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善意の行動が子どもの力を奪う!?「エンパワメント」の視点から考える、子どもの育ちと大人の役割とは

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みなさん、こんにちは。

今回は、私自身のプレイワーカーとしての最大のキーワードでもある「エンパワメント」についてのお話です。子ども自身が持っている力を引き出すためのコツについて、子育て中の親御さんはもちろん、子どもに関わる仕事の方にも必見の内容です。

エンパワメントという考え方をご存知ですか?

私は学生時代に社会福祉を学んでいたのですが、恩師たちが、入学当初から卒業まで一貫して学生である私たちに伝えていたキーワードが「エンパワメント(Empowerment)」という言葉でした。



エンパワメントとは「個人が自分自身の持っている力に気づき、その力で自らの課題を解決していける状態になること」を意味します。一方で、エンパワメントの対義語に「ディスエンパワメント(Disempowerment)」という言葉があり、「力を奪う」という意味を持ちます。



この「力を奪う」ということの例えとして、こんな話を聞いたことがあります。



『高齢者施設で仕事を始めた若者は「お年寄りのために何か自分ができることをやろう!」とはりきっています。食堂でお年寄りの食事を配膳する業務を見つけてがんばるのですが、自分で運べない方に限らず、自身でできる方の分まで上げ膳、据え膳でやってしまいます。



すると、食事の楽しみのために何とかがんばって歩こうという意思を持っていた方は、歩行の機会を奪われてしまい、結果として筋力が落ちて車イスでの生活になってしまったのです。』



この話を聞いて、経験を奪われたことが、力を奪うことにつながるということをはじめて知りました。



私はクライアント(関わる対象)の力を引き出す、エンパワメントの実践をしていけるようになろう!と強く思いました。

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善意の行動が、子どもの力を奪うことに?

この様な場面は高齢者福祉の場に限らず、子どもの遊び場や家庭でも頻繁に起きています。子どもがやる気になっているのに、見守ることができずに口を出したり、先回りして手伝ってしまう。実際に私も公私ともに、子どもの経験を奪ってしまったことが多々あります。



覚束ない手付きでノコギリで竹を切っている小学生の女の子の姿を見て、「手を切りそうだなぁ」と不安な気持ちを押さえられずに不用意に「初めだけ切ってあげるよ」と刃が入るまでをやってあげたことがありました。



竹に切り込みが入った後、再度ノコギリを持った彼女の顔は曇りがちで、私が声をかける前の懸命に竹と向き合っている表情ではなくなってしまっていました。そして、竹を切り落とした後に工作をやめてしまいました。



彼女は自分の力で竹を切り落としたかったのでしょう。そこに突然、自分の気持ちに反して「いらない手助け」が入ってきて困惑したのだと思います。



私は彼女のやってみたい気持ちや竹を一人で切り落とすという経験を奪ってしまったのです。

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「子どもの人生は子どものもの」だということ

私たち大人はこれまでの自身の人生経験から、子どもがやろうとしていることの結果が予測できてしまいます。



経験的にも未熟な子どもがやろうとしている遊びが、もっとスムーズに、失敗せずにできる方法を手出しや口出しをしてでも「教えたくなる」のです。



しかし、子どもにとってはスムーズにできていなくても、失敗しても構わないのです。夢中で遊ぶ中で、知らず知らずによりうまく遊べるようになり、失敗から学び、より良い方法を自らが発見するのが子どもだからです。



木登り、泥団子、鉄棒、虫捕り、ノコギリやナイフでの工作、一輪車、火熾し、川での水切り(水面に向かって石を投げて、石を跳ねさせる遊び)、将棋、高所からのジャンプ、自転車、砂場のトンネルなどなど、どんな遊びであっても、子どもが自らの気づきで上達できたと感じられる瞬間を味わうことができます。



この「遊びの中で感じた達成感」とも呼べる気持ちは、子どもが自身のできること多さや熟度を喜びとして感じエンパワメントされるための大きな要素となります。



また、コミュニケーションについても、自分で解決した経験は重要です。



例えば、友達との言い争いや小競り合いのケンカをうまく解決して仲直りできたことや、知らない子どもを遊びに誘う声かけがうまくいったこと。もっとおもしろい遊び場にするためのアイデアを大人に伝えて実現したことなどがそれに当ります。



遊びもコミュニケーションも大人が良い方法を教えてしまうことは簡単です。しかし、安易なアドバイスはエンパワメントにはつながりません。それどころか、時に大人の善意は子どもの力を奪うことがあるという重大な事実をを知っておかなければなりません。



今、この瞬間。子どもは子ども自身の人生を生きています。



その尊さを大切に、大人は子どもの成長を支えていきたいものです。

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子どもがエンパワメントされるための大人の関わり3つのコツ

しかし、プレイワーカーとして子どもの遊びを支える立場にある私も「教えたい」という衝動はあるものなのです。



そんな大人が子どもと過ごす中で、実践できるエンパワメントのコツについて私と長男のエピソードを交えながら紹介したいと思います。

①「やらせたい」遊び < 子ども自身の「やりたい」遊び

この記事を書いた人
関戸博樹の画像
関戸博樹

フリーランスのプレイワーカー
特定非営利活動法人 日本冒険遊び場づくり協会 理事

大学で福祉を学ぶ中、「全ての人が元気になれる地域をつくる」ことを仕事に...

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