子どもが通っていたスイミングスクールでちょっと嫌な思いをしたことがあります。
今日は『1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ』の著者の立石美津子がそんな過去の出来事をお話ししたいと思います。
息子は知的障がい者です。5歳の頃の話。あるスイミングクラブに僅かな期間でしたけれども通っていました。最終的には健常児の中でうまくやっていくことが出来ずに直ぐに退会となってしまいました。
その時のことは以前にこちらの記事で書かせていただきました。
スイミングでの息子の態度があまりにも目に付いたのでしょう。更衣室で息子に着替えをさせていた時のこと、ある男児が近寄ってきて私に向かってこう叫びました。
「この子、コーチの言うこと聞かないでウロウロしている悪い子だから黄色帽子になれないんでしょ?」と。
黄色帽子とは上のクラスの子どもが被ることの出来る水泳帽でした。息子はもちろん最下位の水遊びクラスの白帽子でした。
こう言われて私は「誰がそう言っていたのかな?おばさんに教えてくれる?」と男児に聞き返しました。すると「ママがいつもそう言っているよ」と答えが返ってきました。
5歳の子どもはまだ幼いので言っていいこと悪いことは判断がつきません。親に言われたことをそのまんま素直に私に伝えたのです。
私は「そう、ママがそう言っていたんだ。でもその考え方は間違っているよ。ウロウロしているのはプールでは確かによくない態度だよね。でもね、だからといって○○(息子の名前)は“悪い子“ではないのよ。そうママに伝えておいてね!」とビシッと伝えました。
だいたい、こういうフレーズを子どもがゼロから考えるはずはなく、たいていは親や大人が喋っている言葉を聞いてそのまんま言っていることが多いのです。怖いのは親の言葉を真に受けてしまい口に出しているうちに、それが次第に子どもの心に深く根を下ろし“自身の生きる価値観“になってしまうということなのです。
私は子ども達に授業をしていますが、年長さんのクラスで一人だけ国立の付属小学校に合格した子どもがいました。その子が地元の公立小学校に行く他の友達に「みんなはバカが行く学校に入学するけれど僕は頭の良い偉い子が行く学校に通うんだ」と叫んでいたことがあります。
教師としてもちろんこの言動を厳しく叱りました。でも、これも子どもが考えて言うはずはなく、たいていは家庭内で親の会話を耳にして言っているのです。
保護者に「どんな人間に育ってほしいですか?」と質問すると「思いやりのある人に育ってほしい」「優しい心をもってほしい」と言いながら、中には自分が子どもに見せている態度が180度異なっている人がいます。
子どもに相手の痛みを感じて思いやりのある子どもに育ってほしかったら、決して他の出来ない子どもを引き合いに出して
「あの子のようにならないようにね」
「あの子の真似をしてはいけないよ」
「あの子は○○だからダメな子なの。だからあなたは気を付けて頑張りなさい」
と話をしてはならないと思うんです。
こんな躾方をしていたらおかしな価値観が小さいうちから付いてしまうのではないでしょうか。そういう人が、大人になったとき人から信頼されたり尊敬されることがあるでしょうか。
『子どもなんて親の思う通りになんか絶対に育たない。親がしているように育つ』これって名言ですよね。
たとえ色んなことを思っても子どもの前では口に出してはならないことってあると思います。いじめだって最初はこんな親の無意識の言葉が始まりだったりします。皆さんはどう思いますか?