子どものころ、私は運動会が大嫌いでした。
何故なら、徒競走があったから。足が速い子はいつも決まって速くて、自分が遅く負けるのが恥ずかしくて仕方がなかったのです。
運動会では、「足が速い」「遅い」と、確実に順番が決まってしまうもの。
1番を取れたら、「すごい!!やったね!」となりますが、そうじゃない場合には、みなさんはどのように声をかけていますか?
子どもたちは、運動会という晴れ舞台で、大好きな両親の前で、頑張っているところを見せようと必死になります。だからこそ、順位が気になるのではないでしょうか。
運動会の練習中はふざけ半分だった子どもも、当日になると顔つきが変わります。
みんな当日はスターになりたいのです。
運動会前は、よく家から園まで走って通う子どもたちの姿を見ました。
実はこれ、子どもたちなりの運動会に向けてのトレーニング。
その姿を見てまた1人、また1人と家から走って通う子が増えたりします。いい影響を受け合って成長する姿は本当に微笑ましいものがあります。しかし、1番は1人だけの手にしか渡りません。
当日、1番を取れなくて悔しくて泣いている子を見て、その子のお母さんが私に声をかけてくれました。
「去年は○○番だったけど、今年は○○番になった、先生すごいですよね?」
そのお母さんは、子どもの去年の順位もタイムもちゃんと覚えていたのです。
私は、「本当にすごいよ、よく頑張ったよ」と言い、励ましました。それを聞いているお母さんの目には涙が。今にもこぼれ落ちそうでした。
毎朝忙しい中、少し早く支度して子どもの練習に付き合うのは大変だったことだと思います。けれど、お母さんが泣いているのはそういうことじゃない。
子どもが悔しくて泣いている姿を見て、勝たせてあげたかったという気持ち。そして、それ以上に子どもがこんなにも頑張ったんだ、成長したんだという誇らしい姿に、嬉しくて嬉しくて感動して泣いているのだと思いました。
「先生、うちの子すごいですよね」と目に涙を溜めて笑顔で言えるお母さん。
その時に、順番が全てじゃないと強くそう思いました。
また、最近では小学校でも体育の授業として取り入れられるようになったダンス。
ダンスは「みんなで気持ちを一つにして踊る」という種目です。それはつまり、運動会で入賞できない子もスポットライトを浴びることができるのです。でも、そう思えない子どもたちも中にはいます。
せっかくの運動会。無理やり踊らされたのでは意味がない。
私は、子どもたちにダンスで気持ちを体で表現するということを教えようとしました。
「幼稚園生に?」と言われてしまえば、それまでかもしれません。ただし、幼稚園生と言う前に1人の人間として、あんなに心が柔らかな時期だからこそ、子どもたちも表現者になれると思っています。
よく幼いころから、曲がかかると、自然に子どもたちが曲をイメージして、リズムに合わせて踊りだすことがありますよね?
でも、大人になると素直にできない人の方が多い・・・。
自分の気持ちを体で表現できる感覚については、大人より子どもの方が何倍も優れていると思うのです。
年長さんのダンスを教えている時、よくこんなことがありました。
子どもたちも疲れてくると、動けなくなってきます。
100人中1人でも「疲れたから、もういいや」そういう気持ちになってしまったら、ダンスは成り立ちません。
そんな時は、何度踊っても、曲をかけ続けても、変わりません。
そんな時は曲を止めて、子どもたちを集め、一言。
「幼稚園最後の運動会、みんなの気持ちは一つになりませんでした、そう終わるのでいいんだよね?」
大体の子はポカーンです。当然ですよね(笑)。先生、何言ってるの?と・・・。
幼稚園生の気持ちを一つにするなんていうことは本当に大変なのです。なので、まずは私(職員)が意思表明をするわけです。
「先生は、みんな1人ひとりが気持ちを合わせて踊る姿が見たい」
けれど、言うはするものの、大半の子は聞いていなかったり、反応がなかったりするので、
「これで練習を終わりにします」と、私は本当に練習を終わりにしていました。
すると、当たり前ですが、子どもたちは「やったー練習おわったー!」と喜びます。(笑)。