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公開 2015年07月14日  

子どもが情熱を注いでいるゲームのやる気を削ぐことは、本当に正しいのだろうか?

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「ゲームやテレビって、子どもの教育に良くないの?」「暴力的なゲームをやると暴力的な子どもに育つって本当?」これらの疑問はぼくが子どもの頃から議論されている永遠のテーマですが、真相はいかに。

出典:http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10172000753

ゲームは子どもに悪影響って本当?

「ゲームやテレビって、子どもの教育に良くないの?」

「暴力的なゲームをやると暴力的な子どもに育つって本当?」

これらの疑問はぼくが子どもの頃から議論されている永遠のテーマです。



特に子どもの頃にゲームをやらなかった人ほど、自分が体験していないが故にゲームに不信感を持つケースが少なくありません。



さて、ゲームは本当に子どもに悪影響を与えるのでしょうか?

こんな時こそ、教育経済学に学ぼう

昨今注目を集めている学問分野に「教育経済学」があります。

これはしばしば主観的に判断されがちな「教育」という分野において、エビデンス(科学的根拠)に基づいて、効果の有無を判断しよう、という経済学的なエッセンスを教育学に導入したものです。



例えば「少人数学級は子どもにとって本当に良いのか?」といった教育のギモンに対しても、科学的根拠に基づいて、何かしらの結論を出せるのが教育経済学の面白さです。

この教育経済学では「ゲームは子どもに悪影響なの?」というギモンに対しても一定の答えを出しています。

結論から言うと「テレビやゲームそのものが子どもたちにもたらす負の因果効果は私たちが考えているほどには大きくない」という研究結果がほとんどだそうです。



それどころか「幼少期にテレビを観ていた子どもたちは学力が高い」と結論づけている研究があるのだとか(シカゴ大学・ゲンコウ教授)。



ゲームについても「ゲームは必ずしも有害ではない」「ロールプレイングなどの複雑なゲームは、子どものストレス発散につながり、創造性や忍耐力を培うのにむしろよい影響がある」などの研究結果が出ているそうです(ハーバード大学・クトナー教授)。



つまり「ゲームの中で暴力的な行為が行われていたとしても、それを学校や隣近所でやってやろうと考えるほど、子どもは愚かではない」のです。

ゲームを「禁止」しても、学習時間は増えません

ゲームをやることそのものが子どもに対して与える悪影響がさほどなかったとしても、「ゲームをすることによって本来するべき学習の時間が減るじゃないか!」と思われる方もいるかもしれません。



ただ、残念ながら「ゲームで遊ぶ時間を減らしたとしても、学習時間はほとんど増えない」ということを教育経済学の研究・実験は明らかにしています。

テレビやゲームの時間を制限しても、子どもは自動的に机に向かって勉強するようにはなりません。



子どもが勉強に取り組む姿勢が変わらないのに、テレビやゲームの時間を制限したら、たぶんそれに類似する他のこと―スマホでチャットをする、あるいはインターネットで動画を観るなど―に時間を費やすだけです。

ー「学力」の経済学(著者:中室牧子)より引用

数字で言うと、1時間テレビやゲームを辞めさせたとしても、男子については最大1.86分、女子については最大2.70分しか学習時間が増加しないということです。



「やりたいこと」を辞めさせたとしても、「学習意欲」が低い状態では他の「やりたいこと」に時間が割かれるだけです。これは非常にもったいないですよね。だったらまだ「やりたいこと」を思う存分やらせて上げた方が良いです。



前回のエントリーでも書きましたが、本当に子どもに勉強してほしいなら、勉強することが楽しい!と子ども自身が思えるようにする必要があるのであって、ゲームを辞めさせれば勉強するようになる、という単純なことではありません。

ゲームは、子どもの戦略思考を養う最適な教材

ゲームは子どもに悪影響を与えるどころか、むしろ適度なゲームは子どもの戦略思考を養う上で非常に良い教材になります。



マリオやドンキーコングのようなアクションゲームも、昔からあるテトリスやぷよぷよなどのパズルゲームも、ファイナルファンタジーやドラクエのような本格RPGも、ポケモンや妖怪ウォッチのような育成系RPGも、それからパズドラやモンストのようなスマホゲームにおいても、すべてのゲームにおいて、成果を出すためには「高い戦略性」が求められます。



Gaming is Goodというインフォグラフィックにて、ゲームがもたらす好ましい影響について以下の5つにまとめられています。



・空間記憶力を高める効果

・集中力が高まりミスが減る効果

・読解力を改善

・努力が得意になる効果

・社会性を養う効果

ゲームは社会性を培うことにも大きな効果があるようです。ゲームで遊ぶ人の65%が、実際の友達と一緒にゲームで遊んでいるとのこと。オンラインゲームの「World of Warcraft」と「Runescape」は大勢の人が参加しており冒険がたくさんありますが、例えば「World of Warcraft」には1200万ものメンバーがいます。結婚している夫婦の76%は「World of Warcraft」のようなMMORPGに一緒に参加することは自分たちの結婚生活によい影響を与えていると述べています。アメリカとイギリスのインターネットをする人間で5人のうち2人はこのようなソーシャルゲームに、なんと週に15分以上参加しているのです。また、Facebookユーザーのうち40%は「World with Friend」や「FarmVille」のようなソーシャルゲームをしてます。



