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公開 2015年05月14日  

頼りながら生きる姿を子どもたちに見せてあげたい 〜AsMamaの「子育てシェア」が生まれるまで〜

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送迎、託児を顔見知り同士で行う「子育てシェア」を全国で拡げる活動に取り組むAsMama代表の甲田恵子です。初回はAsMamaの創業のきっかけや、AsMamaの活動についてお伝えします。


こんにちは。株式会社AsMama代表の甲田恵子です。



誰もが当たり前に社会参画できる社会づくりを目指して、親子交流の場づくりと子どもの送迎や託児を知人間で頼り合うネットの仕組み「子育てシェア」を全国で拡げる活動に取り組んでいます。



連載の初回ということで、今回はAsmamaの考え方や現在に至った背景についてお話します。どうぞよろしくお願いします!

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バリバリのサラリーマン時代には気づかなかったこと

よく創業理由を聞かれる際、「元々こういう事業を立ち上げようと思っていたんですか」なんて聞かれることがあるんですが、とんでもない!(笑)



創業する一年前は会社を辞めるなんて微塵も考えたことがない、野心的に上昇志向の強いサラリーマンでした。



そんな私がなぜAsMamaを創業したのかというと、会社都合で2009年に離職した後、人生の小休止ぐらいのつもりで職業訓練校に通ったんですね。そこには、たくさんの学歴や職歴を積みながらも子育てを頼れる人がいないがために離職せざるを得なかったという人がたくさんいました。



同時に、自分がサラリーマンの時には優雅に過ごしているとばかり思っていた専業主婦の大半は、家事や育児にとても熱心ながらも自由になるお金がないことや社会から離れていることに不安を抱いているということを知りました。



そんな対極にいる人たちを見て、「支援して欲しい人と支援したい人が全国的に出会う機会や、気兼ねなく頼り合える仕組みがあれば双方の課題が解決し、ハッピーな生活が送れるんじゃないか」と思い付いたとがそもそもの始まりです。



最初は単なる思い付きだったんですが、職業訓練校の授業を受ける傍ら、だんだん「世の中にはそれぞれの悩みを持っている人がいるけれど、その人たちはどれぐらいいるんだろう」とか「困ったらどうしてるんだろう」ということが気になってきました。

頼りながら生きる姿を子どもたちに見せてあげて

情報を調べれば調べるほど、深刻に思えてきました。「このままではマズイ」と。



極め付けだったのは、「日本では15歳の三人に一人は自分は孤独だと思う」というOECDの調査報告を見た時です。三人に一人、です。



当時私の子どもは3歳でしたが、おなかにいる時から考えると4年間、とにかく愛情を注いで育ててきているつもりが、どうしてそこから10数年経つとそんな風に思うようになる可能性が30%もあるのかと思いました。更にその根拠を調べていると、諸説ある中で印象的な文章を見つけました。



そこには「核家族の中で、誰にも迷惑かけず親だけで子育てをしようとする家庭に育った子どもは、困ったことがあった時でも誰かを頼って迷惑をかけるようなことをしてはいけない、と自然に学んでいます。だから、恋愛や進路に悩んだり困ったことがあっても誰にも相談することなく、自分は孤独だと思うのです」と書かれていました。

私自身ずっと人に頼るのが苦手で、育児と仕事の両立はいつも綱渡り。



それでも誰かに気を使って頼るぐらいなら夫婦で何とかするか、どうしようもない時は保育園のお迎えが間に合わなくても平謝りするか、お金で解決できる保育サービスを使うか、という選択肢しかありませんでした。



だからこそ、この記事を見つけた時には衝撃的でした。



「愛されていることに自信をもって道を切り拓いていってほしい」と願っているのとは裏腹に、私自身は誰かを頼ることに罪悪感を抱くことを教えながら子育てをしていたのかもしれない、と思った瞬間でした。



親なら子どもには、「どんなことがあっても、周りを頼りながらでも、自分がやりたいことを実現しながら、自分らしくイキイキたくましく生きてほしい」と願っていると思います。



だからこそ、今、私たちが親として、大人としてできることは、周りを頼りながらでも「ありがとう」を伝え、頼らせてもらったことで自分ができることをやって、また誰かに「ありがとう」といわれる。そんな生き方を子どもたちに見せてあげることだと思うようになりました。

