これは息子が1歳になる前のお話です。
夫は仕事が忙しく日々の帰宅時間は22時過ぎることがほとんど。
平日は育児にノータッチの分、週末は必ず夜中のお世話をしてくれたり、たまに息子を外に連れ出してくれたりで私の息抜き時間を確保してくれていた。
しかし、少しずつ歩けるようになってきて自我も強くなった息子の相手を平日の間ずっと一人ですることは私にとって物凄く大変なことだった。
とある週末、私はとても疲れていた。日頃の疲れが蓄積されていたのだ。
真剣に向き合って何が悪いの?夫に反論しようとしたとき、見えたもの<第四回投稿コンテストNO.103>
71,166 View号泣するわが子を抱きしめ、途方に暮れていた帆波りつさん。そこへ登場した夫の言葉にカチン。しかし、手を差し伸べてきた夫と一緒に見た景色は、いつもと違ったそうです。
夫は夜中のお世話を代わってくれていたので、朝から一人寝室で二度寝している。
私は息子とリビングで遊んでいたのだが…
その日の息子は朝から機嫌が悪く、ひょんなことで大号泣&癇癪モードに入ってしまった。
そうなるともう手が付けられない。
抱っこして少し落ち着いたかと思い下に降ろすと再び号泣。
抱っこしても体を反らし大号泣。
もう手の打ちようがない。
どうすればいいのか分からない。
ただでさえ疲れていた私はもう限界だった。
そして思わず大きなため息をついて呟いた。
「はぁ、もう嫌だ…限界…」
その時、ちょうど二度寝から起きた夫がリビングにやって来た。
子どもに対して真剣に向き合うことの何がいけないの???
怪獣のように泣き叫んでいる息子を抱え、満身創痍な私に対してその言い方はないんじゃないの?!と反論しようとしたその時…
急に手を差し伸べられた。
一歩離れて上から見た息子は、まだまだ小さい赤ちゃんだった。
夫の言う通り私は息子との距離が近すぎたのだ。
立ち上がる前の私の視界は号泣している息子でいっぱいで、耳には至近距離から大きな泣き声が響き、そんな中冷静に息子の相手なんて出来るわけがなかった。
限界が来るのは仕方のないことだった。
泣いているときは同じ目線に立って、抱きしめて、泣き止むまでずっと離れない…そうすることが一番だと思い込んでいた私は、知らないうちに自分で自分を追い詰めていた。
夫は自分の意見をはっきり言うタイプで、そのズバズバとした物言いに私は傷つき喧嘩する日もあったけど、今回の夫は限界がきていた私を見てどうすれば楽になるのか?と考えた末の発言だった。
少し言い方は悪かったが、私のためを思って言ってくれた言葉だったのだ。
夫は息子を抱っこしながら私に微笑む。
その優しい笑顔を見て何かがはじけた。
思わず泣いてしまった私に、夫は「大丈夫だよ」と言葉を重ねる。
立ち上がって少し離れてみる。
そんな些細な方法だけど、疲れていた私は気が付けなかった。
育児において第三者の立場では分かることが、案外当事者になると気付けないことが多いことを知る。
そのことに気付かせてくれた夫に「ナイス育児」と叫びたい。
この日以降、限界が来る前に息子から少し離れてみるということを覚えた私は今までよりちょっぴり育児が楽になってきた。
夫よ、本当にありがとう。
(ライター:帆波りつ)
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