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「私のことも忘れないでね」…患者さんのきょうだいが私に教えてくれたこと【きょうの診察室】

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小児科には、診療や健診の必要な子どもだけではなく、そのきょうだいが付き添いで訪れることが多くあります。彼らはどんな気持ちで、診察室にいるのでしょうか。今回は、きょうだいのことばが私に教えてくれたことをお話させてください。

きょうだいだって「主役」になりたい!

お子さんには、きょうだいはいますか?

きょうだいは、家族であり、友人であり、先輩や後輩であり、ときにライバルでもある、特別な存在です。



日々の診療に、きょうだいがついてきてくれることがしばしばあります。

風邪をひいたお兄ちゃんに付き添ってきた子。
入院している妹のお見舞いに来たけれど病棟に入れなくて廊下で待っている子。

今回は赤ちゃんの診察についてきたある女の子が私に教えてくれたことを、みなさんとも共有させてください。

きょうの診察室:「Aちゃんは、やさしいんだよ」

その日出会ったのは、赤ちゃんの1か月健診についてきた4歳のAちゃん。

Aちゃんにとってその赤ちゃんは初めてできたきょうだいでした。

一緒においで、とお母さんに促されて、診察室に入ってきます。

「こんにちは、一緒について来てくれたんだね、ありがとう。名前はなに?」と話しかけると、
「Aちゃん4さいです!」と嬉しそうに答えてくれました。

お母さんと私は、赤ちゃんの体調、哺乳や皮膚の状態などについて、あれやこれやとお話しします。

その間Aちゃんは、お母さんの服を触ってみたり、赤ちゃんの名前を呼んでみたり、ちょっとそわそわ…。

それでも、赤ちゃんの診察のときに、「赤ちゃんのもしもしするよ、おねえちゃん応援してね」と声をかけると、Aちゃんは赤ちゃんの手を握って励ましてくれました。



そんなAちゃんに、「赤ちゃんのどんなところがかわいい?」と尋ねると、

「・・・ちいさいところ」

それを聞いて、お母さんはうんうん、と満足そうに笑います。

診察も全て終え、お母さんに「なにか聞いておきたいことはありますか?」と聞いてから、Aちゃんにも同じ質問をしました。


「おねえちゃんは、赤ちゃんのことで聞いておきたいことありますか?」

すると、意を決した表情でこう答えます。

「あります」

そしてしばらく沈黙があったあと、

「Aちゃんはね、やさしいんだよ」

と言ったのです。

お母さんは「あら、じぶんのこと!」と少し驚いたように笑います。



でも、そっか、そういうことなのか、と私は思いました。


きっと赤ちゃんが生まれてから、Aちゃんのまわりの世界は、赤ちゃんのことばっかりだったのでしょう。

いままで自分が真ん中にいると思っていたのに、ある日突然「おねえちゃん」になり、自分に注がれていた視線が別の方向を向いていると、気がついたのです。

私のこと、忘れちゃった?
私もこんなに、がんばってるよ!
私の名前は「おねえちゃん」じゃなくて、「Aちゃん」だよ!


赤ちゃんのことを質問したのに自分のことについてお話してくれたのは、きっとそんなAちゃんの気持ちのあらわれだったのでしょう。


最後に「もしもししようか。ああ、やさしいだけじゃなくて、とっても元気なAちゃんだね!」とAちゃんの胸の音も聞いて、握手をしてお別れしました。

教えてもらったことにじーんと余韻がのこる、Aちゃんの一言でした。

「あなたが大事」をことばにして伝えたい

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家族の中に病気の子どもがいたり、新しく命が生まれたとき、その子どもに大人の注目が集まりがちになりますね。
そしてその周りにいる子どもたち(きょうだい)は、そのことに気がついています。

もちろん大人は、その子ども(きょうだい)のことを大切に思っている気持ちに変わりはないでしょう。
でも子どもたちはときどき、自分は忘れられていないか、まだ大事にされているのか、とても不安になることがあるのです。

人は成長の過程で、「相手が自分だけをずっと見ていなくても、自分は大切にされている」「主役じゃないけど、私は大事な存在」、ということを感じられるようになっていきます。

しかし忘れないでいたいのは、子どもはまだまだその過程にいるんだということ。
そして「きょうだいが主役」のときは、それを学ぶ大切なチャンスだということです。

だからこそ、その子どもが主役ではないときに、「あなたが大事だよ」というメッセージを、何度でも伝えていけたらいいなと思います。

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この記事を書いた人

小児科医 やまぐちありさ

小児科医。
目標は「こどもとその周りで支える人々が、少ししんどい時にこそ、がんばらなくてもいい社会を実現すること」。

高校を中退後、ロンドンのインド人病...

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