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「個性は真っ直ぐ伸びていくもの。親が思い通りに伸ばせるものではない」乙武洋匡氏が語る子育て観

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今をときめく「気になるあの人」が、どのような環境で育ち、どのように親が関わったことによってその個性が磨かれたのでしょうか。その『原石の磨き方』を明らかにしていく当インタビュー特集第4回目。大学在学中に出版した『五体不満足』(講談社)がベストセラーになり、その後も小学校教諭等を経て、様々な活動をされている乙武洋匡氏にインタビューを行いました。


母が私に対して初めて抱いた感情は「喜び」だった

かわいい――。



母が初めて私を目にした瞬間、口にした言葉だそうです。



母と私が対面したのは、出産から1ヶ月後でした。病院側が必要な検査や、親と対面させるための準備をしてくれていたためです。母がびっくりして気を失って倒れてしまうかもしれないからと、先生方は別室にベッドを用意するなど準備してくださっていたそうなんですが、きっと拍子抜けだったと思いますよ(笑)。



もちろん、両親にもその前後でいろんな葛藤がなかったわけではないと思います。例えば赤ん坊のころ、両親を悩ませていたのは、とにかく眠らないことと、ミルクを飲む量が極端に少なかったこと。これにはさすがの母も不安だったようです。



でも、両親は悩んだ末に開き直ったのだとか。



「他の子と大きく違う形で生まれてきたんだから、寝る時間やミルクの量を比べたってしかたがない」「これくらいは、誤差の範囲」だと(笑)。



両親がそんな風に受け止めてくれたので、私は手足がなく生まれてきたことは、ある意味ラッキーだったんじゃないかとも思うんです。そういう両親のスタンスが、私の人生の支えとなっている自己肯定感―自分を愛する力―を育んでくれたのだと感じています。

私の負けず嫌いは、障害に関係なく褒められたかったから

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幼いころは、とにかく負けず嫌い。でも、他の子の負けず嫌いとは少し違っていたと思います。



私は、みんなと同じこと、例えば、歩く、食べる、字を書く――それだけでも褒められることが極端に多かった。ただ、どうして私だけが褒められるのだろうと不思議に思っていました。



ある時、そこには「あなたは障害者だから何もできない」という前提があるからだと気づいたんです。そう考えると、褒められていながらも、どこか見下されているような、複雑な気持ちでした。



で、ここからが、負けず嫌いの本領発揮です(笑)。



純粋に結果としてみんなよりも秀でていれば、障害者ということに関係なく褒められる。それで褒められたなら、自分も素直に受け止められるんじゃないか――。



だから、クラスで一番勉強ができるようになりたい、一番字が綺麗に書けるようになりたい、そんな風に思うようになったんです。

担任の先生もクラスメイトも特別扱いはしなかった

小学校時代、1~4年生を担任してくれた先生の基本方針は、できるかぎり私の手伝いをしない、まわりの子どもたちにもなるべく手伝わせないというものでした。



例えば帰りの支度なんかも、私は全部自分でやるので相当な時間がかかってしまうんです。そうしたらある時先生が、クラスメイトが私を待っている間に「ゴミを5つ拾ってゴミ箱に捨てよう」と提案したんです。



けれど先生は「乙武くん以外のみんなは」と言わなかったので、あろうことに私は自分の支度を中断してゴミを拾ってしまったそうなんです。しかも口で……。



普通ギョッとしますよね。でも、先生は驚きはしたものの、それを止めることはしなかったんです。私ができる精一杯のことをしているだけなんだから、と。



先生が私を特別扱いしなかったから、クラスメイトも「僕らは僕らの、乙武は乙武のベストを尽くす。それは、同じことだから」という感覚に、自然となっていったんだと思います。

親に認められることの大切さ

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小学校の教諭をしていたときのことです。



「先生、いいでしょ!うちの娘」



個人面談で、大抵のお母さんが我が子のダメ出しから始まる中、一人だけ、第一声がそんな言葉だったお母さんがいました。



でもその子は、飛び抜けて勉強やスポーツができるわけではなかった。ただ、いつも朗らかで笑顔を絶やさず、彼女のまわりには必ず友だちが集まっていました。



私はお母さんのこの言葉を聞いたとき「ああ、こういうことなんだ」って、彼女の姿とお母さんの言葉が一本の太い線でつながった気がしたんです。



人間性を形成し、他人を満たし、惹きつける人格をつくりあげるのは、勉強や運動が優れているかではなく、どれだけ親に認められて、肯定されて育つのかが重要なんだと。私自身、そのお母さんに親としてのあり方を学ばせてもらった気がしています。

生徒を褒め続けたことで、親子関係まで変化した

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2年間同じクラス(3、4年生)を担任する中で、私がみんなの前で褒める回数がいちばん多かった、ある女の子がいました。



