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公開 2021年02月09日   更新 2022年02月14日

ピカピカ新入生の根本には、入学準備グロッキーな親たちが埋まっている。かも?

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春、ピカピカのランドセルや新品の制服の子ども達の嬉しそうな、でも少し緊張した顔を見るのが私は昔から好きだった。
しかし知る由も無かった。
「入学準備」が数多の困難を乗り越えて初めて成し遂げられる偉業であることを。


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幼稚園への道、それは修行

入園と入学準備。

その洗礼を受けたのは、私の第1子である息子の入園準備の時。

家から近い普通の幼稚園に入れて、普通に楽しく3年間を過ごしてくれたらそれでいいと思って選んだ幼稚園だった、はずだった。

ただ私は忘れていた、この幼稚園には制服があるという事を。

制服ひとそろえ、体操服半そで長そで上下、通園カバン、上履き、靴下、フエルトの帽子と麦わら帽子と赤白帽子、とにかく着るもの一切が指定業者販売の品で、制服合わせの日に必要だと言われたものを素直に全部購入したら、制服屋さんの電卓には結構な数字が提示されていた。

買いました。


「制服のあとは名前つけやね、頑張ろうね~!」

そう言ったのは、上の子がいる先輩お母さん。

全部1人でやろうとしない方が良いよ、旦那さんと分担しないと終わらないよあんなの。

それは本当にその通りで、入園に際して用意した制服とかお道具類等、かなりの数の用品への細部に渡るお名前つけは本当に大変だった。

クレヨン1本1本、色鉛筆1本1本への記名は事前に用意しておいた氏名印刷済みのお名前シールの威力をもってもほぼ修行。

しかもこれ、名前を書くだけでは駄目なのだ、何しろ持ち主本人がまだちゃんと文字を読めない小さな子。

何という盲点。

当たり前だけど3歳児は自分の名前くらいは認識できてもお友達の名前まで読み取れる子はそう多くない。

用品の取り違えを防ぐためにも文字以外にあとひとつ、星とかクマとか何か印をつけておかなくては。

それで夜中、子どもが寝静まった時間に毎日ひたすら名前と、長男の好きな電車のマークをあらゆる物に張り付けた。

これはとても大変だったけれど、それよりも

「手提げ袋、靴袋、体操服の袋、コップ袋、エプロン袋の寸法の資料はこちらになります。
生地は、キルティング素材だと畳んでロッカーにしまう際に扱いが難しいので避けてくださいね」

入園説明会で主任の先生から説明を受けていた『恐怖の袋物』が私を待っていた。

先生は作りなさいとは言わなかった。

でも既製品を買いなさいとも言わなかった。

その行間にあるのもが怖い。

だって私は恐ろしい程不器用なのだから。

雑巾を縫うと運針がどんどん右に逸れる、ミシンを使おうにも糸が上手く通せた試しがない、いつも大体『ガッ!』という奇怪な作動音がしてミシンが止まる。

そしてこの指定品の中にある『体操服袋』というのはとても形状が特殊で、既製品にはまずない形をしている、作れという事ですね。

それでどうしたか。

実母を動員した。

母は私の母の癖にとても手先が器用で、子どもの頃は洋服なんかも良く手作りしてくれた私からすると奇跡の人。

そのハンドメイドばぁばに袋物を全部押し付けた。

お母さん、私玉止めも碌に出来ないのに無理やわこんなん、と母に電話で泣きつくと、電話の向こうで母は一言

「アンタの育て方間違えたわ…」

そう言ったものの、可愛い孫の為だと、必要な袋物をそれは可愛らしく作ってくれて、その仕上がりに長男はとてもとても喜び、私はそれをさも『自分で作りましたけど?』という顔で入園式に臨んだ。

いいんだ、入園準備の必勝法は、人海戦術だ。


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長男、小学生になる

幼稚園の入園から3年後、当たり前だけれど長男は小学校に入学する。

長男は地域の公立小学校に入学することになり、入学前の2月の今頃、入学説明会があった。

この時私は幼稚園の入園準備の経験から、また山盛りの必要品を購入してそれから名前を付け、どの程度の物を用意して、そして縫わないといけないのか、少し緊張して説明会会場の小学校に赴いたのだけれど、説明会で檀上に立った校長先生は

「手提げみたいなものと、上履きと体育館シューズが入る靴の袋と、体操服と給食エプロンとそれが入る巾着袋、あとランドセルと言うか、教科書が入る背負えるタイプの大容量のカバンをご用意ください」

あとは上履きも体操服もあと給食当番用のエプロンもその辺のスーパーなんかに売ってますからそこで買ってくださいね!といういい具合にアバウトな感じで、この地域の公立小学校には制服もないし、まるでひよこのように可愛い小学1年生の黄色い帽子は市から入学のプレゼントとしていただけると聞いて、なんだ意外に楽じゃないのと私は思った。

