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子どものアイデンティティを尊重する、こたえのない学校の探究教育

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「どうすれば幸せになれるの?」「成功って何?」──。答えに詰まってしまいそうな正解のない問いが多いこの社会。そんな中でも「子どもたちに自分の道を切り拓いて欲しい」と藤原さとさんが仲間と立ち上げた一般社団法人こたえのない学校。探究学習とキャリア教育を組み合わせたプログラムで「自分をよく知り、社会や世界をよく見て、新しい価値を生み出す」ための場を提供しています。

子どものころから「自分を知る」ことの大切さ

「子どものうちから、自分は何が好きで、どんなことが得意かを知っておくことはとても大切。大人になったとき、好きなことを仕事にしている人は強いし、長く続けられると思います」



そう語るのは、一般社団法人こたえのない学校の代表、藤原さとさん。藤原さんは、子どものころから成績が良く、順調にキャリアを積み重ねてきました。しかし、流産を重ね、大企業を退職。出産後に新しい仕事を始めると保育園の送迎などの時間的制約があるために、思うようなパフォーマンスが出せない中での会社の評価に戸惑います。そんなある日ふと、「わたしって何のために頑張っているんだったっけ?」と違和感を抱いたそうです。



「成績だけで評価されることだけをアイデンティティとしていると、それが崩れた時、一体何のために生きているのか分からなくなると危機感を抱きました」



さらに、藤原さんの中でこんな疑問が沸いたそうです。



「社会に出ると、答えのない中で解決策を見出すことの繰り返しなのに、学校教育ではなぜ答えのあるものばかりを解かせているのだろう。教育は社会に出るための準備のはず」



そんな疑問を保育園仲間の林正愛さんに話してみると、林さんも「生きるために必要なスキルを子ども時代から身に付けられたらいい」と考えていたとのこと。そこで二人は、自分たちの身近にいる、“面白いことをしている大人”たちに教壇に立ってもらい、大人も子どもも楽しめるプログラムを提供しようと、2014年、一般社団法人こたえのない学校を立ち上げることにしました。

講師は、社会の第一線で活躍する専門家たち

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「こたえのない学校」の理念は、自分の「好き」や「得意」を知り、世の中のニーズを「聴き」、自分が提供できる価値を見つける、そんな世界をつくること。そのため、次の3つの力をつけることにフォーカスしたプログラムを展開しています。



1.「自分を良く知り、社会を良く知る力」

2.「価値を生み出す力」

3.「困難にもめげずに挑戦し続ける力」



プログラムの大きな特徴は、社会の第一線で活躍する専門家たちが講師(ポラリスナビゲーター)となって、子どもたちとワークショップを通してつながりあうこと。講師が普段仕事でいちばん大切にしていることを軸にしたプログラムの中で、子どもたちは一緒に何かを作りながら思考、議論する時間を過ごします。



「楽しそうに仕事をしている大人たちと一緒にものを考えて、その人たちから何かを学んでもらえたらいいなあと思っています」



メインプログラムの「ポラリスプログラム」は、国際バカロレア※で推奨されている探究型学習の考え方にキャリア教育を組み合わせたもの。例えば、東北大学大学院で目の機能を中心に人口機能の研究をしている松田悠馬さんを講師に迎えた「一緒に目の不思議を実験しよう!」では、「ものの見方は一つではない!」を探究テーマとして設定、ゲームやだまし絵を通して、日ごろ考えることのない「目」の機能について考えました。



また、グーグル株式会社を訪問した際は、「情報の調べ方は過去も未来も変わり続けている」をテーマに、どのような未来の検索があったらよいかについて考えました。このように子どもたちは、探究テーマについて深く考えると同時に、第一線で働く大人の姿から「働く」ということを考えることができます。

