元テレビ局のアナウンサーで、NHKの「すくすく子育て」の司会も務めた天野ひかりさんによる連載です。
今まで5万人以上から相談を受けてきた親子コミュニケーションのプロが、実際によく相談されるコミュニケーションの悩みを、どうやったら解決できるか、自己肯定感を育てる会話のコツをお話します。
「自らすすんで習い事の練習をする子にするには、どうしたらいいでしょうか」
とてもよく聞かれる質問です。
習い事の練習もできないと、小学生になってからも「宿題しなさい!」と言い続けなくていけないのではないか?と心配になりますよね。
きょうから言葉掛けを変えて、自分からしたい!と思う気持ちを今のうちに育むことが大切です。
「練習しなさい!」と言い続けていませんか?
残念ながらこれは逆効果かもしれません。
言われないとやらない子になってしまう可能性があるからです。
「しなさい!」と言ってやらせるのではなく、大事なのは「自分でいつ始めるのか」を子どもが決めること。
つまり主体的に取り組めるようにすることが大切です。
OKマンガを見てみましょう。
小学校低学年くらいまではまだ時間の感覚はないので、「1時間後に始める」などの約束は意味がありません。
遊んだあとに始める。
おやつのあとに始める。
夕食のあとに始める。
など順番を考えるくらいから始めましょう。
まずは、子どもが「自分で決めた!」と思うことがポイントです。
それでもゲームをだらだらとやっている場合は、
「ゲーム、どんな調子? ママはもうすぐ夕食準備終わりそうだけど、どう?」
と子どものやる気を後押しするような言葉をかけましょう。
「ゲーム終わったら、ピアノやるって自分で決めたんでしょ?」
といった嫌味は言わないように。
子どものやる気を損ねます。
ちゃんとやったら、ご褒美が待っていると感じさせるのもいい方法ですね。
先に練習をしたら、ゆっくりケーキが食べられる。
YouTubeが見られるなどですね。
時々「練習しないとYouTube見せないよ」と交換条件に使う場合がありますが、これは、NGです。
イヤイヤ練習しても仕方ありません。
あくまで、自分でやりたい気持ちを育てることが目的であって、練習させることが目的ではないからです。
「ご褒美目的で、練習をするようになるのではないか」と心配する方もいますが、大丈夫。
子どもは親が思うよりずっと賢いのです。
そのうち、もっと嬉しいごほうび、つまり練習することの本当の意味を理解していきます。
例えば練習すると、
・先生やお母さんお父さんにほめられる
・叱られない
・ピアノ(この場合)が上手に弾けて楽しくなる
・発表会や試合で結果を出せる
・自分はやればできると自信を持つ
子どもにとってのご褒美は、ケーキやゲームではなく、その先にあるもの。
「練習をする目的を考える習慣ができていくこと」が、ご褒美です。
これができれば、小学校に上がっても心配いりません。
自分で考えてやる子になるからです。
■今日のコミュポイント■
「やらせる(受け身)ではなく、子どもが自分でタイミングを決める(自発的)」
(マンガ:とげとげ。)
■プロフィール■
天野ひかり http://amanohikari.com
上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。NHK「すくすく子育て」キャスターの経験を生かし、親子コミュニケーションアドバイザーとして 講演や企業セミナー講師を務める。子どもの自己肯定感を育てるため自身で立ち上げた「NPO法人親子コミュニケーションラボ」代表理事、一般社団 法人グローバルキッズアカデミー主席研究員(https://www.gkids.co.jp/)。主な著書に『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)などがある。