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公開 2015年09月07日  

育児と介護の時期が重なり負担に…「ダブルケア」の現実と解決策とは?

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育児と介護の時期が重なり負担が増す「ダブルケア」が最近問題となっています。その理由としては、晩婚化が進んだために育児の時期が遅くなり、介護と両立する必要性が高まったことがあげられます。今日はその問題点と解決策をお伝えいたします。


育児と介護の時期が重なる「ダブルケア」とは

最近、「ダブルケア」という状態に悩まされる人が増えています。



「ダブルケア」とは子育てと介護が同時期に重なり、その負担を一挙に抱えなくてはならない状態のことを言います。



育児や介護は各家庭でその役割を担うことが主流でしたが、これまではダブルケアの問題が表面化することはありませんでした。



なぜなら、多くの人が20代前半で子どもを産んでいたため、両親の介護の時期は、子育てが一段落してから…という状態が多くなっていたためです。



しかし近年では初婚平均年齢が30才を超えるなど、晩婚化が進み、高齢出産の割合も高くなっています。



その結果、子育てと介護の時期が重なる「ダブルケア」という問題が浮かびあがってきたのです。

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横浜国立大学准教授の相馬直子氏と、英国ブリストル大学講師の山下順子氏が団塊ジュニアの女性1894名を対象に行ったアンケート調査によれば、約1割がダブルケアの問題に直面しており、過去に直面した経験のある人も約1割、近い将来ダブルケアに直面すると考える人も約2割と、合計4割近くの人がダブルケアに悩んでいる、もしくは予備軍である現状が明らかとなりました。



また兄弟の数が減り、両親を見る負担が1人ひとりの子どもに大きくかかるようになったことなどから、負担が増したり、相談する人がいない孤立化が起こることも深刻な問題となっています。

ダブルケアに苦しむ当事者の声

お笑い芸人のくわばたおはらさんは、自身のブログのなかで、このダブルケアという問題について知ったときのことを以下のように書いています。

3人の育児をしながら おばあちゃんの介護をするママ(の姿を見た)…私の今の生活に介護を…言葉が出ない。(中略)この生活を毎日。



ママはもちろん 精神的・肉体的に大変

でも 介護してもらっている おばあちゃんも きっと精神的に辛いはず



もし 明日から介護をしなければならないとしたら…



無理!無理!今の この状況で無理!



この 「無理!」



を 「ダブルケア」を しているママが全国には たくさんいる。

育児を現在進行中でされている方ならば、この「ダブルケア」というものがどれだけ大変か分かるのではないでしょうか。



そんなダブルケアをに関する研究結果をまとめたホームページでは、ダブルケアに直面する当事者の方のリアルな声を掲載しています。

自分の親だし、父親がすごくやっぱり手厚い人だったので、いろいろ面倒を見ている背中を見ていたので、自分もそれと同じことをしなきゃいけないと最初は思っていたんですけど、



一手に全部抱えてみたら、ある日、涙が止まらなかったり、子どもがいるのに自分が死んでも何とかなるんじゃないか、この家はって思うような、そういう普通じゃ考えられない気持ちになってきて、



それをケアマネさんに相談したら、「もっとヘルパーさんを入れましょう」って言ってくれたんですけど、逆にヘルパーさんが朝来てくれて、歯磨きだ何だ、そういう身の回りのことをしてくれる。業者が来てくれて、介護タクシーが連れていってくれる。



そうなってくると、見守るばっかりって、自分は介護をしていないんじゃないかなっていう気持ちにもなってきちゃう。



でも、自分がいないと回らないし。でも、いても大しては役に立っていないような、そういう存在、今は。

一人で(介護を)そんだけやらなければいけないので、そうすると、思考能力が低下しちゃうんですよ。



そこに子どもにワーってやられるから、キーってくるんですよね。

ダブルケアの解決策とは?~負担を少なくする3つのポイント~

では、そんなダブルケアの負担を少なくするために、また社会としてそうした負担を抱える人に手をさしのべるにはどうしたらよいでしょうか。



今回は以下の3つの点から、解決策を考えてみたいと思います。



(1)ダブルケアへの理解

(2)子育て・介護のアウトソーシング

(3)女性・男性




(1)ダブルケアへの理解



まずひとつめに、「ダブルケア」というものについて、社会全体で理解を深めていく必要があります。そもそも「ダブルケア」という問題が表面化したのは最近のこと。ダブルケアという言葉を初めて聞いたという人も多いのではないでしょうか。



ダブルケアに関しては大規模な調査が行われておらず、その実態や現実に苦しんでいる人の数など正確なことは分かっていません。



そうした現状では解決策の模索もままならないことは、明らかです。まずは、この「ダブルケア」についての認知を広めるだけでなく、正確な実態をつかむための調査が行われることが望まれます。



(2)子育て・介護のアウトソーシング



さらに、こうしたダブルケアの問題は、育児・介護のアウトソーシングへの風当たりが強いことも深刻化の原因となっています。



子育てや介護といえば、「家族、とくに女性が担って当たり前」という風潮はいまだに根強く残っています。



子育て支援制度や介護保険などが整備されてきたとはいえ、社会全体において「やはり家族のことは家族でやるべき」という考え方が残っているうちは、制度の改善や利用率の向上も進まないのが現状です。



ベビーシッターを頼む母親や、施設に両親を預ける家庭に対するバッシングはなくなったとはいえません。



制度的な部分を改善していくだけでなく、まずは「家族全員が幸せになるために」、子育てや介護のアウトソーシングが一般的に認められるようになっていくことが重要ではないでしょうか。



(3)女性だけでなく、男性の育児・介護参加を



最後に、これは従来から言われてきたことですが、女性だけに育児や介護の負担が集中していることが、このダブルケアの問題をさらに深刻にしていると考えられます。



家庭外へのアウトソーシングだけでなく、家庭内の資源をうまく活用することも、このダブルケアの負担を緩和するひとつの方法であるといえます。



もちろん、そのためには会社の理解も必要となり、(1)ダブルケアへの理解が重要であるという点も再度強調しておかなければならないでしょう。



またまだ調査研究が進んでいない分野ではありますが、まずはこうした点から改善をはかるだけでなく、予備軍となっている人自身が積極的に情報収集をして、将来に備える必要が高まっています。



一度ダブルケアの問題について考えてみてはいかがでしょうか。

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