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公開 2015年03月30日  

妊娠中のインフルエンザについて

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冬場に流行するインフルエンザ。妊娠中は症状が悪化する事もあるので感染に注意し、早期の対応が必要です。今回はインフルエンザについてワクチンの話も交えつつ解説します。


インフルエンザとは

冬場に流行する、インフルエンザウィルスによる感染症です。基本的には風邪の一種なのですが、普通の風邪に比べて、発熱や関節痛等の症状が強い事、感染力が強い事等が特徴です。インフルエンザを発症した場合、特に何も治療を行わなくても1〜2週間程度で軽快するケースが大部分ですが、妊娠期間中は心肺機能が悪化し、入院治療が必要になるリスクが妊娠前よりも増えるという報告があるため、感染に注意する必要があります。

インフルエンザの予防

インフルエンザ流行期は人ごみを避け、外出時はマスクを使用し感染対策を行う事が大切です。インフルエンザウィルスの主な感染経路は、感染者のくしゃみや咳から飛沫するウィルスを吸い込む飛沫感染や、感染者が触ったドアノブやスイッチを触る事による接触感染が大部分です。そのため家族にインフルエンザを発症した方がいる場合、感染者、非感染者ともにしっかりとした手洗い・マスク装着を行う事が感染予防において重要です。

インフルエンザワクチン

インフルエンザ予防のもう一つの方法として、ワクチン摂取があります。ワクチン摂取によって、インフルエンザウィルスの感染予防だけでなく、仮に感染してしまった場合でも、重症化を防ぎ治癒までの期間が短くなります。さらに、妊娠28週以降にワクチン摂取を行った妊婦からの児は、生後6ヶ月までのインフルエンザ罹患率が、ワクチン非接種の場合と比較し、63%減少するという報告もあり、妊娠期間中のワクチン接種は、産後の児のインフルエンザ発症予防にもつながります。妊娠中のワクチン摂取については、以前から議論がされていましたが、インフルエンザワクチンは、ウィルスを死滅させ毒性を無くしたものを使用している不活化ワクチンという種類ですので、妊婦・胎児には基本的に害は無いとされています。これらの根拠から現在日本では、ワクチン接種希望の妊婦に対して、全妊娠期間を通じて接種を推奨するという方針になっています。ワクチンの効果は、注射から約2-3週間後に出現し3-4ヶ月持続しますので、流行シーズンの少し前、10-11月頃の接種が一般的です。最後にもう一つ、インフルエンザワクチンには、防腐剤のエチル水銀が入っているものと入っていないものの2種類が存在します。基本的には防腐剤が入っていないワクチンの方が胎児に対する影響を考えると推奨されるのですが、エチル水銀が含まれるワクチンでも、その含有量は0.004-0.008mg/mLと非常に微量で胎児への影響は無いと考えられています。

インフルエンザ治療薬

上述したように、インフルエンザは特に何もしなくても、大多数が1-2週間程度で軽快しますし、ワクチンを使用する事で重症化の予防や治癒期間の短縮が見込めます。インフルエンザに対抗するもう一つの方法として、抗インフルエンザウィルス薬があります。この薬はインフルエンザウィルスの増殖を防ぐ薬剤で、使用する事で発熱期間が1-2日間短縮される事が見込めます。薬剤使用により、胎児への影響は無いとされていますが、動物実験により胎盤や乳汁への移行も確認されているので、使用するかしないかは、診察時に担当医と良く相談して決めましょう。

まとめ

インフルエンザは冬期に流行する風邪の一種ですが、症状や感染力が強い特徴を有します。妊娠中は重症化する確率が上昇するという報告もあるので、手洗い・マスク装着をしっかりと行って、なるべく感染しない様に注意しましょう。感染・重症化の予防として、ワクチン接種が日本では全妊娠期間中の妊婦さんに推奨されています。ワクチンを希望される方は10-11月に、通院先病院で接種の希望を伝えましょう。

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