親子ともに顔見知りだから安心できる

では、子育てに困ったら誰に頼るか。



もうこれは、親子共に知っている、信頼できる人が一番です。

私も昔はいつも通っている保育園とは違う夜間保育を利用したり、経験豊富な有資格者の方に預かってもらったりもしましたが、結局のところ、私や娘と相性がいいか悪いかや信頼できるかどうかは、資格や経験の有無はあまり関係ありませんでした。



今になって10歳になった娘が言うんです。「ママはいつもは知らない人に声をかけられてもついていったりお話ししたらいけないよ、っていうのに、お仕事が忙しい時は知らない人と一緒に楽しく過ごしてね、って言ったよね。でもあの時は、ほんとは怖かったんだよ」って。



言われてみて初めて「確かに」と思いました。



大人だから名の知れた施設やサービスなら安心と思い込みますが、子どもにしてみたら「知らない人」に変わりはありません。親の不在時に知らない人と過ごす、って怖くて当たり前ですね(苦笑)。

気兼ね要らずの「子育てシェア」

こうした経験も振り返ると今の事業活動に大いに役立っていると思います。



今、AsMamaでは創業趣旨に共感するスタッフが、地域交流の場づくりを全国で年間400回以上開催しつつ、「子育てシェア」という知人間共助(ちじんかんきょうじょ)のネットの仕組みを拡げています。



近所に子育てを頼れる知り合いなんていない人もたくさんいるだろうと思い、そういうご家庭を支援したいという人にAsMamaで託児やコミュニケーションなどの研修を無償で提供し、地域の子育て世帯と出会う場を提供しています。

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一方で、知り合いだからこその気兼ねを取り除くのが「子育てシェア」です。



「子育てシェア」は、知人友人に声をかけて「子育てシェア」内で繋がっておき、いざ送迎や託児を頼みたい時には助けてほしいエリアにいる知人友人を選んでSOSを発信すると都合がつくという仕組みです。



登録料も手数料も一切不要、万一の事故には全支援者に自動で保険も適用されています。お礼は1時間500円の謝金を相手に直接渡すだけ。友だちとの間でのお金のやり取りは気後れする、という場合は、クレジットカード決済もできます。



自社サービスながら僭越ですがある意味あまりに良くでき過ぎていて、「何か怪しい・・・」と思う人もいるほど。(笑)でも怪しくありません。現にサービス開始から2年で3万人近い方が登録し、4,000件以上の共助が成立しています。一度使った人の8割が1ヶ月以内にリピートする仕組みなんですが、世の中によくある自動的に「この人、知り合い?」なんていうマッチングを行ってくれるような機能を一切排除しているので、友だちに声をかけて「子育てシェア」でつながったり、AsMama認定支援者と仲良くなるなどして初めて役立ちます。

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ちょっと活動紹介が宣伝みたいになりましたが、自分のためにも子どものためにも、誰かを頼ることの成功体験を積むためにぜひ一度「子育てシェア」してみて下さい。



子どもが社会性や多様性を学ぶ上で、これ以上の好機はありません。そしてママやパパも子育てを頼ることで、または支援する側にまわることで、今よりもっと豊かにもっとイキイキ日々の生活を楽しんでもらいたいというのが、私の願いです。

AsMamaのAsは…。

最後に、よく聞かれる社名について少しだけお話しておきます。



AsMamaは2009年に創業し、社名は、「~として」とか「~のように」として使われる「As」と「Mama」をくっつけて、「ママとしてパパとしてイキイキ生きられる社会を、ママのようにパパのようになりたいと子どもたちが大人たちを見て思える社会を、自分たち自身でつくっていこうと思う人たちの集合体にしよう」という思いで名づけました。



が、実はオチがあって、、、私の娘の名前が「愛珠(あず)」なんです。



本当に意図せず、登記をした数日後、保育園にお迎えに行ったある日、「おーぃ、アズー、ママ、きたよー」と娘に声をかける男の子の声を聞いて「あ、、、やってしまった^^;」と思いました。



案の定、創業以来、「子どもの名前にちなんでアズママ?」なんて言われることも多いですが、英記でAsMamaと書いたら社名。カタカナで「アズママ」と書けば私の愛称と覚えてください。(笑)

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次回からは、一人のママとしての視点だけでなく子育てを取り巻く社会のあり方について、みなさんと一緒に考えていけるような内容をお届けできればと考えています。お楽しみに!

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