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公開 2015年07月23日  

心のSOSを見逃さない親子関係をつくっておこう〜小1プロブレムの乗り越え方<後編>〜

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「入学」という環境の変化がきっかけで、誰しもに起こりえる小1プロブレム。小さなつまずきから学校生活に適応できず苦しむ子の姿は親もつらいものです。前編に続き、後編では家庭でできる工夫について、お伝えします。


<前編>でインタビューした、1年生の担任をしている現役教師のクラスでは、今のところ「集団での小1プロブレム」のような大きな問題には直面していないようでした。

一方でここ何年か、自治体や学校全体で小1プロブレムに関する取り組みが行われるケースが増えており、その問題意識は徐々に社会全体に行き渡ってきているようです。



そうした中で、今未就学児の子育てをしているご家庭としては、どんな工夫ができるのか。

具体的なアイデアをお伝えします。

コミュニケーションの課題に向き合うには、まずは子どもを良く観察すること

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例えば、友だちとうまくつきあえない、感情がコントロールできないという課題が出てくることがあります。新しい集団生活の始まりですから、大人でも人見知りしたり緊張したりしますよね。



こうした場合は、実際の場面を想定し、親子で友だち役を演じてシミュレーションしてみると自分の感情、相手の感情、とるべき振る舞いが理解しやすくなります。おままごとのような役割遊びとしてできると、楽しめるかもしれません。



ただ、実際にこれをやるきっかけをつくるには、まず親が常日頃からよく子どもを観察している必要があります。ある年齢になると、例えば友だちと喧嘩してしまったとか、無視されたということは子どもから親には言いにくいものです。



ですから、小さいうちから一緒にお風呂に入る時、夕飯の時など、園での出来事を話す時間を設けて習慣づけ、話しやすい親子関係をつくっておくことが重要です。そうした関係の中で「心のSOSのサイン」を見逃さないという親側の努力も必要になってくると思います。



また、「レジリエンス教育」が今注目を集めています。自分の物事の捉え方のクセを認め、変える意識を持つことを出発点として、「挫折しやすい」「キレやすい」「すぐ諦める」心を、逆境に負けないタフな心に育てる方法のことです。こうした方法を親が学ぶことも、大いに意味があるでしょう。(オススメは、子どもの「逆境に負けない心」を育てる本 共著/足立啓美・鈴木水季・久世浩司、監修/イローナ・ボニウェル、法研刊 が分かりやすいです)

知識よりも、学習できる姿勢づくりを

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集中力がなく、落ち着きがないという子には、家族がしっかり聞いて欲しい時ほど、声のトーンとスピードを落として話す、家庭でもテレビをなるべく消して静かにするなど、子どもの心が落ち着く環境づくりを意識してみましょう。



また、座学の習慣としてパズル、迷路も集中力が高まりよいでしょう。親と競争するとよりモチベーションが上がります。



多動傾向のある子は、身体を動かす、リズムを取っていたほうが能率が上がる、そして集中力が増す場合があるという報告がされています(University of Central Florida-2015)。他の子に迷惑になるような動きやリズムでは実用性がありませんが、子どもの学習の様子を観察し、どういった動きなら周囲に目立たず集中する動きが取れるか、お子さまと一緒に探してみてはどうでしょうか。



指示行動(聞き取りと理解)の力を高めるには、お手伝いを頼む時、複数のことを指示して、順番通りにやってもらいましょう。「牛乳を冷蔵庫から出したらコップに入れて、机に置いておいてね」だけでも、3つの指示が含まれています。徐々に指示数を増やす、難度を上げるといい訓練になります。

もし嫌がるようなら、クイズやゲームだと言ってチャレンジしてもらうと良いでしょう。また、絵本の読み聞かせの最後に、どんな話だったかを要約してもらったり、話の中からクイズを出題してみたりすると、だんだん集中して話を聞いてくれるようになります。

身辺自立は「責任と権限」がキーワード

先のインタビューでも挙がっていた衣服の着脱や整理整頓などの「身辺自立」については、実際に、自分で管理する場所を家の中に一箇所つくり、整理整頓も自分でしてもらいます。これは時間も一緒で、テレビを観ているなら、「切りなさい」ではなく、「切る時間を自分で決めてね。決めたことにはママは何も言いません」と言って、自分で時間を管理してもらいます。



これが難しければ、「自分の約束が守れないなら、まだテレビを自由に観るのは早いから、少しだけね」と、短時間に制限すると、自分で積極的に決めて、守るようになることが多いです。



このように、身辺自立については、まずは子どもに責任と権限を与えてみるところから始めます。その上で、本人が成功できるように、サポートしてあげればいいのです。

環境の変化が大きな時こそ、まずは親が余裕を持ちたい

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子どもだって慣れない環境では、身体はもちろん心が疲れることもあります。小1プロブレム、中1ギャップと、子の環境が激変する時期は必ずあるものです。



親もその変化についていくのが必死になってしまいがちですが、そういう時こそ、意識的に少しだけ家事の手を止めて、子どもの状況や心に寄り添う余裕を持ちたいものですね。



参考文献:小1PROBLEM HandBook (月森久江監修/講談社刊)、頭がいい子の生活習慣 なぜ秋田の学力は全国トップなのか(阿部 昇/ソフトバンククリエイティブ刊)

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