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公開 2017年07月27日  

新しい産後サポートのカタチ。「産褥ヘルプ」は“おせっかい”から始まる

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友人の出産報告を見た時…「落ち着いてから会いに行くね」と言ってませんか?


ある日、同僚からきたメッセージ。

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※実際のやりとり

このメッセージを受け取ったのは島畑維悦(しまはた いえつ)さん。


出産予定日よりも約1週間ほど早い、7月16日に我が子を出産。

メッセージを受け取ったのは、産後わずか1週間ほどでした。

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島畑維悦(しまはたいえつ)さんと娘の亜衣(あい)ちゃん。

NPO法人マドレボニータが提唱している“産褥ヘルプ”とは

産後の身体は、妊娠前の状態に戻るまで約6週間から8週間程度かかり、その期間のことを産褥(さんじょく)期と呼びます。

『「産後ケア」の普及と研究を通じて家族の笑顔を増やしたい。』をミッションとする、NPO法人マドレボニータが推奨している「産褥ヘルプ」という取り組みが、いま注目されています。

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産褥ヘルプとは?

無理をせずゆっくり安静にして、出産によるダメージを回復させ、これから長くつづく育児を健康な状態でスタートさせるために体を整える大切な時期です。

高価なお祝い品を贈る代わりに、時間と手をみんなで少しずつ差しのべ、
家事や子ども・赤ちゃんのお世話といったお手伝いをプレゼントする
というのが「産褥ヘルプ」のコンセプトです。

そうして、コノビー編集部のメンバーで「産褥ヘルプ」の取り組みが始まりました。

「産褥ヘルプ」のためのFacebookグループの立ち上げ

まずは、この取り組みに参加するグループを立ち上げ、産褥ヘルプの目的を伝えます。

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実際の投稿画面

「産褥ヘルプ」のシフトに参加するメンバーの確定

維悦さんが所属する部署のメンバーはおよそ30名~40名ほど。
その中から「任意・希望するメンバー」で産褥ヘルプのシフトを組むことにしました。

また産褥ヘルプの趣旨を上司に伝え、
平日の日中に行ってもOK、と部内での承諾も得ました。

「産褥ヘルプ」の内容について、島畑家と事前相談

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島畑一家。左から智仁(ともひと)さん、維悦(いえつ)さん、亜衣(あい)ちゃん。

事前にどんなことをしてほしいか?を島畑家と相談。

主には

 ・お昼ご飯をつくる
 ・洗濯をする

と事前に決めていたのはこの2つ。
(※夫の智仁さんも2ヶ月の育児休暇をとっていました。)

また基本的には2人一組で行き、あまり大勢で押しかけることのないように調整。

またそれ以外にも、もともと男性がシフトに入っていたのですが、
「授乳回数も多いし、産後のデリケートな時期なので」と見直し、最初は女性だけが産褥ヘルプに参加することに。

いよいよ、「産褥ヘルプ」初日!

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亜衣ちゃん、生後すぐの時。まだ小さいです。

そしていよいよ、島畑家への産褥ヘルプが始まりました。

毎回の産褥ヘルプで欠かせない「料理」

大体2人一組で行くので、1人は料理の準備に取りかかります。

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事前に夫婦それぞれの好き嫌い、また維悦さんが積極的に摂っているもの・控えているものなどを聞いておきました。

それを踏まえて、メニューを考えてつくります。

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洗濯や掃除、そして赤ちゃんのお世話も


もう一人は、洗濯機を回し、
その間に亜衣ちゃんを抱っこしたり、オムツを替えたり。

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ヘルプ中に「仮眠」をとったり

産褥ヘルプ中は、夫婦の「自由時間」を大切にしてもらうことに。

ヘルプ初日は、まだ生後1ヶ月も経っていない時期でした。

そのため寝不足だった維悦さんは、ヘルプ中仮眠を取り、2時間くらい寝れたようでした。

ご飯ができるまでゆっくり話していたり

また別の日は、産褥ヘルプに行ったメンバーと

ご飯ができるまで、二人でゆっくり話すことも。

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左からコノビー編集部の三輪、維悦さん。育児雑誌を見ながら、ちょっとした相談中。

お風呂に入ってもらったり

また別の日は

「お風呂ゆっくり入りたい!」と言って、ヘルプ中入浴していましたが、

お風呂に入っている間に亜衣ちゃんが泣いてしまって、髪の毛を乾かす前に「大丈夫?」とすぐに確認しに…

ヘルプに来ている間も「完全にゆっくり」は難しかったかな…。

手形・足形を一緒に取ったり

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「記念に取りたかったんだ~」と手形・足形アートキットを見せてくれた維悦さん。

智仁さんが手を押さえ、維悦さんが手形を紙に取り、もう一人がその後すぐに手をふく…という布陣でどうにか取れました(笑)。

手形アート…とっても難しい。。

外出に行ってもらったり

「区役所に行きたい用事がある」

とあらかじめ言ってもらい、ヘルプ中は夫婦でお出かけすることも。

産後はなかなか2人きりで過ごすこともなくなったため、良いリフレッシュにもなったみたいです。

亜衣ちゃんは初!パパ以外の抱っこを経験したり…

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なんだかちょっときごちないけど、うれしそう!なコノビー編集長、渡辺。

産褥ヘルプが終わりに近づくころ、やっと「男性解禁」になったため、コノビー編集長の渡辺も参加!

