我が家では、図書館にお出かけしたら息子に絵本を自由に選んでもらうようにしています。息子の好みを知りたいということもありますが、自分で選ばせることで、私が選ばないような絵本を持ってくるので、それが楽しみなのです。
これは、息子が5才のころの出来事です。
息子が図書館の本棚から引っ張りだしてきた1冊は、『ばいばいおねしょまん』でした。
と、このようなお話で、絵本を読み聞かせていた時のことです。
内容としては、特に大きな出来事が起こるわけではないお話。それをすこし心配そうな顔つきで聞いていた息子が、おかあさんが「おふとん干そうか」とにっこりした場面で、表情をやわらげてこうつぶやきました。
「よかったぁ…」
よかった?私は不思議に思いました。
私自身が長い間おねしょをしていた子だったので、おねしょをしても布団をほせばいいやという思いもあり、息子におねしょのことで叱ったことは今までないのです。おねしょが悪い、怒られること、と息子が思っているとは思えません。
「この場面のどこがよかったなの?」と聞いてみると、息子が気になっていたのはおねしょではなく、この絵本のおかあさんが怒っていたことが悲しかったのだそうです。そして、おかあさんが笑ってくれて「よかったぁ…」と思ったのだと言います。
親は、子どもがいけないことをして叱る時、反省させたいと思うし「ごめんなさい」って言わせようと思ってしまう。でも子どもって、反省して悲しい顔をしているというより、怒っているおかあさんの顔をみて悲しい顔をしているのかもしれない。
子どもは「ごめんなさい」と許してほしいのではなくて、お母さんに、ただ笑ってほしいと思っているんだ…。
私ははっとさせられました。
絵本にふれていると、ふと気づかされたり、子どもの優しさに気づいたり、慰められたりすることがあります。行きつ戻りつでつまづきながらも、私が肩肘はらずに子育てをやってこれたのは、絵本によるところがとても大きいです。
絵本を通して、息子が自分の気持ちを伝えてくる。絵本を通して、子どもの気持ちを受け取ることができる。絵本コミュニケーションが、私にとっては、子育ての不安を和らげて安心をくれる一番の方法だったのです。
私たち親子に大事なことを教えてくれた1冊の絵本。絵本との出会い。図書館にたくさんある本の中で、偶然かつ必然的に、息子と私の心を繋いでくれた絵本との出会いは、奇跡のようなものだと思っています。
必要なときに手にとる、時に育児書のようでもある絵本たち。これからは絵本を「子どもの教育」として読むだけでなく、「絵本は、大人の心を子どもの心に近づけてくれるもの」と思って、大人も絵本そのものを楽しみ、仲良くなってみていただけたらなと思います。
なにげなく手にしたその絵本が、いつか子育てをそっと助けてくれることがあるかもしれませんよ。