元テレビ局のアナウンサーで、NHKの「すくすく子育て」の司会も務めた天野ひかりさんによる連載です。
今まで5万人以上から相談を受けてきた親子コミュニケーションのプロが、実際によく相談されるコミュニケーションの悩みを、どうやったら解決できるか、自己肯定感を育てる会話のコツをお話します。
「夜なかなか寝てくれない!」
そう悩むお母さん、お父さんから、どうしたらいいのかよく質問されます。
ちなみにきのうは、お子さんは何時に寝ましたか?
未就学児の睡眠時間は11〜13時間が理想といわれていますが、どうでしょう?
たしかに、お子さんにたっぷりの睡眠を願うことは大切なことです。
だからみなさん、寝かせるために毎日大変な努力をされていると思います。
でも寝かしつけに疲れて、親がストレスフルになっていたら逆効果です。
効果的な言葉かけを知って、きょうから楽になりましょう!
よくある光景ですね。
最初はやさしく「寝なさい」と言っているのに、最後には怒って言うことを聞かせてしまう。
あとで「怒ってしまった……」と自己嫌悪に陥いることはわかっているのに、また次の日もこの繰り返し…。
そもそもこのマンガ、何がNGなのでしょうか。
じつは、「怒ったこと」ではないんです。
答えは「寝なさい!」と指示しているところ。
指示されると子どもは、自分の意思ではなく、相手の顔色をうかがうようになり、指示待ち人間になる可能性があります。
これは大人も同じ。
仕事などで「あれをやれ」「これをやれ」と言われると思考停止して、指示されるまで待ってればいいやとなるはずです。
それでは次にOKストーリーを見てみましょう。
先程の「寝なさい」という指示の言葉には、「いや」か「はい」の2択しかありませんでしたよね?
でもOKマンガはどうでしょう。
「一緒に寝ようか」という提案の表現になっていますよね?
ここがポイントです。
この表現は子ども自身が「自分はどうしたいのか」を考える余裕につながっていきます。
もちろん、「それでも寝ないんですけど……」という場合もあるはず。
でも心配しないでください。
子ども自身が判断して、自分がやりたいほうを選んだ結果なら大丈夫。
自分で考えて行動できる基礎をつくっている証拠です。
気楽に聞こえるかもしれませんが、いずれ自分から寝る子に育つので心配ありませんよ。
怒って寝かすことよりも、子どもの興味をひく物語作りのほうにエネルギーに使いましょ!
つまり、どう言ったら、子どもはお布団に入りたいと思うか?を軸に考えてみてくださいね。
入眠には30分くらいゆったりと時間をとって、子どもと今日1日のことや 嬉しかったことをシェアしてみてください。
子どもに「どうだった?」と聞くばかりではなく
「ママはこんな一日だった」
「お父さんは今日、こんなことを言われたんだ」
と自分の話をすることも大切です。
親の子どものころの失敗談を聞くのも、子どもは大好物。
スキンシップを取りながら、親子の絆を深める時間にしてしまいましょう。
子どもはママやパパと同じことを一緒にすることが大好きなんです。
一緒にお布団に入って眠るまでの30分間は、心を安定させて明日への意欲を高めるためにも、とても大切なコミュニケーションの時間です。
そんな時間取れない……という方は、「時々」でOK。
30分という時間にこだわらなくても、今日は子どもとゆったり過ごそうとリラックスするだけで、子どもはコテンと寝るものです。
洗い物や洗濯ものなど家事が気になって寝られないという方は、最新の電化製品を導入したり、パートナーと協力したりして、子どもの睡眠と心の安定を守れるといいですね。
冒頭でも記したとおり、未就学児の理想の睡眠時間は11〜13時間。
睡眠中に、とても大切な2つのホルモンが分泌されます。
1つは「成長ホルモン」。
身長や脳を成長させてくれます。
もう1つは「メラトニン」。
アンチエイジング、つまり性的成熟を抑制してくれます。
この時期に、たっぷり分泌されるように、お部屋を暗くして良質な睡眠を子どもにプレゼントできるといいですね。
■まとめ■
今日のコミュポイント
「◯◯しなさい!(指示)ではなく、一緒に◯◯しよう!(提案)」
(マンガ:とげとげ。)
■プロフィール■
天野ひかり
上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。NHK「すくすく子育て」キャスターの経験を生かし、親子コミュニケーションアドバイザーとして講演や企業セミナー講師を務める。子どもの自己肯定感を育てるため自身で立ち上げた「NPO法人親子コミュニケーションラボ」代表理事、一般社団法人グローバルキッズアカデミー主席研究員。主な著書に『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)や『賢い子を育てる 夫婦の会話』(あさ出版)などがある。