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公開 2021年01月14日  

中学受験の2ヶ月前、突然「やめたい」と告白した息子。気持ちを尊重すると決めた理由

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息子の言葉をきっかけに、私たち親子は中学受験に挑戦すると決めました。でも本番直前、息子が突然受験をやめたいと言い出したのです。受験するのかしないのか、親子の葛藤をご紹介します。


縁がないと思っていた中学受験


私が住んでいる地域は私立の中学校は数えるほどしかなく、ほとんどの子どもは公立の中学校に進学します。

なので私立中学の受験は、我が家には全く縁のないものだと思っていました。

しかし、そんな我が家に突然、中学受験の話が持ち上がったのです。


それは、息子が小学6年生の6月のこと。

息子から

「少し前から考えていたんだけど、〇〇中学に行きたいから受験したい」

と言われました。

私は「ん?何て言った?」と聞き返してしまうほどの驚きの告白に、しばらく状況を把握できませんでした。

そんな私を見た息子は

「〇〇中学に行きたい。自分の力を試してみたい」

と再度、自分の思いを話し出しました。


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中学受験を決意した理由


息子が受験したいと言った中学校は、県内でも有名なスポーツの強豪校でした。

スポーツだけではなく勉学にも力を入れている、中高一貫の学校です。

勉強が得意ではない息子がなぜ中学受験をしたいと思ったのか、理由を尋ねてみました。

すると「〇〇中学でサッカーをしたい。挑戦したい」と言いました。

息子は幼い頃からサッカーを習っており、平日は練習、土日は試合とサッカー漬けの毎日を送っていました。

そんな息子がスポーツの強豪校へ入学できれば、サッカーの技術をさらに伸ばすことができると思いました。

しかし、中学受験となると金銭的な面や通学の時間、そしてこれまで仲良くしていたお友達と離れてしまうことなどもあり、すぐに「いいよ」とは言えませんでした。

息子から話を聞いたときは、ただの思いつきで言っているのではないかと、あまり真剣に受け止めてはいなかったのです。


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感じた強い意志


息子はそれから毎日のように受験をさせてほしいと言うようになりました。

受験をしたい理由を何度聞いても「〇〇中学でサッカーをしたい。自分がどこまで通用するのか知りたい」と繰り返していました。

7月下旬、小学校の担任の先生に会う機会があり、話をしてみました。

先生は息子から話を聞いていたようで、「挑戦したいという気持ちを応援してあげてください」と言われました。

先生の言葉を聞いて、もう一度しっかりと息子と話し合い、真剣に考えてみようと思いました。


その後、息子の成績では合格することがむずかしいこと、勉強とサッカーの両立は大変であることを伝え、それでも頑張れるのかを何度も聞きました。

息子は「頑張りたい。挑戦したい」と、迷いはありませんでした。

私は息子の挑戦したいという気持ちを聞くことができて、何だかうれしく思いました。

そして、一緒に頑張ってみようと決めたのです。

まず始めたのは、塾探しから。

3つほど塾の体験をした後、息子が一番気に入った塾に週2回通うことにしました。

夏休みもサッカーの試合や練習、そして学校や塾の宿題に追われる日々でしたが、親の目から見てもとても頑張っているように見えました。


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本番まであと2ヶ月!突然の告白


受験まであと2ヶ月となった11月中旬。

息子から話したいことがあると言われました。

「お母さん、ごめん。受験やめる」

私は何があったのかと驚きました。

中学受験をしたいと言ったのは息子ですし、毎日勉強に励んでいる様子も見てきました。

なぜいまになって受験をやめたいのか、理由を聞きました。


息子が受験をしないと決めた理由は、やはりサッカーでした。

実は数週間前に、地元の強豪クラブチームから入会の誘いを受けていたのです。

息子は、そのクラブチームの練習に数回参加したことがありました。

そこには息子の憧れの選手がいて、練習後の話を聞いたとき、目がとても輝いていたを覚えていました。

その息子の表情を見ると、本当はこのチームでサッカーをしたいのではないのかと思うほど。

しかし、そのときの私は息子に確認することはしませんでした。

数週間、クラブチームへの道と私立中学への道とで気持ちが揺れ動いていたのでしょう。

あのとき、私から話をしていれば、もっと息子は言い出しやすかったのかもしれない。

そんな思いも浮かんできました。


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受験したいと思った気持ちも、嘘ではない


息子は本気で受験をしたいと思っていたと涙ながらに話し出しました。

受験することで苦手な勉強を克服できる。

サッカーを真剣に頑張りたい。

高校に進学したときに、県内トップクラスのチームでサッカーをしたい。

息子はそう思い、真剣に受験勉強に取り組んできたと話してくれました。

しかし、意中のクラブチームから誘いを受けて気持ちが揺らいでしまったと。

小学6年生の息子なりに、何日も悩んだ末の告白でした。

私は息子に

「人生は迷うことの連続。後悔しないように、もう一回考えてみてほしい。それでも気持ちが変わらないなら、受験はしなくてもいい。ただ、やっぱり受験したいと言っても、もうできないよ」

と伝えました。


1週間後、息子は「受験はしない。でも塾は続けようと思う。だけど、お金もかかるからお母さん決めて」と言いました。

私は、きっかけは何であれ、勉強の苦手な息子が塾に行く決断をしたことを無駄にしたくありませんでした。

そして、塾はやめずに通うよう伝えました。

小学校の担任の先生にも事情を説明すると

「自分の正直な気持ちを打ち明けるのは、とても勇気がいることだったと思いますよ。その気持ちを大切にしましょう」

と言ってもらい、涙が出てしまいました。

親に遠慮して本当の気持ちを言えないより、勇気を出して告白した息子に成長を感じ、気持ちを尊重しようと思いました。


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いい経験になったと思える今


その後息子は公立の中学校に進学し、お誘いを受けたクラブチームでサッカーを続けました。

そして今、高校3年生です。

高校でもサッカー部に所属し、サッカーを楽しんでいます。

息子は今でも「幻の中学受験」の話をします。

そして県外の大学へ進学を希望する息子から

「いつも俺の考えを尊重してくれて感謝している。迷惑もいっぱいかけてるけど、ありがとう」

と書かれた手紙をもらいました。

人から見ればただのわがままに見えるかもしれない出来事ですが、あれから6年が経った今、あのときの出来事は私たち親子にとって忘れられない経験であり、いい思い出でもあります。


※ この記事は2024年02月24日に再公開された記事です。

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