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公開 2016年02月15日  

「ものさしは、子どもと夕飯を食べる回数」三児のパパがスタートアップに転職するまで<前編>

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今最も勢いのあるベンチャー企業のひとつである株式会社メルカリ。フリマアプリ『メルカリ』を使ったことがある人も多いのではないでしょうか。そのメルカリで人事をご担当されている石黒さんは、実は3人の子どものパパ。急成長中のベンチャーで働きながら子育てをしている石黒さんに、育休を取ったきっかけや仕事に対するお考えについて伺いました。


今回Conobie編集部がインタビューするのは、フリマアプリ『メルカリ』を運営する株式会社メルカリでHRをご担当されている石黒さん。

『メルカリ』は誰でも簡単に出品・購入ができるフリマアプリで、2015年には数多あるスマホアプリの中で、利用者増加率No.1を記録。

創業から3年経った今、急成長中のベンチャー企業で3人の子どもを育てながら働く石黒さんにお話を伺いました。

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株式会社メルカリHRグループの石黒さん

−石黒さんのご経歴を簡単に教えてください!

新卒でNTTドコモに入社、法人営業、人事を経験した後、新規事業会社の立ち上げに参画しました。
新卒6年目に1人目が生まれ、その後2人目も授かりました。

3人目の出産が近くなったタイミングで、2ヵ月の育休を取得。

復職後、2015年1月に現職のメルカリへ転職しました。

「もう無理だよね」僕が育休を取るしか、選択肢がなかった。

−育休を取ろうと思ったきっかけは何でしょうか?

一番大きかったのは、第一子と第二子がいる状況の中、妻だけで第三子を育てるのはもう無理だと実感したことです。

もちろん大切な時期に、一緒にいたいという思いもありましたが、なによりも、これで自分が休みを取らなかったら妻への負担が大きすぎると思いました。

ちなみに育休を取る前にも、園の送迎などの負担を考え、妊娠がわかってからずっと定時に帰るようにしていました。

ふたつめは、僕のキャリアにとって育休がプラスに働くと思ったから。

人事担当として、また、今後マネジメントをする立場になったときに、男性の僕が育休を取っていることで、これから子育てをする層が男女問わず相談しやすくなるし、僕からもより親身にアドバイスできるなと思ったんですよね。

あとは、みんなが真似したくなるような事例を作りたいなと思ったことです。

ガツガツ仕事をして活躍している人が休む、そして復職して、またバリバリ働く。

そういう事例を作ることで、それが当たり前になる社会を築きたいと思ったんです。

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育休中、三男が生まれた日の様子。ご自身も男三人兄弟で、なんとお子さんも男三人兄弟!

家庭では「当たり前だよね」、会社では「昇進、大丈夫?」

−石黒さんが育休を取ろうと言ったとき、周りの反応はどうでしたか?

育休を取ったのは三男が産まれた時なのですが、実は次男のときにも育休取得を意識していたんです。

というのも、次男の保育園を申し込んだ際、補欠になってしまって。

妻が復帰することは決まっていましたから、「じゃあ4月から僕が1〜2ヵ月休んで、保育園が決まるまで面倒見るか」という話がでていました。

結局補欠から正式に入園が決まったことで、その時は育休は取らなかったのですが、周りに「育休を取ろうかと思って」という話をしたらまあ驚かれまして。

「お前、昇進大丈夫か?」と言われました。

それに対して僕が「いやいや、そうやって皆さんが『育休なんて取って、大丈夫か?』って思うこの状況を変えたくて、取るんですよ」と言っても、当時はみんなキョトンとしていて。まあ、そりゃそうですよね(笑)

そこからたった2〜3年しか経っていませんが、三男の時は次男の時とだいぶ風向きが変わっていました。

私が意を決していたこともありましたが、「育休を取ります」と伝えたら「お前が言うなら、まあ、いいじゃないか」と受け入れてもらえる雰囲気はありましたね。

実は僕が育休を取ったあと、育休を取る後輩(男性)がが3人くらい続けて出てきて。

転職してからもFacebookのメッセージで「石黒さん、もう転職されたかもしれないですけど、僕も石黒さんのように育休取ろうと思っているんです」と、前職の後輩から連絡をもらったり。

ひとつ事例ができることで、ここまで波が変わるんだなと、実感しました。

−育休から復帰して、メルカリに転職。転職のきっかけは?

