元テレビ局のアナウンサーで、NHKの「すくすく子育て」の司会も務めた天野ひかりさんによる連載です。
今まで5万人以上から相談を受けてきた親子コミュニケーションのプロが、実際によく相談されるコミュニケーションの悩みを、どうやったら解決できるか、自己肯定感を育てる会話のコツをお話します。
お母さんお父さんからのご相談で1番多いのが、ズバリ「片付け」です。
「子どもがお片付けできません! どうしたら片付けできるようになりますか」
コロナ禍によりお家で過ごす時間が増えたこともあり、部屋のこと、気になりますね。
おもちゃも絵本もぜーんぶ出しっぱなしで遊び続け、そこに取り込んだままの洗濯物も加わって、お母さんお父さんのイライラも募ります。
こんな感じで過ごしているとしたら、いつまでたっても自分から片付けができない可能性があります。
そもそも子どもは、片付けのやり方を知りません。
だからお母さんお父さんが一緒に片付けて、お手本を見せることが大切です。
子どもが出したおもちゃは、子どもが自分で片付けるべき。
こんなふうに考えるお母さんお父さんもいらっしゃいます。
ある意味、正論です。
でもそれは、片付けの意味がわかるようになった後の話。
なぜなら、「片付けたい」のは親だけで、できれば子どもは遊びかけのおもちゃを「出しっぱなしにしたい」からです。
「ブロックは、この箱に入れるね」
「本は棚に並べようか」
「パズルはなくならないように、数を数えてから、しまおうね」
こんなふうに一緒に片付けをしていくと、じつはたくさんのことを学べます。
・おもちゃを同じ種類に分けること
・数えること
・本を1巻、2巻と順番に並べること
・手触りや色の違いを確認すること
こんな学びを得られるのです。
小学校に上がる前に、こんなふうに楽しく体験しておくことが大切。
国語や算数、理科、社会の基礎になるからです。机の上でプリントの空欄を埋めることだけが学びではありません。
だからと言って、やらせたり、ダメ出ししては逆効果です。
成長に合わせて、楽しく、知的好奇心をくすぐるような言葉かけをすることがオススメです。
例えば、
「お母さんとどっちが早くたくさんのボールを箱に戻せるのか競争しよう!」
「このぬいぐるみは、どこに戻すのか教えてくれる?」
などと遊びの要素を入れたり、教えを請うと、子どもも得意になって片付けをしてくれます。
片付け方を1つ1つ覚えることで、だんだん一人で片付けられるようになります。
そして、片付けたお部屋を一緒に確認しましょう。
「部屋が綺麗に片付くと気持ちいいね」
「寝転がったり、ダンスできるね」
部屋をこの状態にすると、また新しい遊びができるんだ! ということを言葉でしっかり伝えることがポイントです。
子ども自身が、片付けるといいことがある(この場合は、片付いた部屋ではダンスができる)ことを実感するのが何より大切です。
最後に、約束は絶対に守ってくださいね。
この場合は「ダンスをすること」です。
片付けさせるために1回でも約束を破ると、せっかくの積み重ねが台無し! これだけは注意です。
このステップの繰り返しで、片付けたお部屋の気持ち良さがわかるようになり、それが、片付ける動機になります。
でも自分から率先してどんどん片付けるようになるのは、まだ先の話。
でも大丈夫。
実は、モデルルームのように片付いたお部屋よりも、昨日遊んだおもちゃがそのままになっている方が、子どもの前頭葉が活発になって遊びに工夫が生まれるようになると言われています。
子どもが小さいうちは、「片付けなさい!」とあまり怒る必要はなさそうですよ。
■今日のコミュポイント■
「自分で片付けさせる(正論)ではなく、片付け方(方法)を一緒に学ぼう」
(マンガ:とげとげ。)
■プロフィール■
天野ひかり http://amanohikari.com
上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。NHK「すくすく子育て」キャスターの経験を生かし、親子コミュニケーションアドバイザーとして 講演や企業セミナー講師を務める。子どもの自己肯定感を育てるため自身で立ち上げた「NPO法人親子コミュニケーションラボ」代表理事、一般社団 法人グローバルキッズアカデミー主席研究員(https://www.gkids.co.jp/)。主な著書に『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)などがある。