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公開 2015年03月30日  

【今週のコウノドリは妊娠高血圧症】産婦人科医が解説!妊娠高血圧症候群の症状・リスク・治療とは?

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妊娠経過に伴い、高血圧・尿蛋白質等の症状を合併し、母児ともに異常をきたす「妊娠高血圧症候群」。今回は妊娠高血圧症候群について、解説します。

出典:http://baby.goo.ne.jp/pg/ninshin/01trouble/01ketsuatsu01/01ketsuatsu01_01/

妊娠高血圧症候群とは?

妊娠高血圧症候群とは、妊娠に伴い、高血圧や尿蛋白質を認める病気で、古くは「妊娠中毒症」と呼ばれていました。

定義としては、妊娠20週以降、分娩後12週までに高血圧がみられる、または高血圧に尿蛋白質が認められるものとなっています。これだけを読むと、高血圧や尿蛋白質だけが問題の様に思えますが、現在様々な研究から「妊娠高血圧症候群」は、妊娠初期の胎盤が形成される過程で何らかの異常を生じ、全身の血管に異常を来す病気である事が分かってきています。

そのため、この病気が悪化すると、母親だけでなく血管の集合体である胎盤を介して成長する胎児にも大きな危険を伴う事になり、適切な分娩時期の決定が求められます。

妊娠高血圧症候群の症状

妊娠高血圧症候群は、全身の血管に異常を来す病気です。

た高血圧や尿蛋白質はもちろん、病状が進行すると、むくみや体重増加、血管の攣縮(血管の痙攣)による頭痛、凝固機能の異常、腹水や胸水の貯留等、母体の全身状態に様々な異常を来たします。

さらに胎盤は血管の集合体であるため、胎盤の機能も低下してしまい、胎児の体重増加が止まってしまったり、最悪のケースでは子宮内で胎児が死亡してしまうケースもあります。

また妊娠高血圧症候群は、血液や肝臓の機能に異常を来すHELLP症候群や全身の痙攣発作である子癇、突然胎盤が剥がれてしまう常位胎盤早期剥離等、非常に緊急性が高い産科合併症を引き起こす確率が高くなる事が分かっており、適切な対応が必要です。

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妊娠高血圧症候群になりやすい人とは?

基本的に妊娠高血圧症候群に対する予防策は無く、早目に診断する・リスクが高い方はより発症に注意する事が最も大切です。現在妊娠高血圧症候群になりやすい方というのが、ある程度判明しています。

■年齢

高齢妊娠(35歳以上)では、妊娠高血圧症候群の発症率が高い事が知られています。また逆に15歳以下の若い年齢の妊娠でも発症率が高くなる事が分かっています。

■肥満

BMI(体重Kg÷身長m÷身長m)が25以上だと発症率が高くなります。

■過去の妊娠状況・妊娠の種類

・前回妊娠で、妊娠高血圧症候群だった人
・多胎妊娠
・合併症

■持病がある

高血圧や糖尿病、腎臓の病気を元々持っている方では発症率が高くなります。

これらのリスクを持っている方は、少なくとも妊娠中期以降1日1〜2回の血圧測定を行う事が、妊娠高血圧症候群の早期発見・治療をする上で大切です。収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上を頻繁に計測する様になったら必ず医師に申告しましょう。

妊娠高血圧症候群の治療

妊娠そのものが原因ですので、基本的には分娩に至らないと症状の軽快は見込めません。

治療として高血圧や血管攣縮に対し、降圧剤や攣縮の予防薬等を投与する事が多いのですが、原因に対する治療では無く対症療法ですので、徐々に増悪を認めるケースがほとんどで、妊娠高血圧症候群の診断から平均2-3週間以内に分娩になると言われています。

分娩方法は、帝王切開・分娩誘発・自然分娩、その時の状態に合わせ選択されます。

まとめ

妊娠高血圧症候群は、全身の血管障害が起こる病気であり、母児ともに危険を伴うケースも多々あります。予防よりもリスクを理解し、血圧測定を行う事により、早期に発見する事が重要です。最も有効な治療方法は分娩で、診断から平均2-3週間に分娩となる事が多い疾患です。

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