我が家の息子は現在、小学5年生。3歳で、アスぺルガー症候群と診断されました。発達障害の特性から、学校生活にはトラブルは付き物です。しかし、息子は毎日、元気に学校に通っています。
それは、息子が「困った時、とにかく誰かに相談する力」があるからだと思っています。
先生との行き違い、友達とのトラブル、体の不調などを、困った時にすぐに相談してくれるため、大ごとにならずに早めに解決することが出来ています。この力は、生まれつき備わっていたわけではありません。むしろ、アスぺルガーの子どもは、人に困りごとを相談するのが苦手です。
困りごとを相談する力を育てるために、児童精神科の先生のアドバイスをもとに、私が行ってきた3つのポイントをご紹介したいと思います。
1つ目は、子どもの気持ちを言語化してあげるということです。当たり前のようで、最も重要なポイントです。
そもそも、自分が困っていること、不快な思いをしていることを、自分で分からなければ、人に相談することができません。
例えば、転んで痛くて泣いている子どもに「大丈夫。たいしたことないよ」という言葉がけをすることがあります。大人は、子どもを励まそうとして言っているのですが、これでは子どもは「自分が今感じていることはたいしたことではない」というメッセージを受け取ってしまいます。
「大丈夫」と励ます前にまず、「痛かったね」「びっくりしたね」など、子どもの気持ちをそのまま言語化してあげましょう。小さなことですが、これを何年も繰り返すと、自分のマイナスの感情に自分で気づける子どもに育っていけます。
「先生、ぼく、困ってるんだ」
「ママ、わたし、怖いことがあったの」
と言えるのは、自分がつらい気持ちだと自覚できるからなのです。
誰かに頼ったり、相談したりすること自体を「良くないこと」と思っていたら、相談したくても言い出せません。
だから、2つ目のポイントは、子どもが話してくれたことをほめるということです。
「自分でできることは、自分でするのが良い」というしつけは重要ですが、子どもには、どこまでが自分でできることで、どこからが人の手を借りた方が良いのか、判断するだけの人生経験がありません。小さいうちから、何でも自分でできることばかりを褒めてしまうと、子どもの中に「人に頼るのは良くないこと」というイメージが出来上がってしまいます。
日常的なことでかまいません。例えば、靴下がはけなくて「ママ、出来ないよ、やって」と言ってきたら、「困った時に、ママを頼れたね。すごいね」と褒めてあげます。もちろん、自分で出来た時も、同じように褒めます。
バランスが大切ですが、『人は人に頼って良いのだ』というメッセージは伝え続けます。幼稚園や学校生活のことで相談されたら、「よく言ってくれたね、えらいよ!」という気持ちで、相談したこと自体が良いことなのだと繰り返し教えていきましょう。
3つ目のポイントは、我が子に、「親に相談して良かった」と思ってもらうことです。
具体的に、困りごとが解決出来れば一番いいですし、解決できないことでも「聞いてもらってスッキリした」「また次に何かあったときには、親が味方になってくれる」と安心させてあげることが大事です。
「親に頼っても、何もしてくれない」「何も変わらない」と思っていると、子どもは絶対に相談してきません。友達や、先生とのトラブルでは、親も勇気を出して、介入しなくてはならない場面があるかもしれません。
トラブルに直接立ち向かうのは、親にとっても大変なことです。時には、失敗してしまうこともあるでしょう。しかし、解決できなくても、子どもは何かしら親が行動してくれたことに、自分は大事にされていると感じることができます。
実際には、子どもが小さいうちのトラブルなら、早期に大人が介入できれば、解決へ向かうことがほとんどです。子どもが相談してくれた時は、何らかの形で、子どもの気持ちに報いてあげるように心がけましょう。