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公開 2015年12月17日  

親が育児本コーナーに駆け寄る理由とは?TEDで語られた育児論が面白い

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大型書店の育児コーナーに大量に並ぶ育児書の数々。TEDに出演した作家の作家のジェニファー・シニアさんによると、それはとても奇妙な光景とのこと。現代の育児に不安が募りやすい理由を、時代の変遷を踏まえた大きな視点から開設してくれています。その内容を、お伝えします。


いつも新しい知見を与えてくれるTED。自分にちょっと知識欲があるときに、よく観ています。

先日観た『幸福は親には高すぎるハードル』(ジェニフェアー・シニア/作家)という演説がとてもおもしろく、示唆に富んだ内容でしたのでご紹介します。

書店の育児本コーナーは「救い」ではなく「不安」の象徴

私が生まれた頃 子どもの育て方に関する本は 1冊しかありませんでした。

当時6歳の子どもがいたジェニファーさんは、大型書店に行き、育児書コーナーにびっしりと本が並べられているのを見て圧倒されてしまいます。

「◯◯な子に育つガイド」が所狭しと並ぶその様子を、彼女はとても奇妙だと指摘します。

日本でも育児書コーナーの発展は目覚ましいものがありますし、Conobieを含め(笑)たくさんの育児情報を載せたサイトがたくさんありますよね。

この棚を見たとき 私の目に映るのは 「救い」ではありません そこにあるのは「不安」です 巨大でカラフルな 皆のパニックの象徴が そびえ立っています

そこでふと、ジェニファーさんは疑問に思いました。

大昔から子育ては人類が何千年もの間ずっと上手くやってきたであろうはずなのに、なぜ今になってこんなにも育児への不安が高まっているのか。

この問題に、意外な切り口から向き合っていきます。

育児が本来どうあるべきか、実は、誰も知らない

「子どもを育てる」という言葉が 一般的に使われるようになったのは つい最近 1970年のことです 母親 父親としての役割が変わりました 子どもの役割も変わりました 現在 私たちは皆 台本のない難局を必死になって 即興で切り抜けている状態です

確かに、つい最近まで、世界中の多くの社会で、子どもたちは「労働」をしていました。
親は子どもの衣食住を保障し、代わりに子どもは家計に貢献する。一家を支える重要な労働力だったのです。

それが、時代の変化と共に子どもにも人権が認められ、「労働」は「教育」にすり替わりました。
この時、子育てに関わる経済的な意味がすっかり変わってしまったと、ジェニファーさんは主張します。

子どもの存在は「経済的には無価値だが 感情的に大きな価値がある」

家計に貢献してくれる子どもには経済的な価値があった。

それが、子どもが働かずに学校に行くようになった途端、「経済的な価値」としてはむしろマイナスになりつつ、子どもの未来の幸せを願う「感情的な価値」への転換を迫られ、同時に親は、子どものために働くようになりました。

冷酷ですが優秀な ある社会学者の言葉を借りれば それ以降の子どもの存在は こうなりました 「経済的には無価値だが 感情的に大きな価値がある」 子どもに働いてもらう代わりに 親が子どものために 働くようになりました その理由は ほんの数十年のうちに はっきりしてきました 子どもの成功を望むなら 学校だけでは足りないということです 現在 子どもの仕事として 新たに課外活動が加わっていますが それは親の仕事でもあります サッカーの練習に連れて行くのは 親ですからね 山のような宿題は 今の子どもの仕事ですが 親の仕事でもあります 宿題のチェックがありますから

予測できない将来。親は子どもに何を伝えられるのか

恐らくは 私や同世代の子たちには 十分だったことも もはや十分ではないということです だから私たちは猛ダッシュで あの本棚に駆けつけるのです 何かやり残していることが あるような 何もできていないような 子どもに対する義務を 怠っているような気がするからです

なるほど、家業を子どもに継がせるだけの時代なら、自分が知っていることを教えれば、子どもたちは生きていけると思われていました。

しかし今はどうでしょう。

デジタルネイティブの子どもたちは、親よりもずっと上手にスマホを扱いますし、今の子どもたちが大人になる20年後がどんな社会になっているか、正確に予想することは不可能です。

今の世界に合うような 新しい基準の作り方は 私にはわかりません でも私は思います 子どもの幸せのため 必死に努力する中で 私たち親は 誤った道徳的責任を勝手に 背負い込んでいるかもしれません

どうせ正解がないのなら、探すのはやめよう

ジェニファーさんの視点から気付かされたことは、今の時代の子育てに対して答えを持っている人は、専門家を含めてどこにもいない、ということでした。人類全体の歴史として、「子育て」という真新しい課題にぶつかっているのです。

そう考えると、悩んでいるのは何も自分だけじゃないと思えてきませんか?

もちろん、医療や科学の手助けが必要なことはたくさんありますが、どうせどこにも正解がないのなら、いっそ探すのをやめてしまえばいい。
その代わり「正解だからうまくいくわけではない。うまくいったものが正解」と考えて、この台本のない子育てという即興劇を楽しんでいく。

これが、今の時代に子育てをする私たちにとって、ひとまずの指針となってくれる考え方だと私は思います。
少し長いですが、ぜひ、動画をご覧ください。

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