやく、赤ちゃんと生活することに慣れはじめ、私がこの子を育てているんだ、という自信も湧いてきていた。


大学院在学中に結婚・出産した私は、産後も研究会やゼミに参加させてほしいと所属ゼミの教授に話をしていた。

出産前、私が一番恐れていたことは、“社会から切り離されること”だった。

育児に追われ、外の世界から取り残されるのが怖かった私は、家の外に、妻として、母としてではない“私”がいてもよい場所を確保するのに必死だった。

今回は、来週末に迫っている研究会の手伝いをさせてもらうことになっている。

参加者へのメール対応、当日のスタッフ配置、準備物の確認など、家でパソコンとスマートフォンがあればできる仕事をまわしてもらった。

片道約2時間かかる大学で行われる会議にはビデオ通話で参加した。

昔から、自分は要領が良い方だと思っていた。

頭の中で段取りを組み、それ通りにこなしていくのが好きだった。

育児もきっと段取りをしっかりしていればうまくいくと思っていた。

-この日までは。


買い物中に抱っこ紐の中で眠ってしまった息子を起こさないよう、そーっと下ろし、私はパソコンを開いた。

「メールたまってるなぁ。」

「…様、お世話になっております、と。」

ふぎゃあ、ふぎゃあ

「あー起きちゃったの。おっぱい飲もうか。」

膝の上に乗せた息子を左手で支えながら、右手でキーボードをたたく。

授乳が終わるとすぐ息子を横にし、続きの作業にとりかかる。

ふぎゃあ、ふぎゃあ、ふぎゃあ

「あれ、おかしいな。いつもならおっぱいあげたら落ち着くのに。足りなかったのかな?」

授乳を再開すると少し落ち着いた。

しかし、間もなくぐずり始める息子。

「あぁ、オムツだったね。ごめんごめん。」

オムツを取り替え、また私はパソコンに向かう。

しばらくすると、あうー、あうー、んぎゃー

「なになに?どうしたの?」

仕事が進まないことにだんだんイライラしはじめてきた。

ぐずる息子を抱っこして部屋の中を歩き回る。

頭の中では、返信するメールの文面を考えている。


しばらく部屋の中を歩いてもぐずぐず。

お気に入りのおもちゃであやしても、抱っこ紐で寝かそうとしてもぐずぐず。

そうだ。ベランダに出たら泣きやむときがあるな。

……ダメだ。

熱があるようでもない。

仕方ない、最終手段。

おっぱいをあげたら泣きやむだろう。

……ってあれ?くわえもせずに泣いている。

なんで?どうしよう。

しないといけないこと、なんにもできていない。

息子の泣き声がだんだん大きくなってきた。

顔は真っ赤になっている。


ふぎゃあー、ふぎゃあー

なんで?

何が嫌なの?

どうしてほしいの?

お願い泣きやんで……。

ふぎゃー、ふぎゃー、ふぎゃあああー

「あーもう。うるさい!」


……言っちゃった。

言っちゃいけないこと言っちゃった。

自分から出てきた言葉が信じられなくて、信じたくなくて、ボロボロボロ…と涙が溢れてきた。


「……ごめん。ごめんね。嘘だよ、ウソ。うるさくないよ。ごめんね。」


日が沈んできたらしい。

薄暗くなった部屋で、汗びっしょりになって泣いている息子を抱いて、私も子どもみたいにわんわん泣いた。

しばらくすると、2人ともやっと落ち着いた。

大泣きした息子は、ヒクッヒクッとまだ呼吸が整っていない。

「ごめんね。」

……あ、今日はじめて息子の目を見た。

にこーっと天使のような笑顔を向けてくれた。

引っ込んだはずの涙がまたツーッと頰を伝った。

「ありがとう。」


夫の帰宅後、今日の出来事を話した。

「大変だったんだね。お疲れ様。まるで、君の感情を察知しているみたいだなぁ。君と彼の気持ちはリンクしているのかもね。」

ハッとした。

そういえば、以前夫と喧嘩してイライラしていたときも息子の機嫌が悪くなっていた。

そうか。私を一番近くで見ている息子は、いち早く私の不安定さを感じとり、ときには代わりにSOSを送ってくれていたんだ。

私が自分で気づけない余裕のなさを教えてくれていたんだ。

“目からウロコ”ってこういうときに使うのかな。


「すごいなぁ。こんなに小さいのに。」

私がこの子を育てている、なんて偉そうなことよく言えたな。

全然違う。

人として、母として、私はこの子に成長させてもらってるんだ。


なんだか、肩の荷がフッと下りた気がした。

何もかもきちんとこなすことより、大事なことがあったんだ。

明日は何をして遊ぼう。

目を見てたくさん話をしよう。

ゆっくり好きなだけおっぱいを飲ませてあげよう。

天気が良ければ散歩に行こうか。


「おーい。シャンプーの詰め替えある?」

「あ、忘れてた。薄めて使って〜!」


余談。

周りの方々の支えもあり、研究会は無事に終わりました。

当初は予定されていませんでしたが、「需要があるだろう」ということで託児所が設けられることになり、息子も一緒に参加しました。

託児スタッフのお姉さんたちに可愛がられ、息子も上機嫌でした。

赤ちゃん同伴で参加する私を見て、「勇気が出ました。」と言ってくれた妊婦さんもいらっしゃいました。

教授は、「この子はあなたにパワーをくれているんだね。」とおっしゃってくださいました。

これからも、息子とともに成長していければと思います。



ライター:rin.


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