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え…お墓参りがこんなに短時間!?今のスタイルが大好きで、どこか不安な私の心中

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お盆と言えばお墓参りですね。
私の実家はお墓参りがものすごく長かったです。



私の実家は北陸の半島で、一年の半分くらいは鉛色の分厚い雲が空を覆っている。

冬が厳しいせいなのか、半島という閉鎖的な土地のせいなのか、北陸の人たちは「真面目」と形容されることが多いように思う。

どこの家にもどかんと大きくてキンキラのお仏壇があって、多くの家が毎朝水を替え、炊き立てのご飯をお供えする。

そういうものとして育った。

大きくて豪奢なお仏壇に、子どもたちが手を合わせているCMが週末のたびに何度も流れたものだった。

お仏壇屋のCMは他にもいくらかあったけれど、他県で暮らすようになってからからは一度も見たことがない。

北陸の人たちにとって御先祖をまつるというのは重要な意味を持っているらしい。

生まれ育つ中で、そう思うようになった。


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祖母はその中でも群を抜いた信仰心の厚さだった。

真面目な北陸人の”ご先祖を大切にするスピリット”に、生来の頑張り屋さんが加わって、とにかくご先祖様、神仏すべて決して粗末にすまいという気概のようなものがあった。

毎月一日には近所の神社の境内を掃除しに行っていたし、神棚や仏壇には日付が変わって一番の水を供えていた。

日付が変わる前に寝るときは、夜更かしをしている私たち姉妹に

「0時を過ぎたら水を使う前に必ずお水を汲んでおくように」

と言い残して床に就いた。

当然、檀家になっているお寺だけでなく市内あちこちの寺へ行っては手を合わせていた。


そんなふうだったから、お盆のお墓参りなんてまたの名を「情熱」と呼んでもいいほど気合が入っていた。

祖母にとっていうなれば一年で一番の大イベントだったから、親族一同誰も彼女に抗えなかった。

どれだけ暑くても、伯母たちや従弟がみんな集う日の午前にそれは行われた。

車3台にみんなで乗り込んで墓地へ向かう。

手早く墓の花瓶(8本)を回収して、古い花を捨て、ひとりが花瓶を洗っている間に、ひとりは花瓶に新しい水を入れ、ひとりはそれを墓地へ運ぶ。

流れるように。

墓地では墓石を拭きあげる人と、墓周りを掃く人がいる。

ろうそくとお線香の着火が終わったらいよいよ念仏が始まる。

墓の前にはホームセンターで買ったバスマット。

祖母がそこに座るのだ。

傍らには日傘をさす者が一人つく。

祖母の念仏は1ターンが極端に長い。

しかも4つある墓すべてでその1ターンをやる。つまり全部で4ターン。

長い。長いし暑い。


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そんなふうに育った私は大人になって、太平洋側の男の人と結婚することになった。

文化の違いのようなものはたくさんあったけれど、私が真っ先に度肝を抜かれたのがお墓参りだった。

我が家にとって墓参りとは儀式であり、少しの緊張感であり、私にとってはまあまあの苦行だった。

墓とは背筋を正して向かう場所だ。

が、義父と夫と初めて訪れたお墓参りの所要時間およそ5分。

念仏に要した時間、わずか2秒だった。

手を合わせて「あん」と義父が言う。

続いて夫と私が「あん」と言う。

終了だった。まじの終了だった。

どうやらこれはこの地方で広く使われているお念仏の略式のようなものらしいのだけど、当然、それまで見たことも聞いたこともなく、しばらくキツネにつままれたような、茫洋とした、淡い混乱の中にいた。

お墓参りっていうのは、全校集会の校長先生のお話みたいなもので、延々と続く卒業式の来賓のご挨拶みたいなものだったはずなのに。

「さあ頑張るか」も「長いな」も「そろそろ折り返しか」も「終わりが見えてからが長いな」も全部すっ飛ばして、すべての感情を省略して、始まったと同時に終わってしまった。

あのすごく長い、誰にも有無を言わせないお墓参りしか経験したことがない私は、なんだかとんでもない罰当たりをしているような一抹の不安を感じたりもしたのだけれど、なんだかそれはある種の解放感だった。

こんなに朗らかで、おおらかなお墓参りがあるなんて。


そう言えば、北陸にある母方の実家でのお墓参りで従弟が派手に転倒したことがあった。

みるみる間におでこにおおきなたんこぶが膨らんで痛々しいほどだったけれど、それを見ていた親族たちは

「墓ではしゃいだからバチがあたった」

と口々に言った。

「ご先祖って厳しいんだな」と子ども心に思ったのを覚えている。

その20年ほど後、私は夫の実家の墓地へスケボーで乗り入れる姪っ子を見ることになるが、姪っ子は親族から「上手やな!」ともてはやされていた。

こちらはきっとご先祖もおおらかに違いない。

姪っ子にバチは今のところあたっていない。


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この記事を書いた人
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ハネ サエ.

成分のほとんどは3児のおかあさん。
おかあさん以外のときは取材をしたりエッセイを書いたりしています。

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