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公開 2015年03月30日  

妊娠前から必要な栄養素~葉酸とは?~

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妊娠中に必要な栄養素として、有名になってきた「葉酸」。実は、本当に必要なのは、妊娠する前だって知っていましたか?今回は妊娠の際に、葉酸が何故必要なのか、いつから摂取を意識していけばよいのかを解説します。

出典:http://www.szsfe.com/

そもそも葉酸ってなに?

葉酸とは、別名「ビタミンB9」と呼ばれます。ビタミンと聞くと、何だか体に良さそうというイメージですが、そもそもビタミンが何のために必要なのか皆さんご存知でしょうか?



私たちの体は様々な働きを行っています。例えば食事ひとつとっても、消化・吸収・運搬・貯蓄・排泄など、数えきれない程のシステムが常に動いています(全てを含めて代謝と表現します)。これらのはたらきに強く関わるのが、「酵素」と呼ばれるものです。



「酵素」のはたらきは、大工さんの仕事にたとえてみると分かりやすいかもしれません。木材を切り(消化)・切った木材を運び(運搬)・家を立て(合成)・溜まったゴミを外に捨てる(排泄)、といった調子です。ビタミンは、この大工さん達の仕事道具にあたります。ノコギリ・カンナ・トンカチ・運搬車、それぞれの大工さん(酵素)に適した道具(ビタミン)が無いと、満足な仕事が出来ないのです。



さて、葉酸(ビタミンB9)は、私達の体の全ての細胞に含まれる、遺伝子(DNA)が作られる時に非常に重要な道具となります。DNAは私達の体の細胞一つ一つに含まれていて、細胞分裂する際にDNAも一緒に分裂します。そのため細胞分裂が活発な時には、葉酸が特に必要となります。細胞分裂が活発と言えば、妊娠中の胎児ですね。



新生児の体は約60兆個の細胞で出来ていると言われています(大人とほぼ同じ細胞数です)。もともと1つの細胞が約10ヶ月で60兆個に増えるのですから、胎児の体では、凄まじい回数の細胞分裂が起こっているのです。そのため、妊娠中に必要なサプリメントとして「葉酸」が良く取り上げられるのです。

胎児にとって、最も「葉酸」が必要な時期とは?

胎児の成長に重要な葉酸ですが、最も大切な時期は妊娠の極初期です。



実は心臓・呼吸器・消化器・脳神経の原形といった、胎児の体の重要な部分のほとんどは、妊娠4-7週の器官形成期と呼ばれる時期に完成します。この時期における脳神経(脳・脊髄)の原形は、胎児の背中の神経管と呼ばれる部位から作られます。神経管は器官形成期の時期に、背中の周りの細胞が増殖する事により、まるで餃子の皮を包む様に皮膚が閉じられて完成します。もしもこの時期に葉酸が不足してしまうと、神経管が完全に閉じなくなり、脳や脊髄の異常を来してしまう「神経管閉鎖障害」と呼ばれる異常のリスクが上昇してしまうのです。葉酸欠乏による神経管閉鎖障害には、脳が全く作られない「無脳症」や、背中の部分の皮膚が欠損し脊髄の一部が皮膚表面に露出してしまう「二分脊椎」(餃子が包みきれず、中身が露出してしまうイメージです)等があげられます。

葉酸摂取を意識するのは、「妊娠前1ヶ月」から

この様に葉酸は、妊娠4-7週というとても早い時期に必要となります。「妊娠が判明したらすぐに葉酸を摂らなきゃ」と思うかもしれませんが、実は妊娠が判明したタイミングでは、神経管閉鎖障害の予防としては少し遅いのです。なぜなら、一般的には「生理が遅れている・・」と感じてから妊娠検査を行うので、妊娠が判明する時期というのは、大体妊娠4-6週くらいだからです。言いかえると、妊娠が分かった時には、すでに胎児の体は器官形成期に入っていて重要な臓器がほぼ完成しているという事になるのです。

そのため神経管閉鎖障害の予防のためには、妊娠前1ヶ月より十分な量の葉酸を摂取する事が望ましいとされています。

まとめ

細胞分裂をする際に、非常に大切な栄養素である「葉酸」は、妊娠中は通常よりも多量の摂取が必要です。さらに葉酸摂取不足は、器官形成期における「神経管閉鎖障害」の危険性を上昇させてしまうので、妊娠前1ヶ月から十分な量の葉酸摂取を意識する事が大切です。

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