2013年くらいから、スタートアップ界隈がとても盛り上がってきていましたよね。しかも、ただベンチャーがもてはやされているだけではなく、社会的に意義のある事業をやっている企業が注目されるようなムーブメントを感じていました。

前職では若いうちからいろいろな経験をさせてもらっていたし、ストレス無く働いていたのですが、「スタートアップ」という”隣の芝が青く”みえていたところはあったんです。

それが育休を取る中で、自分のキャリアと向き合う時間が取れるようにもなり、だんだん「このままではいいのかな」と感じるようになった。

うまくいかなかったら、それはそれでいい経験になるだろうし、人生一回きりだと思って。

”隣の芝が青い”と思っているままじゃ何も変わらないから、思い切ってチャレンジしてみようと心に決め、転職をしました。

「綺麗な分担」なんてない、空いている方がやる。

−3人目の子どもが産まれたばかりでの転職。怒涛の一年だったのではないでしょうか?

いやあ、もう、妻に感謝しかないですね。

あと、メルカリの社風にも助けられています。メルカリは、成果をあげていれば、やり方は任される、という社風。働きやすさと責任感のバランスが非常にいい環境です。

たとえば僕にとって大切なのは、18時から21時。子どもにご飯を食べさせてお風呂に入れる、この時間が貴重なんです。

今は長男の宿題もありますね。子どもを寝かしつけたあと、21時半くらいからは自由な時間です。簡単なメールチェックくらいなら、その時間にやればいいんですよね。

逆に残業して21時過ぎに家に帰っても、誰も起きてないんですよ。

僕にとって大切な時間を、比較的自由に使える。そういった社風の元働けていることも、うまくいっている要因かと思います。

−3人子どもがいて、夫婦共働き。家事の分担はどうしていますか?

実は我が家、明確な分担はないんですよ。授乳以外、すべての家事を、夫婦どちらもができる状態なんです。どっちがご飯作る担当で、どっちが掃除する、っていう感じじゃない。空いているほうがやる、というスタイルです。

あとはそうですね、お互い楽しみながら、あまりきっちりしすぎずにやっています。例えば僕なんか、仕事で疲れているときは意識を朦朧とさせながら下着とか靴下を干してるんですよ。そうすると、バスタオルを干すところに下着が干してあったり、靴下が裏っ返しになっていたり。

妻から、「ねえ、昨日の洗濯物、みた、これ?」と言われて「ああ、また芸術的な干し方してた?」みたいなやりとりがよくあります(笑)。

−そのやりとり、ほっこりしますね(笑)それにしても、意識が朦朧としながら洗濯とは・・・

だから本当に、妻に感謝しているんですよ。

少しでも多く家事をやっておきたい、と思う感覚があって。

子育てを一緒にやったから、本当の意味でのキツさが分かる

−その奥さまへの感謝は、どこから生まれてきているのでしょうか?

育休をとって、子育ての時間を一緒に過ごしてきたから、本当の意味でキツさが分かるんだと思います。

子育てって、本当に心身共に大変じゃないですか。

だから、毎日辛抱強く子どもに向き合ってくれている妻には、感謝が絶えないんです。

たとえば、絵本を毎日3〜4冊読むって、すごく大変ですよね。僕は2ページくらい読み飛ばしたくなっちゃいますけど(笑)妻はすっごく丁寧に読みますからね。

授乳もきっと、すごく大変だろうと思います。カラダを吸われるわけですからね。

あと、夫婦の共通認識として「家で子どもを見ている方が大変」というものがあります。

だから、特に、育休中に家にいる時間の長い妻への感謝が根底にあるのではないかと。

世の中の男性は、もっと感謝した方がいいと思いますよ(笑)。

ものさしは、「ごはんを食べる回数」と「お風呂に一緒に入る回数」

−仕事と家庭のバランスについて、日頃意識していることはありますか?

僕は子どもと「ご飯を食べる回数」と「お風呂に入る回数」を”ものさし”にしています。
でもそれより大事なのは、そのものさしが「何か」ではなくて、そのものさしを「自分のものにする」ということだと思うんですね。

ものさしは多くの場合「ひと(他人)」になりがちです、後輩に、上司に、部下にどう思われているか?というところがものさしになりやすいですよね。

でも、誰のために働いているのか?と考えたときには、家族や自分のものさしを持ったほうがいいと思うんですよ。

人の評価ではなく、自分のものさしを持っておく。

例えば僕の「子どもとご飯を食べる回数」も、我が家の決まりなわけではなくて、あくまで自分で持っているものさしなんです。

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石黒さんはお料理もされるそう。こちらはある週末の作りおき。

後編では、株式会社メルカリの社風や人事制度を中心にお話を伺います。

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