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  5. 私が「障害が重いほど、普通学級で学ぶがいい」と思う理由~重度の知的障害の健太さんの話~

私が「障害が重いほど、普通学級で学ぶがいい」と思う理由~重度の知的障害の健太さんの話~

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障害のあるお子さんの就学に関して、親御さんはとても悩まれると思います。そして重度の障害といわれるお子さんは支援学校で学ぶ方がいいと思い込んでいませんか?多くの専門家も同じようにおっしゃるでしょう。でも大半の大人たちは、重度障害のあるお友達と同じ教室で学んできた経験はほとんどないのではないでしょうか。今こそ既存の価値観を疑い、視点を変えて考えてみませんか?

出典:http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=28174007499

先の記事で、障害が重度といわれる子どもこそ普通教室で学ぶのがいい、と書きました。
では実際に普通教室で学んできたとして、一体それが将来何のためになるの?と疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。

私の友人で、大阪市に住む健太さん。
健太さんは、しゃべることができない・書けない・点の取れない重度の知的障害と判定されていますが、小中学校をずっと普通教室で学んでこられました。そしてその後も、高校生活、大学生活とエンジョイされてきました。

そんな健太さんについて書かれた、お母さまの手記がとても素敵なのでご紹介したいと思います。

どんなに練習しても出来なかったことを、簡単にさせてしまう偉大な力とは…?

以下、お母さまの手記より抜粋となります。

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健太は、茶髪で身だしなみにも気を使いそこそこオシャレも楽しんでいて、褒められることが大好きです。
しゃべれない、書けない、点の取れない重度と言われる障害児です。

身辺自立もまだ出来てないですし、1人で出かけることもありません。
そんな息子ですが、今まで共に学び共に育ってきたおかげで生きる力はピカイチです。

非言語なのにコミュニケーション力が高く、自分のことを多くの人に知ってもらっています。
空気を読む力も身につけていていろんな出来事があっても状況判断ができ、居場所を見つけることも出来ます。
精神面なんかも22歳男子と同じように成長していると思います。


みんなと一緒に当たり前に過ごすことは、本人にとっても他の子にとってもひとりひとり個性は違うけれど、同じクラスでの一員であるということを位置づけます。

低学年の頃は出来る事も少なくいつも先生が横について授業を受けていました。身体も小さく運動機能も未熟だったので球技の授業なんかはうまく参加できてませんでした。

そんなサッカーの授業の時…1人の男の子が先生に「ボールの空気抜いてやったら健太もけれるんちゃう?」と提案してくれ、クラスで相談しすぐにボールの空気が抜かれました。おかげでゆっくりところがってくるボールを健太もけることが出来、ゲームに参加することが出来ました。

ずっと一緒にいるということは、子供たちの中にも健太だけが別のことをするという発想が浮かばないのだとすごく驚かされ感動しました。

中学3年生、受験シーズンになった頃、いつも一緒にいるお友達から意外な質問をうけました。
それは、健太は私立はどこを受けるのかということでした。
彼は健太の学力のことはもちろん知っています。
それでも同じように受験するとしか思っていないんだなあとこれまた驚かされました。

それで健太の受験が狭き門であること、S高校の自立支援コース(大阪にある制度で、知的障害のある子だけが受験できるコース)を受験すること、それがとても高倍率であることを話ました。
クラスのみんなにも先生から伝えてもらうと、みんなから何か応援できることはないか考えてくれ、写真入り寄せ書きを作ってくれました。受験、面接の時に健太がそれを試験官の先生にアピールし(それが合否にどう影響したのかはわかりませんが)みごと合格しました。


自立支援コースの制度で入学した健太は初めて、分けられる経験をしました。
入学式の座席がクラスの一番後ろに別に用意されていました。
もちろんクラスに在籍ですしほとんど授業も一緒に受けます。

ただ、1年生で週に2時間、2、3年生では週4時間、自立活動という自立支援生だけの授業が、コネットルームという部屋で行われます。内容はみんなで同じことをしたり個々に合った学習をしたりです。

そのことはとても手厚く良いようにも思えるのですが、分けられたことのない私たちにとっては、とても違和感を感じました。コネットルームで自立支援コースの子と過ごしてる間、クラスであったことの思い出には健太はいません。そして健太の記憶にも残りません。思い出が奪われてしまいました。

個々に合った学習のおかげで確かにできる事も増えました。でもそれはその時しか出来ないことにも思えません。高校生の健太はその時だけです。みんなとの思い出なんて後では作れません。分けることで、思い出を奪ってしまう事をわかってもらいたいです。


