お子さんにアレルギーがあり悩んでいるという親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
私も、子どもの重度のアレルギーに悩んだ一人です。
そこで、これから5回に渡り、『1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ』の著者、立石美津子が自らの経験と思いをお伝えしたいと思います。
子どもがアレルギーではないお母さんも、ぜひ読んでくださいね。
さて、息子は4月に高校生になりますが、今でも強いアレルギー体質です。
ナッツ類にアレルギーがありアナフィラキシーショックをたまに起こします。エピペン注射を携帯している毎日です。
※アナフィラキシーとは、アレルギー反応の中でも呼吸困難や血圧低下などの全身的な反応のうち、生死に関わる重篤な症状を伴うものを差し、エピペン注射は応急処置のための自己注射となります。
私もアレルギー体質でした。また、子どものころから軽い喘息と鼻炎がありましたが、23歳の時ストレスがきっかけでアトピー性皮膚炎が重症化しました。
かなりの重症で、痒くて眠れない、食事もできない、就寝中に身体を掻きむしらないように白い布製の手袋をはめて寝ていました。さらに、顔から黄色いリンパ液が噴き出してくるので、夜はそれが耳に入らないようにテッシュを詰めて寝ていました。
朝起きると湿疹から出た黄色のリンパ液が乾燥し、シーツにボロボロ落ちていました。それに掃除機をかけるのが日課でした。
そんな生活を続けられるわけがなく、身体の殆どの皮膚が真っ赤にただれた状態で入院を余儀なくされ、東京医大病院の皮膚科に3カ月間入院しました。
こんな経験があったので、妊娠中は胎児のことを考えて、一切卵を取らない妊婦生活。
アレルギー体質は遺伝しますから少しでもリスクを減らしたかったのです。
しかし、「綺麗な皮膚の子が産まれた」と喜んだのも束の間、息子が0歳3ヶ月くらいか皮膚がポツポツ赤くなってきました。乳児によくある乳児湿疹と思いきや、採血すると卵、牛乳、小麦とありとあらゆるものにアレルギー反応が出ていました。
医師から「母乳に牛乳、卵、小麦が入らないように、お母さんがこれらの食品を食べないでください」と言われました。
その日を境にパン、うどん、パスタ、ハンバーグ、コロッケ、チーズ、ヨーグルト、私自身の厳しい食物制限が始まりました。
これだけ厳しい食物制限ですから「母乳を止めて粉ミルクに」という方法も考えました。
しかし、そもそも、粉ミルクは牛乳が主成分なのでNG。
また、アレルギー用の粉ミルクもありますが、“アレルギーを起こしにくい”とか“乳を飲むと下痢しやすい赤ちゃん用”のもので、アレルギーが重症の赤ちゃんには使えないものばかり。
唯一あったのが“明治エレメンタリーフォーミュラ”という製品。
でも、お湯に溶かすと灰色で、大人が飲んでみてもかなり美味しくはなく、息子も飲んではくれませんでした。
しかも、1缶5,000円ですから、月ごとにかなりの金額がかかり、経済的にも無理でした。
そのため、結局母乳だけで育てることになりました。
私自身が外食もできず、好きなものも食べられない、納豆と御飯、野菜だけの毎日。
離乳食もアレルギーを起こす危険があるため諦めざるを得ず、1歳半くらいまでお乳だけを飲ませていました。
でも2歳近くなり、母乳も出なくなったので、それからは普通食に移行しました。
でも、母乳の時よりもさらに大変なことが起こったのです。
おっぱいを止めてから、私はやっと一年半口にできていなかった、うどん、パン、パスタ、ハンバーグ、ケーキ、チーズなどの卵や牛乳が入ったものを食べられるようになりました。
でも、もっと神経質になる状況が待ち受けていました。
例えば、フライパンを使って卵料理をつくったとします。
調理のために使ったフライパン、箸、包丁、それを洗ったスポンジは、スポンジは卵成分が付いているため息子には一切使うことができません。
そのため、息子のご飯専用のフライパン、包丁、スポンジと、狭い家にキッチン用品が2倍以上溢れることに!
母乳時代は“自分が口にしなければ良かっただけ”だったのに、今度は料理自体に細心の注意をはらわなくてはならなくなりました。
しかも、もともと私は器用なタイプではなく、むしろ料理が苦手だったので毎日の食事の準備がすごく苦痛でした。
たまには家族で旅行でもしようか、と長く行っていなかった温泉、一泊の旅行を計画しました。
でも大問題は、息子の食事。
たった一泊でしたが、段ボールにアレルギー用の缶詰などたくさん詰め込むことに。
そして、家族が美味しそうな旅館の料理を食べている中、缶詰を食べている息子を見ていて情けなく、そして切なくなりました。
せめて見た目だけでも、と旅館に頼んで、食材を渡し温め直してもらい、綺麗な食器に盛ってもらうなどの工夫もしました。
また、食べ物に関する問題は、旅行だけではありません。
普段、ちょっと外食するだけでも、もちろんその度に準備をして、お弁当を持ち込んでいました。
また、アレルギーがあるからとおにぎりを持っていくと「持ち込み禁止です!」と店員に注意されることもしばしば。
唯一、寄ることができる店はうどん屋か寿司屋くらい、でも寿司屋も生魚はダメでみそ汁とかっぱ巻きとかかんぴょう巻きを注文していました。(この頃は小麦は食べられるようになっていたのでうどん屋はOKでした。でも蕎麦も出しているところは同じ鍋で蕎麦を茹でていて、これに反応するので“うどん専門店”だけに入りました)
そんな時、ファミリーレストランのデニーズにアレルギー用のメニューが登場。
卵、牛乳を一切使わないカレーライスとハンバーグの2種のメニューだけでしたが、私たち親子にとっては救世主でした。
これまで、お店の人に「アレルギーがあるのでお弁当を持ってきたのですが、ここで食べさせてもいいですか?」と申し出なければいけなかったのが、デニーズに行く時だけは手ぶらで出かけることができました。
本当に助かりました。
また、レストラン側も、アレルギー食を出して事故を起こしては洒落になりません。ですから調理器具はもちろん、調理するスタッフも別。フォーク・ナイフも使い捨てのものが厳重に袋に入れて出すシステムになっていました。
だから、安心して食べることができます。
とは言え、これだと相当な人件費だったでしょう。換算すれば、もしかしたら3,000円くらい取らないと採算が合わないようなカレーライスを780円くらいで設定してあり、他のメニューと価格帯もほぼ変わりません。
あまりの感激に「今までできなかった外出の楽しみができました」とデニーズを経営している会社にお礼状を書いてしまったくらいです。そして、「そうおっしゃっていただいただけで、本当に嬉しいです」とお返事がきました。
おそらく経営陣も社会貢献の一つとしてやっていたのだと思います。
このように、食事にかなり神経を使い疲弊してしまうくらい、苦労した生活を送っていました。
また、これほど食事制限していてもアトピーはずっと出ていて、掻きむしって悪化しないように息子は常に手袋をはめていまいた。
私の経験から、重度のアレルギー体質の子どもに対応してきた話をご紹介しました。
第2回は“知識のないママ友との付き合い”をお話したいと思います。