「何でも自由に言っていいんだよ」という雰囲気をつくる

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ワークショップの中身を深めるためのポイントが、5人前後のグループを組むこと。これにより、一人ひとりの発言の仕方、役割の持ち方をよく見ることができます。グループにもファシリテーターがつき、「どんな答えにも正解はない。だから自分が考える意見を自信を持って言ってOK」といった雰囲気づくりをしていきます。



「最初は、大人が喜びそうな正解を予想して話す子もいるのですが、その場合は過度にほめることはしません。そうして進めていくと、徐々にやんちゃな発言も含めて、いろんな意見が出てくるようになる。



すると、『あ、こんなことを言ってもいいんだ』と子どもも思うようになるんですね。そこで初めて本当の自分の考えを発言できるようになるんです。しっかりとその様子を見ていたファシリテーターが、その考えを受け入れる。現場ではそういったやりとりを大切にしています」



子どもたちが議論する様子を見守りながら、一人ひとりの特徴、良いところを見つけて保護者に伝えるのもファシリテーションの役目です。



「ポラリスこどもビジネススクールは基本3回連続で参加ですが、一回目は議論が停滞するグループもあります。慣れない環境の中、自分の発言に自信が持てないからです。でも、二回目には慣れてくる。



そうすると、最初は自分の意見にしか興味がなかった子も、数回目には周りの意見も聴けるようになって議論の幅を広げようとするなど、違う動きが見られるようになります。逆に、一回目は積極的に話せなかった子ががらりと変わって意見を伝え始めたり。こうした成長は積極的に保護者に伝えるようにしています」



ワークショップの最後には、グループごとにプレゼンテーションをするのもこだわり。自分の意見を仲間の前で発表することは場数を踏めば上達する。子どもたちは、自然と声が大きくなったり、考えをまとめるのが上手になったりと、自分で効果を実感できるようになります。



「毎回、子どもたちは、大人が指導しなくても自然と上手な子を観察し、真似をしながら自分のものにしていくんです。こういった一つひとつの経験から、コミュニケーション力や表現力など何か将来に役立つものを身につけてくれるとうれしいですね」

子どもたちが大人になった時のために

ワークショップでは、保護者アンケートの他、ママやパパからも直接感想をもらっています。



「学校の授業では考える時間がないけれど、ここではとことん考える機会を持たせてくれてうれしい、と言ってもらえた時は感無量でした。わたしたちの思いが通じたようで」



そんな藤原さんは7歳の女の子を育てているママでもあります。では、ご自身の子育てでは、お子さんが自分を知るために、また藤原さんがお子さんの「好き」を知るためにどんな心がけをしているのでしょうか。



「子どもと一緒にぼんやりする時間をあえてつくっています。そこで何をするか観察をしていますね。『○○は楽しい?』と声がけをすると、『わたしは○○が好き』と声に出すんです。反対に、「ううん、○○は嫌い」と答えたり。そのやりとりが楽しいですね。自分が好きだと思って主体的に取り組んでいることに関しては、手伝って本人ができることを広げてあげるようにしています。『自分はこれが好き』と繰り返し認識していくことで、自信をもってできるようになると思うんです」



「好きなことがない子はいません。これからも子どもたちが自分自身を知り、好きなことを知るきっかけを、丁寧につくっていきたいです」と藤原さん。



「子どもはどんな小さなネタでも楽しいんです。花や石もテーマになります。だから、家庭でも一緒にこたえのない世界への問いかけを楽しんでほしいですね。わたしは、子どもと一緒に成長したいという思いがあります。また、いろんな人と協力しながら、価値を得ながら仕事するプロセスが好き。ある領域でうまくいかなくても、ほかで応用できますし。自分のことをよく知る。子どもも大人も、これに尽きるなあと思っています」

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遊び・教育 教育 個性と自己肯定感 個性・多様性

この記事を書いた人

[Conobie編集部]

Conobie編集部連載では、「個性がのびる、子どもがのびる」をテーマに、スタッフが厳選したコラム・情報をお伝えいたします。それぞれの家族が、「我が家はどうする...

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