その理由は、江戸時代の住居区分にあるそうです。
江戸時代、江戸の町は武士の住む場所は「まち」、町人が住む町は「ちょう」とする区分があったそうです。
詳しい解説は、以下をどうぞ!
町は「まち」?それとも「ちょう」?東西で変わる地名の読み方
「大手町」をなんと読むだろうか。
関東の人は「おおてまち」に決まっていると思っただろうが、関西の人なら「おおてちょう」と答えるかもしれない。
関東と関西では「町」の付く地名の読み方が異なり、関東では「まち」、関西では「ちょう」と読まれる傾向にある。
ただ、東京の場合は「まち」と「ちょう」が混在している。
「大手町」や「御徒町」は「まち」だが、「人形町」や「鍛冶町」は「ちょう」といった具合だ。
その理由は、江戸時代の住居区分にある。
鈴木理生著の『東京の地名がわかる事典』によると、江戸時代、江戸の町は武士の住む場所は「まち」、町人が住む町は「ちょう」とする区分があったというのだ。
大手町は武家の上屋敷が集まっており、御徒町は下級武士が住んでいた場所だから「まち」。
近くに歌舞伎小屋や芝居小屋があった人形町は人形遣いが、神保町や鍛冶町は鍛冶職人が多く住む町人たちの町だったから「ちょう」というわけである。
関西で「ちょう」が定着したのは、中国文化の影響を強く受けたために、音読みがよく使われていたからだといわれている。
鎌倉時代以降、商業都市として発展した京都では、商工民が多く移住してくるようになった。
彼らは周囲の家で集まって「町」という共同体をつくった。
さらに戦国時代になると、武士に対して立場の弱い商工民の利益を守るために、数十カ所の町が集合した「町組」を形成していた。
この町や町組を「ちょう」と読んだことが影響しているのではないかと考えられているのである。
読み方の傾向の違いは「町」ばかりではない。
関東と関西では「谷」の読み方も違っている。
どちらにも「渋谷」という地名があるが、関東では「しぶや」、関西では「しぶたに」と読む。
例えば、大阪府池田市、京都府亀岡市、兵庫県篠山市、奈良県天理市には「渋谷」という場所があるが、いずれも呼び方は「しぶたに」である。
このように関東では「や」、関西では「たに」と読まれることが多いのだ。
たしかに、東京には「千駄ヶ谷」「市谷」「世田谷」「日比谷」「四谷」など「や」がつく地名がかなり多い。
これは、もともと関東には「たに」という言葉はなく、山と山の間のくぼみは「や(矢)」と表現していたからだ。
そのため古くからある地名は「や」、もしくは「やと」、「やつ」と読まれていた。
関東でも「鶯谷」や「茗荷谷」などは「たに」と読むが、こうした地名は、江戸時代以降になって、関西から「たに」という言葉が入って来てから名付けられた地名だ。
このように、地名にはそれぞれの土地の歴史や文化が表れているのである。
出典:『関東と関西 ここまで違う! おもしろ雑学』(三笠書房/2019年刊行)
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