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公開 2018年04月03日  

夫と2人でデートっぽい雰囲気とか、心の準備できてないって。 / 16話 sideキリコ(2ページ目)

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ヨリミチビヨリの編集者・吉田との打ち合わせを終えたキリコは、吉田に言われた「色んな可能性」をみてみるという言葉を考えながら、満と奏太の待つ岐阜に向かった。しかし、奏太がお昼寝してしまい、満とふたりきりで過ごすことに――。


キリコ   「ねぇ、7時で閉店だって。カフェは何時までだろ」

   「コーヒーでも飲もうか」

キリコ   「賛成!」


せっかくだからお茶もしたいし、雑貨も見たい! こんなゆっくり出来ることなんてめったにないもの!

フォトスタジオの横にあるカフェに入ると、まさかの生演奏が聞こえてきた。

カフェの中に小さなステージがあり、一人の男性がチェロを弾いている。


キリコ   「ちょっとすごくない? 生演奏とか。もういろいろご褒美すぎて驚くわ」

   「たまには大人もご褒美もらってもいいと思うよ」


わー、なんだろう。私がカリカリしてないせいか、夫の返しも穏やか。イラッとした返答じゃないわ。


キリコ   「見て、このケーキ美味しそう。あ、でもお義母さんが夕飯作って待ってるよね?」

   「食べたいなら食べちゃえばいいと思うよ。俺にも少しちょうだい」

キリコ   「いいよ」


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クリームチーズをたっぷり使った濃厚なベイクドチーズケーキとホットコーヒーを私と夫はゆっくりと味わう。

キリコ   「ふ~」

   「……」

キリコ   「……」


…あれ、なんかやっぱり2人きりが久々過ぎて話が続かないかも。沈黙してるのは…私たちのテーブルだけだぞ。


キリコ   「あ、あのさ…なんかこんな風にパパと2人でゆっくり甘いもの食べるなんて久々だよね」

   「奏太がいないと静かだね」


本当…。奏太がこの場にいないことが少し寂しくなってきたぞ。

奏ちゃんにもケーキを食べさせてあげたい……。うぅ…。


いやでも! せっかくの時間なんだから夫と話したいことを話しておこう。

私はチーズケーキを頬張りながら夫を見る。

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キリコ   「…で、どうだったの? 見てみたかったこのフォトスタジオは」

   「うーん…いいなーと思った、正直。子どもたちの衣装もこだわってるの分かったし。あれ、スエーデンのブランドだったと思うよ」

キリコ   「へぇ!」

   「…吉田さんが言ってた10年後」

キリコ   「おぉ、やっぱりそれ引きずるよね。私もずっと考えちゃってたよ、新幹線の中で」

   「俺は46歳かー」

キリコ   「どんな風になっていたいの、パパは」

   「うーん…できれば…仕事を楽しめてるおじさんになっていたいかなぁ…」

キリコ   「あー、確かに。私もいろいろと楽しめてるおばさんになりたいな。吉田さん、相変わらずめっちゃ可愛くてさ。お洒落さんだし。子どもが二人いて、仕事もして、義両親と同居して。絶対ぜーったい大変なバタバタな生活なんだろうけど、楽しそうなのよ」

   「うん」

キリコ   「きっと…自分にとって何が大切か、優先順位を分かってる人なんだろうなーって思った」

   「優先順位ねー」

キリコ   「あ、そうそう。さっき話したレーダーグラフやってみない?」


私は打合せに持って行ったノートとペンを取り出し、白紙のページを開いた。


さて。お互い、どんなグラフになるでしょうか。

そう思いながら書いてみるとそこには――。

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▶︎▶︎ 次回、17話は、4/6(金)20時公開予定!

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※ この記事は2024年03月28日に再公開された記事です。

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