Aくんが遊び場に通い始めて1年を過ぎたころには、依然として、他の友だちに他の遊びに誘われても「おれはできないからいいよ」と言って、少し離れて見ているだけでしたが、一緒に野球をした経験がある友だちとであれば、少し話ができるようになっていました。
Aくんが鬼ごっこやトランプなど、野球以外の遊びを他の子どもたちと一緒に楽しむようになったのは、それからさらに数年後のことです。
最終的には、自分から声をかけて、野球や他の遊びに子どもたちを誘うこともできるようになりました。Aくんを中心とした子ども集団ができることなど、当初からは考えられなかったのですが、確かに長い月日の中でAくんは何かしらの殻を破り、自らを成長させる機会を掴んだのでした。この変化は劇的な変化ではありませんでしたが、着実に積み重なっていった変化でした。
初めて会った時からしばらく経って知ったのですが、Aくんは遊び場のある学区に住んでいるわけではなく、土日だけ、電車に乗って遊びに来ていたのだそうです。当然、遊び場の周辺に見知った友人がいるわけでもなく、「遊び場がある」という話を頼りに一人で遊びに来ていたのです。
そこにどんなスタッフ(大人)がいて、どんな子どもたちが来ているのか全くわからない状態で、同い年くらいの子どもたちに声をかけるのは誰だって尻込みしてしまいますよね。遊び場に初めて来た当時小学2年生のAくんにとって、唯一自信を持って遊びきれるものは、スタッフとやる30分の「野球」だけだったのかもしれません。
自分で自分にOKが出せる「根拠のない自信」が育つ環境とは〜子どもの遊びと育ち(心編/自己肯定感)〜(2ページ目)
日本は自己肯定感の低い子どもたちが多いと聞きます。その原因がどこにあるのかはっきりとは分からないものの、子どもたちが遊ぶ現場にいて感じることはたくさんあります。豊かに遊ぶ経験を持った子どもたちに共通している”根拠のない自信”とは?遊びが子どもたちの心の育ちにどんな影響をもっているのか。エピソードを交えながら紹介していきます。
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