ゲームは脳作用にも関係します。「Call of Duty」や「Halo」をすることによって、複雑で管理能力のいる作業の効率がゲームをしない人よりも30~50%向上したとのことです。「Tetris」を3ヶ月の間毎日30分プレイした子どもは、そうでない子どもよりも脳の皮質が厚くなったようです。なお、脳の皮質は調整能力や視覚的な情報処理のプロセスに関係していると考えられています。

「ゲームを飽きさせる方法」がネットで話題に

とはいえ、あまりにゲームばっかりしていて、明らかに生活に支障を来すレベルだったらどうにかしてゲームを辞めさせたいと思うのもまた親心。



そんな時「ゲームを辞めなさい!」「たまには外で遊びなさい」といっても全然効果はありません。むしろ、辞めなさいと言われるほどやりたくなってしまうのが人間の性です。



ではどんな声がけをしたら辞めさせられるのか?

これについては、Twitterでとある手法が非常に話題になりました。

「ゲームの時間は無制限」「ただし1日X匹ゲットをノルマ」「結果報告は毎日義務」「義務を怠ったら叱責」という方針に転化。最初は息子さんも大喜びだったらしいけど、休日も「ほら!まだポケモンやってないぞ!」と言われるうちに徐々に飽き、無事サッカー少年に転向したとか。

「やりなさい!」

と言われるとやりたくなってしまうのは、ゲームも勉強も同じということですね。



あれだけやりたくて仕方がなかったポケモンですらやりたくなくなってしまうのですから「やりなさい!」という言葉がいかに子どものやる気を削ぐかが良くわかりますね。気をつけねば。

子どもの「やる気」をうまく活用しよう。

ただ、子どもが情熱を注いでいるゲームの「やる気」を削ぐことは、本当に正しいことなのでしょうか?

確かにゲームばかりやっていて、生活に支障を来してしまうのも問題ですが、子どもがハマっているゲームの「やる気」を削いでしまうというのは、ゲームであれ何であれ、情熱を注ぐ対象を奪われ続けた子どもはきっと、将来仕事などで情熱を注ぐことが難しくなってしまうでしょう。

「何かに熱中しても、どうせ遮られるからムダだ」ということを学習してしまうからです。これは恐ろしいことですよね。



だったら、子どもの「やる気」を削ぐのではなく、子どもがゲームに対して捧げている「強力なエネルギー」を、子どもにとって良いことに上手く活用してあげた方が得策です。



例えばわが家では、ゲーム・テレビのゴールデンタイム制度というものを設けています。



ゲーム・テレビの上限時間は、平日は1日1時間、土日は1日2時間まで。「適度」なレベルで制限時間を設定しています。



ただし、例外があります。



「朝7時までであれば、無制限でゲームをやったり、テレビを観て良い」というゴールデンタイム制度を設けています。



制限時間を超えたら「はい!今日はもうおしまい!続きは明日ね」と中止します。「ちょうどよいところ」だろうと何だろうと、問答無用で中止します。(笑)



「ちょうどよいところ」で止められた子どもは、続きをやりたくてウズウズしますよね。ウズウズした気持ちが抑えきれない息子は、ゴールデンタイム制度があるのを良いことに、誰に言われるでもなく早起きをしはじめるようになりました。



通常時で6時。早いと5時位には起き出して「妖怪ウォッチ」をやっています。それまではいくら「早起きしなさい!」といっても起きなかったのに。子どものエネルギーは恐ろしい。



これは「子どものゲームへのエネルギーを早起きの習慣作りに活用した」事例でしたが、他にもたくさんのことに活かせそうですよね。単にゲームの「やる気」を削いでしまうのではなく、プラスのエネルギーとしてうまく活かしてあげた方が、親も子もハッピーになること間違いなしです。

適度なゲームは子どもの教育にとってプラス。親も一緒に楽しもう。

以上、ゲームが子どもに与える影響を見てきましたが、子どもに悪影響を与えるどころか、適度なゲームはむしろ子どもの教育にとってプラスになりえます。



「ゲームなんて」と邪険にせずに、童心にかえって子どもと一緒に楽しんでみるのもまたご一興。



息子たち(7歳/3歳半)とWiiUの「スマブラ」や「マリオカート」で激闘を繰り広げるのも、ぼくのささやかな楽しみの一つだったりします。少し前までは長男には全く負けませんでしたが、日々力をつけてきており、最近だと僅差で負けてしまうことも…!父親の威厳を見せ続けるためにも、負けるわけにはいきません。



ゲームは子どもたちとの共通言語にもなるので、子どもとのコミュニケーションに悩む親御さんにもとってもオススメですよ。

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