クラスで一番の大柄な体格で勉強も運動も苦手だけれど、人一倍頑張り屋さんで、物事に取り組む姿勢はいつも真剣。体操着が真っ黒になるくらい何度失敗しても逆上がりの練習をしたり、掃除だって大きな体をかがめてロッカーの隅までゴミをかき出したり、そんなタイプの子でした。



私は、保護者の方とは1対1の時間をできるだけつくりたいと思って、各家庭にまめに電話を入れるようにしていたのですが、彼女の自宅に電話をする回数が一番多かったと思います。



ただ、私が彼女のことをいくら褒めても、お母さんは「うちの娘が?」と半信半疑でした。彼女はすごくがんばり屋さんだけれど、みんなと同じようにできないことが多かったために、お母さんは娘さんが褒められることに戸惑っていたのかもしれません。



それでも、私は継続して電話をかけては彼女のことを褒め続け、毎回最後には「夕飯の時にでもぜひ褒めてあげてくださいね」と伝えていました。





4年生の運動会の時、それまでは人前で積極的に何かをするタイプではなかったその女の子が、なんと応援団に立候補してくれたんです。それから1ヶ月間、いつもの彼女らしく、本当に頑張って練習していました。



運動会当日。



彼女のお母さんに会うと、ピカピカの一眼レフカメラを首から下げていたんです。



聞くと「娘の晴れ舞台を撮ってやろうかと思いまして」と。



お母さんは、娘さんが運動会で活躍する姿を見られるなんて想像してなかったのかもしれない。それが自ら立候補して、頑張って、晴れ姿を見せてくれることになるなんて、本当に嬉しかったんだと思うんです。私は校舎の裏に行って、一人で泣いてしまいました。



教師として、子どものいいところを見つけ、とにかく褒めて、自信をつけてあげる。それを継続していけば、親御さんの見方もきっと変わる。そんなことを学ばせてもらいました。

子育てで悩むことはあまりない

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今、私は二男一女の父親でもあるのですが、子育てをしていて悩んでいることって、実はそこまでないんですよ。これじゃ記事にならないですかね、すみません(笑)。



それは、子どもたちに対して、こうでなくては困るという概念があまりないからかもしれない。



ただ、親として、子どもたちがどんな突拍子もない道に進みたいと言い出したり、「普通」という枠からはみ出るようなことがあったりしても、「それもいいんじゃない」と肯定してあげられるよう、親としての準備やトレーニングは常にしておきたいと思っています。

個性が真っ直ぐ伸びていくのを、親は邪魔しないこと

子育てをしていて痛感するのは、子どもは生まれながらに個性を持っているということです。長男と次男、「それぞれこういうふうに育てよう」なんて考えていないのに、結果的に性格が正反対ですからね。個性は伸びる。けれど、思い通りに伸ばすことはできないと思います。



だから、その子が生まれ持った個性で、そのまま真っ直ぐ伸びていくのを、親はなるべく邪魔しないであげたいなと思っています。



もしも、お子さんの個性が見つけられなかったら、まずは他の子との「違い」をいっぱい探してみてください。違いをたくさん見出して、それをどう強みにしていけるのかをお子さんと一緒に考えていってほしいのです。



たとえその違いがマイナスに思えることであっても強みにできるかもしれないし、例えマイナスでもそれを矯正してばかりいるよりは、良い所を伸ばすほうに労力を使ったほうがよっぽどいいですから。



「障害は個性」と言われるけど、私は全てにおいてそうとは思っていません。私にとっての障害とは、最初はただの違いでしかなかった。でも、その違いを認め、受け入れ、「他人と比べてこんな違いのある私には、いったい何ができるだろう」と考えた時、やっとそれを個性として捉えられるようになったのだと思います。

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(乙武洋匡 プロフィール)



1976年、東京都生まれ。大学在学中に出版した『五体不満足』(講談社)がベストセラーに。卒業後はスポーツライターとして活躍。その後、東京都新宿区教育委員会非常勤職員「子どもの生き方パートナー」、杉並区立杉並第四小学校教諭を歴任、教育への造詣を深める。都内で、地域との結びつきを重視する「まちの保育園」の運営に携わるほか、2013年2月には東京都教育委員に就任、2014年4月には地域密着を目指すゴミ拾いNPO「グリーンバード新宿」を立ち上げ、代表に就任。2015年4月より政策研究大学院大学の修士課程にて公共政策を学ぶ。主な著書『自分を愛する力』(講談社現代新書)、『ありがとう3組』(講談社)、『だから、僕は学校へ行く!』(講談社文庫)、『オトことば。』(文藝春秋)、『オトタケ先生の3つの授業』(講談社)、『だからこそできること』(武田双雲氏との共著、主婦の友社)ほか。二男一女の父。

(取材・文: 山本初美 / 写真:奈良英雄)

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[Conobie編集部]

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