シングルマザーだった私の妹は、5歳の女の子を遺して…。妹は、癌でした。このとき5歳だった女の子は、私たち夫婦が引き取って育てており、今はもう11歳です。
これからご紹介する本は、妹が娘に遺したものの1つです。いつ購入したのかは知りません。
娘が5歳の誕生日を迎えようとする時、妹は、余命ひと月の宣告を受け、自宅での緩和ケアに入りました。
介護用ベッドのヘッドボードに背をもたれさせ、隣に小さな娘を座らせて、幾度となくこの本を開いていました。
でも、当時まだ幼かった娘は絵にも内容にも全く興味を示さず、ママが優しく読み進めているのを、先走るようにページをめくっては、「ああっ、もうっ」とママに軽くキレられていて、私は、いつもそれを少し笑って見ていました。
赤ちゃんだったあなたは、子どもになって、成長して、そしていつしか巣立っていく。
やがてあなたは子どもを持ち、親になるのかもしれない。
それから長い年月が経ち、あなたが年老いた頃。わたしはきっともうこの世にはいないけれど
その時にはどうか、わたしを思い出して。
小学4年生の夏休み。宿題の読書感想文に、妹が遺した子が選んだのはこの本でした。
つたないとはいえ、ママの気持ちをしっかりと受け取っている言葉がそこに綴られており、とてもいい作品になっていました。
幼くしか見えない姿の内側で、彼女は色んなことを感じているのでしょう。
あの日、ママ(実母)が娘に伝えたかったこと。遺す娘への望み。きっと彼女は受け取れているのだと思います。
娘が小学4年生の時に書いた、夏休みの感想文をご紹介します。
【ちいさなあなたへ】
『母のやさしさと、子どものじんせいに感じさせてくれる本です。
私のいちばんすきなところは「いつか あなたも たくましくなった そのせなかに ちいさなおもさを せおうときが くるかもしれない。」というところです。
誰かとけっこんして 子どもをうんでから 愛をあげて せなかにのせるとき 小さないのちを ささえていると思ったからです。
この本の感想は いやなときがあっても くじけないで 強くがんばって育ってね。という 味意(いみ)だと思います。』
あなたはどんなことにもくじけない、強い子になるよ。きっとなるよ。
それから。
「いみ」の漢字は、「味意」じゃなくて「意味」でね。
今、子育てをしている人、そしてかつて子どもだったすべての人に、読んでほしい絵本です。