そんな制度にしばられたところがあったS高校でしたが、多くの仲間と良い先生方に出会えました。高校3年生の卒業遠足がUSJでグループ行動するということが入学してまもなくわかりました。

ですが健太は、着ぐるみが苦手、暗い場所大きな音が怖い、そして乗ったことのない絶叫系と課題だらけ…でも当日はお友達と一緒に楽しい思い出を作って欲しいと思っていましたので、これは慣れるしかないと思い、高1の夏から年間パスポートを買い、ヘルパーさん、支援者、家族と何度も通いましたが、克服することは出来ませんでした。

そして当日先生にそのことを伝え、無理だったら健太は別行動でもかまいませんと話し、送り出しました。ところが一緒に帰ってきた先生が満面の笑みで私に「おかあさん!健太、みんなと一緒に全部まわれましたよ!!」と。友達の力ってやっぱり凄いなあと改めて感動しました。

18歳になっても友達の力で成長する、そして友達の中で凄く楽しそうな健太を見ていて、ぜひ大学にも行かせたい、行きたいって思ってるに違いないという思いが強くなりました。

私が「障害が重いほど、普通学級で学ぶがいい」と思う理由~重度の知的障害の健太さんの話~の画像1

高校の先生方も健太が大学に行くのもアリ、そして行かせたいと思って下さり、とても熱心にいろんな大学の門をたたいて下さいました。

ただ、大学の壁は高く厚く、多くの大学で断られました。
年内全滅。
年明けからは完全入学をあきらめたカタチでの大学生活を、S大学に打診して頂きました。

そして、大学から、「障害を理由に断りません」と言って頂き、科目等履修生として大学に通うことが決まりました。
S大学の科目等履修生は週に5時間と決まっています。
なので1時間ずつ毎日通うことにしました。

最初はずっと一緒に私と授業を受けていましたが、知り合いの先生にボランティア部の部長さんを紹介して頂きそこから輪が広がったのと授業でチラシを配らせて頂いたこと、また直接、声掛けする中、どんどんサポーターさんが増え、すぐに私が授業を受けることはなくなりました。

授業だけでなく昼食や登下校も一緒に過ごしてくれています。更には1回生の時からゼミにも入れて頂き、飲み会にもずっと参加しています。

2回生の時にそのゼミの1つ上の女の子に恋をしました。彼女は仲の良いお友達とサポーターを申し出てくれ、授業、昼食、登下校と多くの時間を一緒に過ごしてくれました。

ある日の帰り道、藤井寺から電車に乗り、好きなNちゃんが早足で行って3人分の座席をとってくれました。そのことにもう1人のIちゃんが「Nちゃんが席を取ってくれてんから ありがとうって言いや」と健太に言いました。いつもの健太なら首を縦にふって‘ありがとう’を示すのですが、その日は『ありがとう!』と言ったのです。

奇跡がおこりました。20歳になって初めてありがとうが言えたんです。友達の力、そして恋の力は偉大だと思います。

まさかの出来事にとても驚いたのと同時に、お友達に本当に感謝です。
大きく広くなった社会・世界で健太は更に生きる力を身につけ、大学生活を満喫しています。
大学にも行って本当によかったです。
(2015年11月)
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『ともにまなぶ ともにいきる』学校生活後には、豊かな人生がきっとある

健太さんの学校生活についてのもっと詳しい内容は、雑誌『ともにまなぶ ともにいきる』第2号に掲載されています。
フリーランス・ライターの合田享史さんが丁寧に取材をされ、健太さんだけではなく大阪府内での実践例をいくつも具体的に紹介されています。教育関係者のみならず、多くの保護者の方にぜひ読んでいただきたい内容です。

私が「障害が重いほど、普通学級で学ぶがいい」と思う理由~重度の知的障害の健太さんの話~の画像2

大阪発「ともに学び、ともに生きる教育」情報板

健太さんはこの春、大学生活を終え、乗馬クラブでのアルバイト雇用が決まったそうです。
今まで当たり前のように友達と一緒に過ごしてきた健太さんは、これからも周りの人に笑顔を与えながら、豊かな人生を歩んでいかれるに違いありません。

「共に学び、共に生きる学校生活の後には、きっと実りある人生が待っている」。私はそう信じています。

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この記事を書いた人

井村よしみ

大阪府在住。子育て支援の活動を少し、最近は、ガラスアクセサリー作りをしています。
娘は最重度の知的障害があり、地域の小中学校、支援学校高等部を経て定時制高校に...

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