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公開 2016年01月29日  

夫婦別姓、私の場合

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先月の最高裁で「夫婦同姓制度は違憲状態でない」との判決が出た、夫婦同姓・別姓問題。この記事では、実際に事実婚を選んだ私の場合と、私の考える夫婦同姓・別姓における問題点について書かせていただきました。


私が、夫の姓を使用するようになるまで

今、何かと話題になっている夫婦別姓の問題、実際どのくらいの方が関心をもっているのでしょうか?私は、もしかしたら男性にはあまり当事者意識のない話なのかな、と思っています。

先月の最高裁の判決、また事実婚の不便な点などは、サイト内のこちらの記事に詳しいので、ここでは割愛しますね。

私には昔から結婚願望というものがなく、しかしパートナーとは一緒に生きていきたいという希望はありました。また、姓についても夫と違う姓を名乗りたいとまでは考えていませんでした。なので漠然とですが、もしも何か事情があって自分の姓が変わることがあれば、その時はせめて「通称」を使用したいと考えていました。

夫と同居を始めた際、夫が入籍を望み、かつ夫の姓を名乗り続けたいという先方の希望がありました。当時の私には「結婚」という制度を使いたいという希望はありませんでしたが、夫が生涯のパートナーになってくれたらいいなと考えていたので、彼の希望を汲んで入籍することにしました。

自分が改姓することに抵抗はあったものの、試してもいないのに反対するのも嫌だと思い、夫の姓を夫婦の姓として選択しました。

夫の姓で生活していたとき

入籍後も、仕事ではそのままの姓(いわゆる旧姓ですが、ここではあえて「本姓」と呼ばせていただきます)を使い続けました。しかし当然のことながら、社会保険の氏名は変更となりました。健康保険証を使うので、病院では夫の姓で呼ばれるようになりました。

夫の姓で呼ばれるのに慣れるまで、相当時間がかかった…というよりも、結局最後まで慣れることはありませんでした。気を抜いていると、呼ばれても他人であるような感覚で聞き流してしまうこともありました。

そんな私なので、職場でも私生活でも、できるかぎり本姓を名乗るようにしていました。ファミレスの順番待ちや、出身校のOBOG会など、仕事に関係ない場面でも本姓を名乗り続けました。しかし、例えばレンタルビデオ屋でポイントカードを作るときなどは、身分証の提示を求められることがあります。その場合は、夫の姓を使うしかありませんでした。

そして、入籍から1年ちょっと経ち、出産を期に仕事を辞めました。そこから、自分が「山浦雅香」であるという証明書の類は、パスポートだけになってしまいました。(職場では、本姓の名刺がありました。パスポートについては、航空券の予約名とパスポートの氏名が一致していれば一般的に問題はないそうです。)

再就職、そして事実婚へ

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子どもが2歳になる前、私は再就職先が決まり、職場で本姓を名乗ることを上司に相談しました。書類上面倒があるでしょうし、嫌な顔をされるのでは…と気が重かったのですが、上司はなんの意見も挟まず、ただ了解しましたという返事でした。(これもあって私は上司を強く信頼しています。)

再就職から半年。本姓で生活する時間も長くなり、夫の姓を意識しなければならないことも減りましたが、それでも病院関連と給与明細は夫の姓と自分の名がつながっていました。私はどうしてもこのままでいたくない…という気持ちが募り、夫と話し合って事実婚の形をとることにしました。

入籍している2人が事実婚になるということは、離婚届を提出するということです。提出の際、役所の窓口で住民票の続柄を何にするか?と確認されます。私は人口60万人の自治体に住んでいるので、そんなにたくさんの人が住んでいる町なら、自分のような形で事実婚を選ぶ夫婦、つまり出産後に事実婚を選ぶ夫婦も少なくはないだろうと考えました。

