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わたしは妊娠中から「母ではなくて、親になる」と決めていた。

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出産・子育てについて書かれた書籍『母ではなくて、親になる』(著:山崎ナオコーラ 河出書房新社 刊)より、出版社から許可を得て、全30話のうちの2話のみ、エッセイを転載します。1話目は、「人に会うとはどういうことか」。続きは、ぜひ書籍でお楽しみください。

人に会うとはどういうことか

人に会いたい、人に会いたい、と思って生きてきた。

なぜ赤ん坊を育てたいのか?

その問いについて深く考えることのないままここまで来てしまったが、寂しいからと子どもを欲しがってはいけないのは重々承知しながら、やはり寂しさから逃れたかった。

大きくなったら遠く離れていってしまう存在だとはわかっているが、自分の側で燃え上がってくれる小さい人間とほんのひとときでも過ごせたら、その思い出だけであとの人生も生きられるのではないか。

おばあさんになったとき、「そういえば、昔、赤ん坊の世話をしたなあ」と目を閉じたりなんかして……。


思い起こせば、独身のときから子どもは育てたかった。

大学を出て、三年ほど会社員をして、二十六歳で作家になった。

もともとぶすでモテなかったが、作家になってからはもっとモテなくなった。

子どもが産めるなら産みたかったが、相手がいないのにどうやって産んだらいいのかわからなかった。

(ときどき、「女性の社会進出によって少子化が進んだ」「『仕事のキャリアを築くことより、子どもを産むことの方に価値がある』と若い女性が考えを改めれば高齢出産は減る」といった声を聞くが、

それは、「若い女性というものは、仕事さえしなければ子どもを産める」「女性の考えだけで少子化や妊婦高齢化が進んでいる」ということなのだろうか。

その辺りがよくわからない。

つまり、「子どもを欲しがらない男性を騙し、女性ひとりの判断で勝手に子どもを作って産み育てる」、「今の日本は大黒柱ひとりで家庭を運営することが難しい経済状況だが、女性はキャリアを築くことは意識せずに簡単な仕事をするようにし、生活水準をぎりぎりまで落とし、子どもの進学の可能性は考えずに見切り発車で産む」といったことが推奨されているのだろうか。

「育児資金がない場合、女性は仕事の勉強をするより化粧の勉強をした方が子どもを産み易くなるはずだ」といった矛盾することを社会から言われているようで、私には理解が難しかった)。


そうして、子どもの産み方がわからないまま、三十歳を越えた。

三十三歳になって、やっと、「町の本屋さん」で働く書店員と結婚した。

私より一歳上の、優しく、可愛らしい夫だ。

結婚してみたら、夫は経済力も生活能力も低く、私が夫の世話を焼くシーンが増えていき、それが意外と楽しかった。

「自分は世話好きかもしれない」と思った。

夫に自分が稼いだ金を遣ったり、夫に「これを着な」「これを食べな」と服や食べ物を用意したりすることに、喜びを感じた。

子どもの世話も、きっとできる、と思った。


ただ、私は子どもを産みたかったが、子どもと仲良くなることは下手だ。

親戚の子どもと会うとき、どう喋りかけたら良いのかわからない。子どものいる場に行くと、まごついてしまう。

私は大人とだって、付き合うのが苦手なのだ。友人と会うとき、リーダーシップを取ったり、気遣いをしたりはまずしない。

どちらかというと、みんなから気遣ってもらいながら生きてきた。甘えていて、責任感に乏しい。

だから、私の母や妹や友人たちは、私を世話好きだとは見ておらず、子どもをちゃんと育てられるのか、と不安に思っているようだ。

「どんな風に子どもと接しているの?」とよく聞かれる。

けれども、私が世話好きというのは、本当にそうだろうという感じが今もしている。

他の人から見てとれるような「子ども好き」という雰囲気は私にはないかもしれないが、私みたいに内向的な世話好きもいるのだ。

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山崎ナオコーラ『母ではなくて、親になる』(河出書房新社)

流産、「妊活」、妊娠、出産、そして赤ん坊が1歳になるまでの育児をつづった全30話のエッセイ。
「町の本屋さん」で働く安月給の夫と、小説家で「ブス」な妻だが、親...

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