元テレビ局のアナウンサーで、NHKの「すくすく子育て」の司会も務めた天野ひかりさんによる連載です。
今まで5万人以上から相談を受けてきた親子コミュニケーションのプロが、実際によく相談される悩みをどうやったら解決できるか、自己肯定感を育てる会話のコツをお話します。
朝の忙しい時間に、なかなか支度をしてくれないとイライラしてしまいますね。
とくに子どもの着替えは、時間がかかります。
まだうまく着替えられないのに、「自分で着る!」と言い張る日もあれば、「やってえ〜」と甘える日もあって、親としては、どうすれば子どもが自分で着替えができるようになるのか、悩むと思います。
このNGマンガのように子どもが「自分で着る!」と言ったことをどこまで信じて任せればいいのかと、悩むお母さんお父さんが多いですね。
自分で着替えができるようになってほしいので、甘えてきた時に手伝ったほうがいいのか?それともやらせるべきか?悩みますね。
親は、「着替えを100%手伝う」か「自分で100%やらせるか」の二者択一になりがちです。
大切なのは、着替えができるかどうかよりも、「自分で着替えができた!」と本人が思うことです。
ですからポイントは、子どもの邪魔をしないようにサポートすることなのです。
OKマンガを見て、「結局、親が手伝ってるじゃん」と思うかもしれません。
でもNGとOKには大きな違いがあるのです。
それは、子どもが「自分でできた」と思えているかどうか。
子ども自身が、自分はできたと思うことで、自己肯定感が育ち、これから1人でもっとできるようになっていきます。
「ちょっと遠回りでは?」と思ったあなた。
子どもが着替えに失敗して親が直すよりも、かなり時短になりますよ。
なによりすごいのは、イライラせずに家族みんなが自分はすごい!と思って1日をスタートできること。
怒らずに済むので、精神的にもラクになります。
年齢的にも成長して、もう1人で着替えられるはずなのに、「手伝って」と甘えられたらどうすべき?というご相談も多いですね。
私の答えは「どうぞ手伝ってあげてください」です。
きっとお子さんの中で何か理由があって、甘えたい時なのだと思います。
その甘えに親が応えてくれたと思うことで元気を取り戻し、自分でできるようになりますよ。
自分で服を選ぶおしゃまさんになって、親としてはあり得ない上下の組み合わせを「着たい!」と主張した時、困ります……という相談も受けます(笑)
お子さんのその主張、認めてあげていいと思います。
でも「すごいオシャレな組み合わせね」と思ってもいないことを言って、ほめる必要はないと思います。
「へえ、自分で選ぶなんてすごいね」ぐらいでいいと思いますよ。
家にある服なので、そんなとんでもないものもないと思いますし、天才は一般人とは違う発想から生まれるものだから……と楽しめるぐらいがちょうどいいですね。
寒い時期に薄着にしたがったり、暑い時期にコートを着たがったりした時も同様です。
「その格好では寒いよ」と親が正論を言っても進展はありません。
子どもが自分で納得する過程が大事なので、「おお、それで出かけてみようか」と出かけてみてください。
玄関の外に行くだけで満足する場合がほとんどです。
写真でも撮っておけば、笑い話にもなりますよ。
こんなふうに自分で納得したほうが、無理にやめさせて泣かせてしまうより、結果早いし、自己肯定感も育ちます。
なかなか着替えが進まない時は、お子さんが着たくなるような工夫をしてみるのもオススメです。
ママ好みの服ばかりでなく、子どもの好きなキャラクターや絵柄を一緒に選んだり、はめやすい大きめのボタンのついた服にしたり、左右合わせるとクマの顔になるような靴下にしてみるなど、着替えが楽しい時間になるといいですね。
それでもなかなか着替えが進まない場合は、お母さんお父さんの着替えを相談してみると効果があります。
親「ママのこのシャツには、どっちのスカートがいいと思う?」
子「こっち!」
親「ありがとう! あなたも一緒にお着替えしよう!」
子「うん!」
子どもは、親と一緒に同じことをするのが大好きですが、親の役に立つことはもっと好きなのです。
嬉しくなってやる気が出ます。さっさと着替えをするようになるでしょう。
■今日のコミュポイント■
「手伝うか手伝わない(全か無)かよりも、さりげなくサポート(一緒に)しよう」
(マンガ:とげとげ。)
■プロフィール■
天野ひかり http://amanohikari.com
上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。NHK「すくすく子育て」キャスターの経験を生かし、親子コミュニケーションアドバイザーとして 講演や企業セミナー講師を務める。子どもの自己肯定感を育てるため自身で立ち上げた「NPO法人親子コミュニケーションラボ」代表理事、一般社団 法人グローバルキッズアカデミー主席研究員(https://www.gkids.co.jp/)。主な著書に『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)などがある。