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公開 2015年10月31日  

園長先生が教える!避けては通れない子どものケンカの対処法

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避けては通れない子ども同士のケンカも、子どもにとってはとても重要な学びの機会です。間違った対処法は、大きくなってから影響がでてきます。ともべ幼稚園で行っている、学年別のケンカへの対処法を紹介します。


自我が芽生え、集団生活が始まると、子どものケンカは避けては通れません。子どものケンカの多くは、コミュニケーションの未熟さから来るもの。相手が憎くて行われるケンカとは違います。それは、子どもが成長するために必要なものでもあります。とは言っても、何もせずに解決するものでもありません。幼稚園でおこなっている、幼児教育的学年別対処方法をご紹介します。

年少さんへの対応:遊ぶ前の「約束」が大事

それまでは、家庭の中だけで生活し、わがままが通ってきた子どもが、初めての集団生活の中で、自分だけが特別にすべてを許される存在ではないことを学ぶ時期です。脳の発達からしても、それまでは、親と自分、おじいさんと自分のように1対1の関係しか認識できなかった子どもが、自分と先生とお友だち、複数のお友だちの中の自分というように、集団を認識できるようになる時期だとも言われています。

まずは、話を聞きます。泣いていたら落ち着くまで待ちます。やってはいけないことをした時は、きちんといけないことだと伝え理由も根気強く伝えます。特に年少児は、1回の指導だけでおさまることは稀です。繰り返されるケンカに、教師も繰り返し何回も何回も指導する根気強さが必要になります。

大切なことは、遊ぶ前に「友達と仲良く遊ぶ」「物の貸し借り」について約束してから遊びを始めることです。そして、教師はケンカの過程をしっかり把握して「かみつき」「ひっかき」など、けがに結びつくような行為を未然に防ぐように気を配ります。

年中さんへの対応:集団としての認識が上がってくる時期

年中になると、集団としての認識が上がってきます。そして、特定のグループを作って遊ぶようになります。そのような年中の時期に必要なことは、状況等を考慮しつつ、どのようになっていくのか様子を見守ることです。

やみくもにケンカをただ止めてしまうのではなく、お互いの話を聞いて流れを知ったうえで、双方の気持ちを代弁しつつ、解決の糸口を見つけていきます。最終的には、どうすれば良かったのかを当事者と共に一緒に考え、当事者自身の力で解決できるように導いていきます。

年長さんへの対応:ひとりひとり別室で話を聞くことも

まず、当人同士の話を聞きます。年長児になると、周りの目を気にすることがありますので、場合によってひとりひとり別室で話を聞き、それぞれの気持ちを知った上で再び集まり、ケンカの理由や過程について話をさせて、お互いの気持ちや、やって良い事悪い事を考えさせながら、仲直りへと誘導していきます。

ケンカの理由や過程がはっきりしている場合には、教師は一歩離れて当人同士でどうしたらいいのか話し合いさせ、解決させていく場合もあります。ケンカの理由や過程がくい違っている場合は、周りの友だちからの情報をもらい、教師は公平な目で解決へと導いていきます。

ケンカの内容によって、例えば、危険なもの、からかうもの、いじめに発展しそうなものの場合は、クラス全体や学年全体での話し合いとします。その際に大切なことは、当事者の名前は出さないことです。個人の問題ではなく、全員が認識してもらいたい事として話を進めるためです。教師同士では、情報を共有し、園全体で対処することが大切です。

特に女の子のケンカは長引きやすいので、その時の対応だけでなく、継続して様子を見るようにしています。

ケンカは子どもが成長するための重要な教材

子ども間でトラブルがある場合、親はつい「誰々ちゃんと遊んではいけません」という場合が多いと思います。しかしながら、子どものケンカは「仲がいいほどケンカする」という言葉通り、相手が嫌いで行う場合は極少数です。多くの場合は、遊びの延長として、あるいは仲よく遊びたいのにその表現がうまくできずにケンカに発展していきます。

そんな時、「誰々ちゃんと遊んではいけません」と一方的にコミュニケーションを遮断してしまうと、子どもは問題を解決するという貴重な経験をする機会を失ってしまします。幼児期に人間関係のトラブルの解決方法をきちんと学ばなかったことが、年齢が上がった際に陰湿ないじめが生じる原因にもなってきます。

重篤なけがに発展することには注意が必要ですが、ケンカは子どもたちが成長するうえでとても重要な教材でもあります。ケンカを繰り返しながら、子どもたちは正しいコミュニケーションを学んでいくのです。

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