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公開 2023年02月08日  

怒りん坊で荒くれものだった息子。関わり方に悩んでいたら、目からウロコなアドバイスが

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あんなに難しかった長男が今、とっても健やかです。


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うちの真ん中っ子長男と言えば、「大変」とか「消耗」とか「疲弊」とかそんな単語を背負っている生き物だった。

1年前までは。


彼は生まれてから3歳ごろまでは少々活発が過ぎること以外、よく寝てよく食べよく遊ぶ、育てやすい子どもだった。

ところが年少さんが終わりに近づいたころから、やけに不機嫌な日が増えるようになった。

それまでは幼稚園へお迎えに行くと教室から笑顔で飛び出してきていたのに、何故か仏頂面で出てくるのだ。

お迎えに来ただけなのに。

先生に聞いても本人に聞いても原因が分からなかった。

「さっきまで機嫌よく遊んでたんですけど……」

と先生も困惑していた。


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最初のうちは気にせずいつも通り接していたけれど、毎日ともなると私も次第に苦しくなる。

やがて、彼の不機嫌には要求が加わるようになった。

帰りの車の中で「あそこへ行きたい」やら「あの公園に連れて行って」など、中にはさすがに無理だと本人も分かっているようなものもあった。

要求が叶う日はいいが、予定があったりして叶わない日にはまた不機嫌をあらわにした。

「できることはしてあげたいけど、できない日もあるんだよ」何度言っただろう。

本人も分かっちゃいるけど気持ちの落としどころが見つからず、不機嫌をばら撒くしかない、そんな様子だった。

不機嫌な人が家にいるとみんなが疲弊する。

相手をするだけで体力が奪われる。

ストレスは他のきょうだいに伝播して、みんなギスギスする。

そんな日が何度もあった。


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あの頃の彼はほんとうに厄介だった。

朝ご飯に大好きな目玉焼きがないとか、夕飯の時にいつもあるはずのお味噌汁がないとか、そんな小さなきっかけでため息をついたり不機嫌になったりするのだから、時限爆弾と暮らしているようなものだ。

腫れ物のような長男をどうしたらいいのか頭を抱えている内に、気が付けば彼は小学生になっていた。


「長男君、めっちゃいい子ですね」

2学期の面談の時だった。

担任の先生が開口一番そう言った。

知っている。

彼は外面が世界一いいのだ。


幼稚園の面談でもそうだった。

優しくてリーダーシップがあって、男女分け隔てなく仲良くできる。

もう何度も聞いた。

聞いたのだ。

知っている。


知っているけど、私はその彼を見ていない。

私が知っている彼は不機嫌で不満ばかり挙げ連ねて、何ひとつ満足してくれない。

押しても引いても包んでも突き放しても、不機嫌をぶつけてくる。

その頃、私にとって彼は、爆弾であり、腫れ物であり、語弊を恐れずに言うなら、いっそ恐怖の対象でもあった。

「でも先生。私、どうやって育てたらいいか分からなくて」

どう関われば彼がよい方向に進んでいけるのかが分からなかった。


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「放っておいていいですよ。あの子は大丈夫だから勝手に育っていきますよ」

私より少し年上で、男の子を2人育てるお母さんでもあったその先生は、いつもさっぱりとしていて、まさに肝っ玉母さんという感じの人。

「この前ね、給食の配膳時にみんなが集まっていて、ちょっと長男君の腕が誰かに当たっちゃったみたいなんです。
その時に長男君ね、『わ!誰か分からないけどごめんね!!』ってとっさに周りを見回して言ったんです。
誰も『痛い』ともなんとも言ってないのに、反射的に周りを見て謝れるってすごく素敵だなと思ったんです。
彼と結婚したいわぁ!あ、もう私結婚してるんやった!!はははは」

先生は豪快に笑った。

私もつられて笑った。笑ったらなんだか少し気が楽になった。

いいところがあるのはよく分かっている。

分かっちゃいるけど苦しい。

そんな気持ちを掬うように彼のいいところを話してくれて、不安を弾き飛ばすように笑わせてくれて、嬉しかった。


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何かアドバイスをもらえると思ってこぼした言葉だったけれど「放っておいていい」らしい。

接し方に頭を抱えていたけれど、ぶつかったりぶつからなかったりしながら、時が経つのを待てばいいということなのかもしれない。

いつの日かいい大人になって安心させておくれよ、とだけ念じながら、毎日ごはんを作っていよう。

そんなふうに暮らしていた。


あれから1年と少しが経って、最近ふと気が付いた。

あんなに不機嫌で怒りん坊の荒くれものだったのに、今、見る影もない。

日々はグラデーションだから私はその境界線を見落としてしまったけれど、穏やかな毎日の中でふと、少し前を振り返ったとき、あれは誰?と思うほどの暴れん坊がそこに居た。

今、目の前にいる彼はいつも楽しそうで、帰宅したらおしゃべりをはさみながらおやつを食べて、宿題をして、夜になったら好き嫌いを言わず「おいしいおいしい」と言ってご飯をお代わりしている。

朝、卵を切らして目玉焼きが作れない日だってご機嫌で納豆をこねている。

最後の一個になった唐揚げを長女に譲ってあげたり、ゲームの順番を妹に譲ってあげたり、まるで仏のようだ。

あの日々思い出すと、あれはなんだったんだろう、と首をかしげたくなる。

先生が言った通り彼は勝手に育って、健やかに今、穏やかだ。

「男の子はある日突然、憑き物が摂れたように落ち着くよ」

いつか誰かに言われたけれど、まさに憑き物が取れたよう。

我慢をしているのでは、と注意深く観察してみたけれど要望を飲み込んだりしているわけでもないし、なにより日々、彼はあの頃よりうんと楽しそうにしている。

いくら伸ばしても振り払っていた私の手を、今は掴んでくれる。

そのことがとても嬉しい。


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我が家にはもともと仏の夫がいて、仏の長女がいる。

2人とも非常に温厚で、私は日々色んなことを大目に見ていただいている。

学習ノートを買い忘れたり、みそ汁の出汁を取り忘れたり、うっかり寝坊したりしているけれど、みんな優しい。

長男も仏の道を歩み出した今、私1人が俗物を生きていることになる。

末っ子は生まれながらに輝くハイパー天使だし。

彼らを鏡によい人であろうと精進しているけどどうしてなかなか。

勝手に育つどころか私の場合、随分と時間がかかっている。

もうすぐ齢40になる。


※ この記事は2024年02月07日に再公開された記事です。

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