公立小学校という場所は、意外と「絶対こうしてください」という文言があまり使用されない所だった。

例えば体操服も

「下が紺色か黒のハーフパンツで、上が白い半そで、冬は白いトレーナーなら多少の柄は許容します、勿論既成の体操服を購入されても結構ですよ」

と先生がおっしゃるので、私なんかまだサイズアウトしてないからと1年生の1年間は幼稚園の時の体操服の園のマークの上に名前のゼッケンを張りつけたのを着せていた。

ついでに色鉛筆とクレヨンとハサミとノリも幼稚園時代の物をそのまま使用した。

ひよこ組を消して、1年1組と書いてしまえばそれでヨシ。

そして、そういう事をするご家庭はウチ以外にも結構あった。

ヨソはどうか知らないが、関西は節約と言うか始末が良い事が美徳とされる土地だ。

これなんぼで買ったと思う?という問いは高級な買い物を誇りたい時ではなくて、お得な買い物自慢の時に使われる。


少し細かい指定があるなと思ったのは、文房具の類。

下敷きは透明のもの、B5のものとA4のもの2つを用意してください。

鉛筆はまだ筆圧の弱い1年生の内はB2が適当です、書写の時に使う鉛筆はB4。

あと赤鉛筆は1本、鉛筆のキャップはつけないでください、転がして無くすし、授業中につい遊んでしまったりしますから。

消しゴムは出来るだけ白のプラスチック消しゴムで消しやすいものをお願いします。

鉛筆に結構細かい指定があるものなんだなあと感心して、私は言われるままにサイズの違う2枚の下敷きを買い、B2の鉛筆を1ダースと、書き方鉛筆と赤鉛筆をそれぞれ1本、 あとは消しゴムをひとつ用意して長男と一緒に買いに行ったブルーの筆箱に入れて持たせた。

かくして、幼稚園時代の色々も使いまわし、せいぜい算数の時間に使う『数のブロック』という10個ひとセットが2つある学習補助用品の名前つけが大変だった位で、幼稚園時代程の名前つけのあの修業的な様相も無く、息子は6歳の4月、ピカピカの1年生になった。

でも新学期が始まって数日で私は自分の手落ちに気が付いた。

筆箱の中身が全部消えている。

え?コレどうして何も無くなってるの、どこかに置いて来たの?長男にそう聞いてみると、本人曰く。

「なんか知らんけど無くなってん」

これは、子どもによると思うけどウチの息子に限っては、注意力が散漫というか、夢中になると何でも直ぐ忘れてしまうというか、とにかく物をよく無くしてしまう子で、鉛筆を教室のあちこちに置いてきているのか机の中に入れたまま帰宅しているのか、入学して授業が開始されてものの数日で筆箱の中身の全部をどこかにやって来てしまった。

鉛筆1ダースは煙の如く消え、1個しか用意の無かった消しゴムは毎度も買い直す事になり、何なら透明の下敷きも直ぐに行方をくらまして、私は細々と買い物に行く面倒さから

『入学の準備品は消耗品を余分に買っておくべきである』

そういう結論に達した。

何せこの息子、水筒も1年生の時に何本かどこかにやって来てしまったし、体操服もある日気が付くと体操服袋から消えてしまっていて、次の日の体育はどうするのという事で急いでスーパーに買いに行ったのに、翌日教室の忘れ物箱から出てきたりするという数々の逸話を残してくれた子だ。

よく無くす子の入学準備、スペアの用意が肝心。

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今度は中学生になれるのだろうか

そして今、長男は中学の入学準備の真っ最中、あの筆箱の中身をカラにしてきた小学1年生の日からもう6年の歳月が過ぎ、私は今回、久々の新入学準備で

「絶対無くすか落とすか学校に置いてきたりすると思う」

という親としての妙な確信とともに、用意する必要のある制服を全部2着ずつ買う事にしている。

すべてにスペアを用意しておくこの作戦、絶対にこの子には有効だと確信しているけれど、何しろお下がりなしの第1子なので、結構な値段になる。

でもそれはもう仕方ない。

中学生にもなると学用品のお名前つけはもう必要ないというか、名前は自分で書きなさいねと言える気楽さはあるけれど、指定カバンの無い中学に行くが為に『忘れものするなら最初から全部持ち歩く』主義の長男の大容量になるだろう荷物を入れるカバンをどうするか今、絶賛議論中。

聞くところによるとみんな荷物が多すぎて、一番人気がアウトドアメーカーの登山用バックパックというのは本気ですか中学生たちよ。

そういう訳で、今回の入学準備はとにかくよく諭吉が飛んでいく。

1年生がピカピカに可愛いのは、そこに親御さんとその周辺の人たちの苦労と工夫が詰まっているから。

という言葉を私はここに残したい。

大変だったから輝いて見えるし大変だから尊いのです。いえもう本当に。





※ この記事は2024年04月12日に再公開された記事です。

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