「事実婚にしたいので、“未届けの妻”でお願いします」と回答しました。社会保険の手続上、事実婚のカップルが配偶者として扱われるためにはこの続柄が必要なのです。難なく受理されるだろうと思っていたのですが、窓口の担当者は上司へ確認しに行き、その回答は、「“未届けの妻”は、これから入籍の予定がある女性の続柄なので、離婚届提出後は選べない」とのことでした。

私は、離婚届の提出はあくまでも自分の本姓のためであって、夫とは今後も変わらず生計が1つであること、次の子の出産があれば婚姻届を出す予定であることを説明し、結果「未届けの妻」の続柄で住民票の登録ができました。(出産時に婚姻届の提出をするつもりなのは、もし第二子ができたら、現在いる長男との立場を同じにしたいと考えているからです。認知でも変わらないそうですが、現在第二子の予定がないこともあり、この点については勉強不足です。)

夫と同じ姓にしたい人、別々の姓でいたい人…皆が希望を実現できる制度が良い

私は専業主婦の期間も、自分は努めて「○○(夫の姓)雅香です」と名乗らないようにしていたと思います。その名前は自分ではないという気持ちがいつも心のどこかにあり、夫の姓を名乗れば名乗るほど、自分がなくなっていくような悲しみがありました。ただしこれはあくまでも私個人の感覚であって、改姓した方が皆同じ感覚を抱くとは、私はこれっぽっちも考えていません。

また誤解しないでいただきたいのは、私は夫との夫婦関係を解消したいという思いから同姓を名乗りたくない、というわけではないという点です。夫がもし「夫婦として同じ姓を使用したい、あなたの姓に変えたい」と言ってくるのであれば、そのやり方を採用します。私の第1希望が「本姓を使用したい」なだけであって、「同姓が嫌だ」というわけではありません。

私は、夫婦同姓がいい人も、別姓がいい人も、どちらも平等に「結婚」という制度を利用できれば良いなと考えています。夫婦同姓以外選べないから、という理由で結婚制度を利用できないのは、やはり日本は不便な国家だと思わざるを得ません。

事実婚は、お互いに経済的自立があるカップルだけの選択肢?

私は再就職よりも前に、「事実婚」を選ぶという選択肢もありました。しかし年収的にみて、配偶者(多くの場合は夫)の扶養に入り税控除を受けたいという場合は、事実婚という選択は経済的に不利です。事実婚(戸籍上入籍していない2人)は税法上、配偶者として扱われません。事実婚では扶養者控除、配偶者控除が受けられないのです。

これが理由だからなのかはわかりませんが、事実婚を選んでそれを公表している女性は、自分も含め経済的に自立している人が多いと感じます。出産後、やはり本姓(旧姓)に戻したいと考える女性がいたとしても、産後の離職率の高さを考えると、特に子どものいる女性の中には経済的自立がないために事実婚という選択を躊躇する人もいるかもしれない、というのが私の個人的な意見です。

また事実婚の場合、公正証書を作成しなければパートナー(入籍していない事実上の夫または妻)に遺産の相続がされません。公正証書の作成は、少なくとも自分にとっては簡単な手続きではないので、経済的に配偶者に頼っている場合、やはり事実婚のハードルは高くなるのでは?と思います。

「選択的夫婦別姓制度」は寛容さを意味している

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夫婦別姓が良いのなら、そもそも結婚しなくていいではないかという意見もあるかもしれません。しかし、結婚という制度は税法上特別な地位を与えるものですし、少なくとも別姓を望む私にとっては利用したい制度です。そしてその制度のために、どちらかの姓をなくさなければいけないというのは、あまりに柔軟性のないやり方だというのが私の意見です。

私にとって本姓を失う経験は非常につらいものでしたし、「別姓を選びたい」という立場が認められないのは、多様な価値観を認めない、寛容さがない制度だからだと思っています。

少子高齢化の進む日本で、この先どれほどの多様性を受け入れることができるのかが、社会的問題の解決においてキーポイントとなるでしょう。こう考えているのは、私だけではないと思います。これからも私は、多様性の1つとしての「選択的夫婦別姓制度」の実施を願い、事実婚という形を続けていくつもりです。

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