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公開 2015年10月31日  

私が子どもに「知らない人には話しちゃダメ」と教えない理由

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「知らない人には絶対話しちゃダメだよ!」と子どもに教える親は多いと思います。私自身も、子どもの頃はそう言われて育てられました。しかし、この言葉は子どもにどんなメッセージを与えてしまうのでしょうか?人間不信な私が、子どもに「知らない人に話してはいけない」と言わない理由をお伝えします。


「あなたの子どもは簡単に誘拐される!?」海外で話題となった社会実験動画

先日、Facebookでシェアされていた海外のある社会実験の動画を見ました。
この動画は1000万回以上再生されていて、海外では大きく取り上げられています。

CHILD ABDUCTION (Social Experiment) - Child Predator

英語の動画なので、簡単に説明させていただきます。

行われた実験では、ある男性がいかに簡単に子どもを誘拐できるのかを検証します。揃って「私の子どもは絶対知らない人になんてついていかないわ!」と言う親が、自分の子どもが簡単に見知らぬ男性について行く光景にショックを受ける様子が映されています。

多くの人は動画のメッセージを
「子どもには世の中の危険についてもっと厳しく教育しなければならない。」
と、親に対する警告として受け取ったと思います。

しかし、私はこの動画のメッセージに少し違和感を感じました。


私たちは親として、本当に子どもにそのような教育をするべきなのでしょうか?

家の外の世界は危ない人がたくさんいるという恐怖感を、純粋な子どもたちに押し付けるべきなのでしょうか?

「誰も信用するな」と親に教えてこられた私の人生

私自身も親に「知らない人には何があっても絶対話してはならない」と叩き込まれて育ちました。

私の親は、とても心配性な人でした。

親にとって世の中は危険に溢れていて、子どもの私は毎日そう教えられました。
外出先では必ず親と手をつなぎ、その手を離して私が親の目の届かないところへ行くと厳しく叱られました。

子どもの頃に「誰も信用するな」と親に言われ続けた私は、その価値観を引きずりながら大人になりました。

知らない人に話しかけられると恐怖心に襲われ、その場から逃げたくなります。
初対面の人と会話する時にはまず「この人は私から何が欲しいんだ?」と考えてしまいます。

そんな私も、今では一児の母となりました。
そして私は自分の子どもに、私のように人を疑うような人間になって欲しくありません。

私が子どもに「知らない人に話しちゃダメ」と言わない理由

4歳の息子は、とりあえず元気で人なつっこい性格です。

公園に連れていくと、気がつけばおじいちゃんと仲良くなっていたり、知らない人と手をつないでいることもよくあります(笑)

そして私は、彼がそうやって知らない人と話しているのを見かけるたび、手のひらに汗がにじみます。

「もしかしたらあの優しそうなおじさんは悪い人なのではないか?」
「今あのおばあちゃんがあげた飴ちゃんは大丈夫か?お菓子で連れ去ろうとしているのか?」


妄想が広がり、頭の中はパニック状態になります。

そんな時、私はすぐにでも彼のいる場所へ走っていって、自分のもとに引きずってきたくなります。
「何で勝手に私から離れていくの!」と厳しく叱りたくなります。
怖い話でもして、今後知らない人に絶対に近づかないようにしたくなります。

でも、私はそんなことはしません。

恐怖感を噛み締めながら、知らない人に笑顔で自己紹介をする息子を見守ります。
注意したい気持ちを押さえ込み、「あのおじさんねー!」と嬉しそうに戻ってくる息子を褒めます。


なぜなら、息子を見ていると、彼と接する人々の親切さに驚かされるからです。
彼にとって、毎日は新たな人と出会える冒険で、世の中には愛情溢れる親切な人がたくさんいます。
こんな4歳児の素敵な世界に、私の感じている恐怖感を埋め込む必要はありません。

もちろん、4歳の息子を渋谷の街中を一人で歩かせるというわけではありません。
しかし、できるだけ多くの物事や人に興味を持ち、たくさんの経験をさせてあげたいと思っています。

息子には「世界は怖い人ばかりだ、誰も信用してはいけない!」と人を疑って生きるのではなく、「世界には愛せる人がたくさんいる。知らない人に偏見をもってはならない!」と考えるように育って欲しいと感じています。


そして、今の子ども世代がそういった価値観を持つようになり、より憎しみや偏見のない社会が作られることを心から願っています。

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