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不格好なスヌードと焦げたケーキ。それでも笑顔で受け取ってくれた人

不格好なスヌードと焦げたケーキ。それでも笑顔で受け取ってくれた人のタイトル画像

彼の誕生日に作ったスヌードはボロボロ、張り切って焼いたケーキも黒焦げ。それでも笑顔で受け取ってくれたあなたは、今、わたしの隣にいます。『心に残った贈り物』をテーマに開催された、<Conobie×ネスレ日本 投稿コンテスト>。最優秀作品賞、とくらじゅんさんの作品です。

PR Conobie×ネスレ日本 投稿コンテスト

本作品は、『心に残った贈り物』をテーマに開催された、<Conobie×ネスレ日本 投稿コンテスト>において最優秀作品賞受賞作品です。

本作品のエピソードは、人気マンガ家とげとげ。さん作画のネスレアミューズ連載『まごころが見つかる雑貨店』9話に採用!

マンガはこちらから!

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学生時代の夫は、色々なことに無頓着すぎる人だった。

上京してから一人暮らししているアパートのワンルームは、ペットボトルと空き缶で足の踏み場もないほどだったし、いつも着ているTシャツは、襟が伸び切った中学生の頃からの古株だった。


交際を始めた年の冬、出会ってから初めての夫の誕生日目前。

当日は、夫がアルバイトに行っている間にワンルームでケーキを焼き、手編みのマフラーを渡すつもりだった。

手に取った時の反応に胸を躍らせながら毛糸を選んで、ひと月前から編み始めたマフラー。

不器用な私は、前日の夜、やっと編みあがるかという時に気が付いた。

マフラーにしては長さが全く足りないのだ。

どうしたものか考え、私は結局マフラーをスヌードにリメイクしてしまうことにした。

何とか形にはなったが、網目も不揃いでひどく不格好なスヌードが出来上がった。


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翌朝、私はせっせとケーキの材料とラッピング材を買い込み、言い訳めいた高級ブランドのネクタイを買って夫の住むアパートに向かった。

夫は既に家を出ていたので、合い鍵で部屋に入る。

散らかった部屋を片付けながら、あまりに不格好で、幅の太い雑巾のようなスヌードに思いを馳せた。

私はこれを今から渡すのだろうか。

レシピ本を開きながらケーキを焼く。頭の片隅にはずっとスヌードがあった。

オーブンを閉め、焼き上がりまでに毛糸の塊にラッピングをして、念のために買ったネクタイに一層丁寧なラッピングをした。

夫が帰宅する15分前、ケーキが焼きあがった。オーブンを開けると、そこにあったのは焦げたレンガのような酷い状態の「ケーキになるはずだったもの」。

私はゆっくりとオーブンの蓋を閉じ、ベッドに座りテレビをつけて呆然としていた。


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何一つ上手く用意ができなかった、という失望でいっぱいだった。

もう彼は帰ってきてしまう。

きっと初めての誕生日がこんなことになってがっかりするだろう。

その2ヶ月前、私は誕生日に夫から素敵な財布を貰っていた。

自分の誕生日がこれでは、ひどい話ではないか。

玄関のドアがガチャリと音を立てて開き、夫は遂に帰ってきてしまった。

私は、泣きそうになりながら、なんとか「お帰り」と言って部屋の主を迎え、夕飯の支度をした。

「誕生日、おめでとう」

そう言って、結局私はネクタイだけを差し出した。

就活中の夫は、本当に嬉しそうに「ありがとう」と言ってネクタイを眺めている。

これで良いのだ。毛糸とレンガはこのまま隠しておこう。


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2人でテレビを見ながらお菓子を食べて、一通り今日の出来事などを話し終わり、後片付けを始めようかという段になって、夫はベッドの脇に謎の包みがあることに気付いてしまった。

嗚呼、それはまずい。

「これもプレゼント?」

私が制止する間もなく、雑に包装されたスヌードを取り上げて眺めていた。

最悪だ。

「うん…まあ…」

「ありがとう」

夫は、そのボロボロの毛糸の束を首に巻いて、ブランドネクタイと同じくらい嬉しそうに礼を言った。


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「そういえば、ケーキの匂いがしたけど、もしかして焼いてくれたのかな?」

私がまさかの反応に面食らっていると、夫は更にヤバいオーブンの中をのぞいている。

そこはもっとダメだ。やめてくれ。

「何でさっき出さなかったの?食べようよ!」

夫は毛糸の束のようなスヌードを首に巻いたまま、2人でレンガのような硬さのケーキを食べる。

何だか悪くない味のような気がした。

それから2年後、私たちは結婚し、子どもも生まれた。

娘が生まれた年の冬はとても寒かったのを覚えている。


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息が白くなり始めた朝、夫は出勤前にクローゼットを探っていた。

「あった、あった」

夫が探していたのは、2年前、誕生日に渡したあのスヌードだった。

「行ってきまーす」

すやすやと眠る娘を起こさないよう、小さな声で、しかしご機嫌にスヌードを巻いて出かける夫。

無頓着だからなのか、それともこれは特別なものだからなのか。

あれから6年が経った。

今でも夫は冬になると、あのスヌードを首に巻いて出かけていくのだ。


(ライター:とくらじゅん)


『まごころが見つかる雑貨店』ネスレアミューズで連載中!

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本作は、2021年6月~7月に開催いたしました「Conobie×ネスレ日本 投稿コンテスト」にて、最優秀作品賞に選出されました!

賞品といたしまして、ネスレアミューズで連載中の『まごころが見つかる雑貨店』9話(10月12日公開)に本作のエピソードが一部採用されています。

人気マンガ家とげとげ。さんの描く、優しくもなつかしい作品世界をどうぞお楽しみください!


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