元テレビ局のアナウンサーで、NHKの「すくすく子育て」の司会も務めた天野ひかりさんによる連載です。
今まで5万人以上から相談を受けてきた親子コミュニケーションのプロが、実際によく相談されるコミュニケーションの悩みを、どうやったら解決できるか、自己肯定感を育てる会話のコツをお話します。
今日は子どものドリル学習がテーマです。
幼児用の知育ドリルや、通信教育のドリルをやらせているご家庭も多いようです。
子どもに「みんなやってるから、やる?」と聞いたら「やりたい!」と言うから始めたのに、結局全然やりません。やめさせた方がいいのでしょうか?と悩むお母さんお父さん。
こんな時はどうしたらいいのか考えてみましょう。
そもそも「我が家はドリルやらせてないけど、始めたほうがいいの?」と悩む方もいるかもしれませんが、やらせる必要はないと思います。
やらせても、やらせなくても、実はあまり関係ありません。
つまり、やらせるドリルには意味がないのです。
「子どもがやりたいって言ったのに?」と思われるかもしれませんが、子どもがドリルの中身を理解して「やりたい」と言って、初めて意味が生まれます。
ですから無理に始める必要はありませんし、続かないならやめていいと思いますよ。
そもそも子どもは生まれたときから、知的好奇心にあふれています。
知らないことを知りたい!
次はどうなるのか見てみたい!
自分ができるのか挑戦したい!
そんなふうに思える力を、どれだけ伸ばしてあげられるか。
それがその後の人生に影響します。
絶対にやってはいけないのは、親がドリルを選び、やる時間を決め、分量を決めてやらせること。
これは子どもの知的好奇心を削ぐことにつながります。
そんなことにならないために、まずは、お子さんが何に興味を持っているのか、日頃からよく観察しましょう。
・図形が好き
・鉛筆で書くことが好き
・カラフルな色が好き
・質感にこだわりがある
・タブレットが好き
・音に敏感
・キャラクターが好き
などなど。
その上で、本屋さんやネット、図書館でいろいろ見ながら、子どもが興味を持ったものを選んでみてください。
このOKマンガのように一緒に話して、興味を引き出しながら決められるといいですね。
紙のドリルには興味がなくても、タブレットならやりたがる子もいます。
子どもが何に興味を持っているのかがわかるのは、親だけです。
子どもに寄り添ってあげてくださいね。
時々、子どもが興味を持ったものではなく、親が買わせたいものに誘導している場面をよく見かけます。
それは子どもが選んだとは言えません。
「自分で決めて自分でやる」という自主性を奪うことになるので、やめましょう。
時には、具体的なものを用意すると学びが深まります。
足し算や割り算などは、机上で計算するだけではなく、クッキーやピザを家族で分けたり、ジュースをメモリのついたグラスに分けたりしながら、興味を育んでみましょう。
とても盛り上がりますし、幼いうちに体験したことが、後の学びの深さに影響します。
ただ、子どもが選んだからといって、続くわけでもないのが悲しいところ(笑)
せっかく買ったんだから、やりきって欲しい!と思う親心もわかります。
そんな時は、親がドリルを解いてみるのをおすすめします。
(子どものドリル問題を解きながら)
親「お! この問題はよくできてるね。ママには難しいな〜」
子「え! なになに? 難しい?」
親「ママはこんな解き方をしてみたけど、どうかな?」
子「いいんじゃない? あってるよ」
親「正解? よかった」
子「でも、これ、こうやったらいいんだよ」
親「なるほど、ママにも教えて!」
子「いいよ、じゃあ、次の問題をやるよ」
親が楽しそうに問題に取り組む姿を見せると、子どもは自分もやりたくなります。
ドリル(に限らずですが)は、やらされるものではなく、楽しく自分の力を試すものとして、小さいうちから興味を持たせられるといいですね。
■今日のコミュポイント■
「やらせてできるようにする(習慣)より、一緒にやって(興味)を持たせよう」
(マンガ:とげとげ。)
■プロフィール■
天野ひかり http://amanohikari.com
上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。NHK「すくすく子育て」キャスターの経験を生かし、親子コミュニケーションアドバイザーとして 講演や企業セミナー講師を務める。子どもの自己肯定感を育てるため自身で立ち上げた「NPO法人親子コミュニケーションラボ」代表理事、一般社団 法人グローバルキッズアカデミー主席研究員(https://www.gkids.co.jp/)。主な著書に『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)などがある。