「パパ以外で、男性は初めてだよ~!」と維悦さん。

亜衣ちゃん、笑って…ない(笑)

料理を作り終わったら、みんなで食卓を囲んで

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そしてご飯ができたら、みんなで食卓を囲みます。

そのうち一人は、亜衣ちゃんを抱っこしながら会話を楽しむことに。

約3時間以内には、家を出ることを基本にし、
結果11日間、シフトを組んでいきました。

Facebookグループで内容をシェアし、次のシフトメンバーに引継ぎ

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その日の産褥ヘルプの内容はFacebookグループで報告。

またかかった食材費などは「出産祝い」として、そのままプレゼント


こうして産後8週目が過ぎ、産褥ヘルプは終了。

この取り組みについて“おせっかいすぎ”ではないか?と思う方もいるかもしれません。

実際に産褥ヘルプを受けた、島畑夫妻にインタビューしてみました。

「産褥ヘルプ」してもらった側はどう思った?

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今では亜衣ちゃんもすくすく!100日記念のお写真。

まずは、島畑維悦さん。

「最初は不安もあったけど、同僚に家に来てもらうことで、産後の弱った体と心をとても癒してもらいました。

また家事を代わってもらって、時間に余裕ができて体を休められたし、心にも余裕ができて、子どもをより“かわいい!”と思いながら接することができたのが大きいですね。」

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産褥期に「身体」を意識して休められた

「来てもらっている時間は、昼寝をしたり、ソファーで休んだり、
“お客さんが来た”という感覚ではなく、気兼ねなく好きにできたのも良かったです。」

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手足がはみ出るほど、大きく成長!

何より育児の不安な気持ちがやわらいだ

「産後すぐは、小さなことでも不安に。もちろん健診の時など、医師や保健師さんにも聞くことはできるのですが、

今回産褥ヘルプに来てくれた中に先輩ママがいたり、保育経験のある同僚がいたり、ちょっとした気になることについて聞けるのがうれしかったです。

あとはずっと赤ちゃんと夫婦だけの生活が続いている中、話し相手になってくれて、それもすごくいい気分転換でしたね。

同じ会社の同僚なので、育休中には分からない会社の変化も聞けて「社会とつながっている」感覚も持つことができました。」

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夫の智仁さんにも、お話を伺うと…

「僕自身も育休をとってどうなるかな、と思っていましたが、産褥ヘルプによって心に余裕ができた気がします。

家族以外の方と話したり、家事を代わってもらったりすることで、家族と良い向き合い方ができたので嬉しかったです。

あとは娘の成長を一緒に見れたのも大きかった。「前よりちょっと重くなったね!」など、変化を共有できる人がいるのは、とても嬉しいものなんですね。」

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課題は“大変な時だからこそ、オープンにできるかどうか”ということ

一方で、すべての人に産褥ヘルプをすすめることはできない…と維悦さん。

産後くたくたなので、人に会う余裕がない…そう感じてしまう人もいると思います。
例えて言うならば、“風邪で寝込んでる時に人に会いたくない感じ”に似てるかもしれません。

自分に余裕がなくて、化粧もできないし家が散らかってるのが気になる…。そんな状態で、逆に気を遣ってしまって疲れちゃう…なんてこともあるかなと思いました。」

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「また“みんな自分で育てているのに、ほかの人に頼むのは…”と、罪悪感を感じることも人によってはあるかもしれません。
私の場合はそれは特に感じなくて、むしろ助かる!!と思っていましたが(笑)

でも初めての育児だと、赤ちゃんはあまりにも弱々しい存在。
自分が触れるのもおっかなビックリなのに、子育て経験のない人に抱っこされたりするのが心配…と抵抗感を覚えることもあるんじゃないかな。」

課題も見つかりました

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私たちが産褥ヘルプにトライしてみて、

 ・男性をシフトに入れるかどうか
 ・平日のシフトの場合は、その間は仕事ができない
 ・家が遠い場合のヘルプのしづらさ

など、状況に応じた課題もあると感じました。

何より

大変な状況だからこそ、サポートしたいと思う周りと、

大変な状況だからこそ、受け入れにくいという家族の状況。

そこをどれだけお互いオープンにできるか、というのは産褥ヘルプを進めていく中で大事な視点なのかもしれません。

それでも「産褥ヘルプ」経験者が、“おせっかい”をし始める

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独身・子なし。

友だちが「出産しました」とアップした瞬間に、
自ら距離を置いてしまっていないでしょうか?

「落ち着いてから会いに行くね」ではなく、

大変な時こそ「おせっかい」に行きたい。



産褥ヘルプの経験を通して、
一人ひとりがそんな思いを抱きました。

出産・子育てを経験していなくても、必ずできることはある。

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むしろ、
「出産を経験した人しか分からない」
「子育てを経験していないと分からない」

ではなく、文化として

“産後のママを、周りがサポートする”ということが、当たり前になっていく…

そして一人ひとりの一歩で、“おせっかい”の輪を広げていく…


それが子育てをしているパパママの困り感や見えない壁を取り除く、第一歩になるかもしれません。

(取材・文:コノビー編集部 山口奈緒子)

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